二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
架月るりあ
架月るりあ
novelistID. 35205
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

波乱万丈*ディシディアプロジェクト

INDEX|1ページ/3ページ|

次のページ
 


「なあなあ、みんな台本読んだか?」

 辺境の世界へ向かう一台のバス。そこには様々な世界から集められた戦士たちが一同に集っていた。彼らの手には一冊の分厚い冊子が握られている。それは俗に『台本』と呼ばれるもの。そう、彼らはとあるプロジェクトに参加すべく、このような辺境の世界までやってきたのだった。

 さきほどの言葉は陽気な雰囲気を纏う青年だった。彼の名はバッツ・クラウザー。とびきりの悪戯を思いついたような無邪気な笑みを浮かべる彼の隣には、見るからに無愛想な金髪の青年がもくもくと台本を読みふけっていた。

「おう!オレならばっちりだ! ダガーにかっこいいところを見せてやんないとな!」

 そう言いながら胸を張るのは小柄な少年だった。不思議なことに、彼は猿のような猫のような何の動物ともつかない尻尾が生えている。

「ダガーって?」

 首をかしげながら尻尾の少年にそう尋ねるのは、セシル・ハーヴィという銀髪の青年だった。いかにも騎士といったような鎧を纏い、端正な顔立ちをしている。すると尻尾の少年――ジタンはなにやら嬉しそうな笑顔を浮かべた。

「よく聞いてくれた! ダガーってのはな、オレの……」

「あ、わかった!あれだろ、あの短剣みたいな武器!」

「そっちじゃねえ!」

 すさまじく的外れなバッツの言葉に、ジタンはすかさず手刀をお見舞いした。それはさながら長年コンビを組んでいるお笑いコンビのようなコンビネーションで。息がぴったり合いすぎているのが逆に怖いくらいである。

「やっぱりジタンとバッツは仲が良いんだな」

 真面目な眼差しでふたりを見ながらそんな言葉をこぼしたのは、多種多様な武器を見事に使いこなすことで有名なフリオニールだった。彼の席はさきほどのお笑いコンビのすぐ後ろ。さきほどの天然コントも彼はばっちり聞いていたのだった。

「仲が良いのはいいけれど、もっと静かにしてよね。うるさくて台本が全然頭に入らないじゃない」

 そんな小生意気な発言をするのはもちろん、オニオンナイトだ。年齢は不詳だが、妙に大人びた発言や行動、思考を持つ。しかしこのメンバーの仲では最も最年少だろうと思われる。

「いいじゃんいいじゃん。みんなでこんな風にいられるのって、結構貴重だぜ」

「それはわかってるよ。だからこそ僕はこのプロジェクトを成功させたいんだ。完璧な演技をしてみせるよ。だから少し静かにして」

 バッツのほうを見ようともせずに台本を目でなぞるオニオン。そんな彼に、柔らかな声が掛けられた。

「それなら、オニオンもこっちでお芝居の練習しようよ。ね?」

 穏やかで優しげな声音。それはこのメンバーで唯一とも言える召喚師、ユウナのものだった。オニオンがぐったりしながらユウナのほうへ目をやると、ユウナとティナが台本の読みあいをしていた。
 ほんわかオーラを纏う可愛らしい少女がふたりで台本を読み合っている様子は、それだけで目の保養になりそうだった。まるで絵画のような、そんな雰囲気が漂っている。

「うん、お言葉に甘えさせてもらうよ。あのふたり、うるさくて」

「ふふ。でも仲がいいのは良いことだよ」

 ユウナが笑うと、まるで天使の微笑みにさえ見えてくるのが不思議だった。そのユウナの言葉に、ティナもまた笑顔で頷いている。

「オニオン……やるな」

 両手に華状態のオニオンを、うらめしそうに睨みつけるジタン。ふとオニオンから目を離すと、フリオニールが通路を挟んだ向こう側を凝視している光景があった。
フリオニールの視線を辿ると、そこには仏頂面で台本を読んでいるライトニングという女性の姿。彼女はその長く細い脚を組み、ただただ台本を目で追っていた。クールで知的な雰囲気を纏うライトニングは、もうすでに男子たちの憧れの存在になっていた。

「なあなあ、フリオニールってもしかして、ライトニングのこと好きなのか?」

 ジタンがにやりと妖しげな笑みを浮かべながらフリオニールに尋ねる。その瞬間、フリオニールは飲んでいた紅茶を盛大に吹き出した。

「な、ななななななな! 何を言い出すんだ!」

 耳まで真っ赤に紅潮させながら弁解しようとするフリオニールだったが、時すでに遅し。ジタンはよりによってバッツやラグナたちに報告しに行ってしまったのだ。あの三人に知られれば、絶対にからかわれるに決まっている。ライトニングを見つめていたのは確かに事実だが、だからと言って別段好意を寄せているわけでもないし、ましてや恋愛対象に見ているわけではない。しかしそんなことを言ったところで、あの三人が組んでしまえばもはや意味をなさない。

 弁解することを諦めたフリオニール。深いため息をつくと、何者かに肩を叩かれた。振り返ると、そこにはティーダが立っていた。

「フリオも大変ッスね」

 そう言いながら苦笑するティーダに、フリオニールもつられて苦笑をもらす。ティーダはメンバーの仲でも数少ない衣装替えがある役だ。ひとつは上半身を露出する服装。もうひとつはいつもの服を改造した衣服。最初に着るのは後者のほうの衣装のため、露出は控えめになっている。

「そういうティーダこそ。今までティファから質問攻めにされてただろ」

「あ、見てたッスか? もう色々聞かれてさ。疲れたッス」

 がっくりと肩を下ろすティーダ。ティファというのは、クラウドの恋人とも噂されている女性のことである。彼女は女性にしては珍しい徒手空拳の使い手だ。しかし同時に女性らしさも兼ね備えていて、ライトニングに次ぐ男子陣のマドンナだ。
 ティーダが根掘り葉掘り聞かれたのは、ずばりユウナとの関係だ。ふたりは同じ世界から来ているということで、女子の恰好の餌食になっている。
 そもそも、同じ世界からふたり以上招かれるのは珍しいパターンである。

 彼らが参加するプロジェクトとは、『ディシディア』と名付けられたゲームの製作計画のことである。様々な世界の戦士を集め、彼らをふたつの勢力に分け、戦わせ、その中で戦士たちが成長していく、といった内容のゲームだ。
その勢力のひとつ『コスモス』チームを演じるのが、このバスに乗っている彼らだ。コスモスチームと対立するのはコスモスチームと何らかの因縁があるという戦士が揃う『カオス』チームである。
ゲームの製作にあたり、よりリアルな戦闘シーンを撮るために集められた精鋭たち。もうすぐこの『ディシディアプロジェクト』の撮影が始まろうとしていた――。



――波瀾万丈・ディシディアプロジェクト――



「へえ。ここがディシディアの世界になるのか……」

 バスから降りるなり、戦士たちは言葉を失った。そこは生物の存在しない、まるで死の世界のようだった。見渡す限り何もない、純白の世界。始まりの場所、ということだが、確かに何も存在しないこの場所は始まりの世界と呼ぶにはふさわしいかもしれない。

「さて、早速撮影を始めましょう」

 どこからか凛とした透き通るような声が聞こえた。一同が振り向くと、そこには白いドレスを纏う美しい女性が立っていた。神々しい。まさにそんな言葉が似合うような、神秘的な出で立ちだ。