はつ恋
そう言うと、はじめて三成がその吊った瞳を見開いた。すっと三成が息を吸い込むのがわかった。罵倒されるかと、そうと視線をあげると、三成の白い頬が、目元が、紅く紅く染まってゆくのが見えた。それは、ワシがずっと、幼いころから自分に向けて欲しいとつよくつよく願った表情だった。いや、それ以上だったかもしれない。
「三成、」
「なっ…あっ…き、貴様という男は…ッほんとうの馬鹿か!いや馬鹿以下だ!」
「それでもいい、ワシは三成、おまえが欲しくてたまらんのだ」
馬鹿だ、と繰り返して言う三成に、それでいい、ともう一度言う。
私は秀吉様のものだと言う言葉に、それでいいんだと返す。
三成の白い肌は耳まで紅潮していて、ああ、これを見た男はこれまでにいただろうかと考え、いやもういい、そんなことはもうどうでもいい、ただ、今目の前に三成がいる、ただそれだけで。そう考えて思わず笑みがこぼれる。俯いてしまった三成の、笑うな、気色がわるい、虫唾が走る、とちいさな声で罵る姿すら愛しく感じられて、ワシは、人生で最高の至福という奴を噛み締めていた。