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架月るりあ
架月るりあ
novelistID. 35205
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あなたと見つけた大きな夢

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「あの子の服には聖ガドリア王国の紋章が入っていた。あの服装からすると、たぶん下級階層の子だと思う。ガドリアは、身分制度がとても厳しいんだ」

 セネルは、クロエの話を黙って聴いている。彼女が自国のことを放すことなど今までなかったのだ。彼女はぬいぐるみを見つめながら言葉を紡ぐ。

「身分制度なんて、私は無くていいと思うんだ。みんなが平等に暮らせる国。あわよくば、そうなってほしいと私は思う」

 クロエの腕に抱かれたぬいぐるみはボロボロで、いたる所につぎはぎの跡がうかがえる。何度も洗ったのだろう、色もほとんど落ちてしまっており元が何色だったのかすらわからない。
 それでもあの少女はあんなに大切そうに抱きしめていた。少女にとっては宝物だったに違いない。そんな大切なものを、少女は自分に託してくれた。

「......ならさ、クロエが変えていけばいいさ」

「え?」

 唐突に放たれたセネルの言葉。今度はクロエが瞳を丸くする番だった。
 セネルはきわめて穏やかな表情で言う。

「クロエがそう思うなら、クロエ自身の手で変えていけばいい」

 しかし、セネルはそう簡単に言うが、実際はそんなに簡単な問題ではない。クロエはガドリア王国ではただの一騎士でしかない。
 しかも彼女の家であるヴァレンス家は五年も前に取り潰されている。そんな彼女が、一国を変えるなんてことが果たして出来るのだろうか。

「クーリッジ。簡単に言うが、私は――」

「クロエならきっとできる。俺は、そう思う」

 確信に満ちた声。彼の瞳はちゃんとクロエを見据えていて。それが本物の言葉なのだということがわかる。本物の――心からの言葉なのだと。
 クロエなら出来る。彼にそう言われるとそれが本当のような気がしてくることが、クロエには不思議でならなかった。それほどまでに、彼女の中でセネルという存在が大きくなっているのだった。

「......ありがとう」

 やわらかく暖かく微笑むクロエに、セネルもまた微笑った。そんな微笑みあうふたりを乗せて、船は遺跡船へと旅立った。
 






‐end‐