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それは永遠に秘密です。〈それはあなたの忘れ物。UP!〉

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それは永遠に秘密です。


あたしはベッドの上で読んでいた本をパタンと閉じた。
もう、そろそろ夜も更けてきた。
「ねえ。ゼロス。」
あたしのおばあさんになってもう擦れきった声が、男性の名前を呼ぶ。
その声に反応して、
「なんですか?リナさん。」
あたしのベッドの隣にいる夫、ゼロスがゆっくりと閉じていた目を開けた。
どうやら、彼は寝ていなかったらしい。
そして、昔と変わらない光の加減でちらりと光る紫色の瞳が、あたしのことを見つめる。
その瞳で見つめらると、あたしは本当に彼に引き込まれてしまうような錯覚に陥る。
いくつになってもこれは恋なんだと思わずにはいられなくなる。
もう、こんな歳になって恋だの惚れただの言ってられないっていうのに。
しかし、そんな彼の目じりにはいくつかの深いシワがあるのだが。
これも、共に月日を重ねた証拠。
そのシワを確認し、あたしはくすりと笑った。
「なんです?リナさん。いきなり、僕を見て笑うなんて。」
くすくす。
そのシワに安堵感を覚え、あたしは少しの間笑いが止まらなかった。
そんな様子に彼は首を傾げた。
「いえ、ねぇ。ゼロス。
 あんたのその深いシワを見て、
 ああ。あたしたちって本当に老けたのねって思ったのよ。
 長い年月を共に生きたわね。」
そう言って、またあたしは彼の顔を見てくすくすと笑った。
「ああ。」彼は妙に納得したように頷いた。
まるで、あたしの心の中を見透かしているような眼差しをしてだ。
「そろそろ、ろうそくの炎を消して寝ますか?」
「いいえ。」
あたしは彼の誘いを丁寧に断った。
「どうしたんです?リナさん。」
いきなり、真剣な顔になったあたしの顔を見て彼は尋ねてきた。
そんなあたしは、もう血管が浮き出てきた手をシーツの上で彼の手に合わせてつぶやいた。
彼の手だって、あたしと同じようにもうごつごつして、血管が浮き出ている。
「ねえ・・・ゼロス。
 あたし、人生の晩年になり思い出すの。
 あんたと出会ったあの晩秋の夜を。」
そういうと彼もにっこりと笑い、あたしの手を優しく握り返してきた。
「聞いてくれる?」
「もちろんです。
 僕の妻の話ですから。」
と、彼はそう言った。
その優しい声音に誘われるように、あたしは昔を話し始めた。