HLM!
見回り中、いつもより群れが僕を避ける。今朝の一件のせいだ。(傍から見たら無差別だから)
まぁ、うるさくなくていいけど。
それにしても、あの子は無防備すぎる。
スカートを規定の長さにするか、中にスパッツを履けばいいのに・・・
とか考えながら、階段に差し掛かると。
「あっ、ヒバリさん!」
次が移動教室なのか、教科書を抱えた綱吉が降りてきた。
あ、バカ、そんなに急いだら・・・!
「わっ、うわぁぁぁぁ!」
「綱吉!」
バランスを崩して倒れてきた綱吉の前に立ちふさがる。
そのまま全身で受け止め、勢いで後ろに転がった。
幸いあまり上のほうで転ばなかったから、怪我はない。
けど、ひとつだけ問題がある。
今、僕の目の前は真っ暗だ。綱吉が覆いかぶさる形だから、それは仕方ない。
ただその、顔に当たる感触が・・・やわらかい。
いや綱吉はどこもかしこもやわらかいんだろうけど、これは・・・
「大丈夫ですか!?」
「あ・・・うん。君は?」
「はいっ平気です・・・ってあぁ!!」
「な、なに?」
「ヒバリさんっ、頭打ったんですか!?」
「え?」
「だ、だって鼻血がっ!」
言われて、鼻の奥が金臭いことに気づく。
でも頭は打ってない。
てことはやっぱり、さっきの・・・
(最低だ・・・!)
思わず頭を抱えると、綱吉が覗き込んできた。
「やっぱりそうですか?保健室・・・いや病院行ったほうがっ」
「だ、大丈夫・・・そんなんじゃ、ないから」
「でもっ」
「たぶん、粘膜がこすれただけだよ。とりあえず、ティッシュ一枚くれる?」
「はっ、はい!」
受け取ったティッシュを詰めていると、チャイムが鳴った。
「じ、じゃあ行きますね・・・お大事に」
それだけ言って去っていった綱吉が転びかけて、またあの黄色い生き物が見えたのは、気のせいだと思いたい。