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ベルゼブブ優一の幸せ

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さて、どうするか。
ベルゼブブはふたたび考える。
実のところ、自分の気持ちについては考えるまでもないことだ。とっくに気づいていた。言わなかっただけだ。自分は悪魔で、佐隈は人間だから。
だが、佐隈の気持ちが自分に向けられているのなら、話は別だ。
迷うことはない。迷うべきではない。
せいいっぱい伸ばされてきた手を、不幸にするかもしれないからと言い訳して、受け止めないなんてことはしたくない、するべきではない。
ただ、今、自分の気持ちをどう伝えるか、考える。
そして、ベルゼブブは口を開く。
「たしかに私はモテます。それを否定するのは意味のないことです」
穏やかな声で話す。
「モテるのが嫌だとも思いません」
話している内容は、すべて正直な気持ちである。
今は、嘘はひとつもつきたくない。
ほんの少しでも嘘をまぜてしまえば、伝えたいことが伝わらなくなるような気がする。
「でも、私がモテたい相手はひとりだけです」
ベルゼブブは告げる。
「さくまさん、あなただけなんです」
もちろん、これも正直な気持ちだ。
佐隈は黙ったままでいる。
そんな佐隈に、自分の気持ちがちゃんと伝わるよう願いながら、ベルゼブブは話を続ける。
「それに、たしかに私はああいう場に慣れています。ああいう場が嫌いでもありません。むしろ好きです」
魔界にも上流階級というものが存在し、ベルゼブブはそこに属しているので、パーティーなどには慣れている。
「ですが、私が一番好きな場所はあそこではありません」
あそこ、というのは、単にあのクリスマスパーティーをさしているのではない。
そんなことは、きっと佐隈もわかっているだろう。
「たとえば、アクタベ氏の事務所」
過去の記憶を頭に思い浮かべる。
「そこで、私はイケニエを食べている。あなたの作ったカレーを食べている」
思い出して、ふと、頬がゆるんだ。
「本当は場所はどこでもいい」
優しい、温かな記憶。
自分の中の特別な記憶である。
「あなたのそばにいるときが、私の一番幸せなときなんです」
とっくの昔に、自分はそれに気づいていた。
気づいてから、人間界に召喚されれば、あたりまえのように佐隈の隣に行くようにした。そこが自分の定位置になるようにした。
「だから」
ベルゼブブは佐隈に言う。
「ずっと私のそばにいてくださいませんか、さくまさん」
プロポーズだ。
返事を、待つ。
しばらくのあいだ、どちらも無言だった。
その沈黙が破られる。
佐隈が、かすかな声で答える。
「……はい」



一番幸せなとき。



ベルゼブブ優一は華やかに笑った。













作品名:ベルゼブブ優一の幸せ 作家名:hujio