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Magic Word

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何秒か、何十秒か沈黙が流れて、
不意に春歌が思い出したかのように声を上げた。



『一ノ瀬さん、少しそこに座ってください。』

「はっ?」

『いいから、そこのソファに座ってください。
 あ、それからちょっと目を瞑ってください。』



怒っている感じではないものの、
春歌の口調は何故か逆らうことが出来ない空気を醸し出していて、
逆らうこともできずに、言われるがままにソファに座り、目を閉じる。

一体何が起きるのかさっぱりわからない。
衣擦れの音が聞こえて、少ししてから手で目隠しをされた。



「春歌?一体何を―――…」

『いいですか一ノ瀬さん。私は今から魔法使いです。
 今から一ノ瀬さんに魔法をかけるので、
 一ノ瀬さんは私の言ったことに逆らえなくなります。』

「魔法、って………」

『はい、一ノ瀬さんは魔法にかかりました。
 今日は1月18日です。1月18日なんです。
 なので、私の誕生日ではありません。
 よって、今日は私の誕生日を祝う必要はありません。』

「・・・・・・」

『はいっ、もう目開けていいですよ。』



春歌の手が離れて、瞼を開けると光が入ってくる。
さっきまでとは何1つ変わらない景色のはずなのに、
何かが違うような気がしてしまう。



『これで今日は1日のんびりできますね。
 大切なのは、日付じゃないし、場所でもないんです。
 誰と一緒にいるか、誰が隣にいてくれるか、なんです。
 私は、一ノ瀬さんと一緒にいられれば、それで幸せです。』

「春歌………」

『これ以上熱が上がらないように、家でゆっくりしましょうね。』



これも、彼女の持つ力なのだろうか。
観念してため息をつきながら笑うと、
いつの間にか横に来ていた春歌も満足そうに笑っていた。



「そう………ですね。今日は私の家で過ごしましょうか。
 あなたの誕生日は、また改めてお祝いしましょう。」

『はいっ。
 その時はまた魔法をかけて1月19日にしますね。』

「お願いします、私の魔法使い。
 いいえ………私だけの、魔法使い。」



そっと隣に座る春歌を抱き寄せると、
背中に春歌の手のぬくもりが返ってきた。
その温かさは私の心までも温めて、優しい時間を与えてくれる。


彼女はもしかしたら、本当に魔法使いなのかもしれない。
音を操り、私の心を魅了して、離さない。

―――世界で、たったひとりだけの、魔法使い。
作品名:Magic Word 作家名:ユエ