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架月るりあ
架月るりあ
novelistID. 35205
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君のために、僕がいる。俺のために、お前がいる。

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 そう言いながら、ふたりは笑い合った。あの騒動の際、カプワ・トリムで再会したときに互いに感じた、見えない壁のような隔たり。それはユーリが騎士団を辞めた瞬間から生まれ、顔を合わせていなかった間に、時間が経つとともに徐々に高くなっていたように思える。
 しかし今はそんな壁など存在しない。それは互いの笑顔を見ればわかること。偽りのない、笑顔を。

「‥‥あれ?ユーリ、そこ血が出てるよ」

 ユーリの腕を見て言うフレン。ユーリがそのフレンの視線を辿ると、右腕に小さな切り傷のような傷が作られていた。服が裂け、血が滲んでいる。

「んあ?こんなもん、ほっときゃすぐ治るさ」

 そんな痛みもねえしな、と笑いながら言うユーリ。しかしフレンはたとえ小さな傷でも放っておくことが出来ない性分で。それがユーリの傷なら尚更だ。ハンカチを取り出し、それを細く口で裂いてユーリの傷口に巻き付ける。止血のために少々きつめに。ユーリの顔が一瞬痛みに歪んだが、処置はすぐに終わった。それを見ていたユーリは、他人事かのように言う。

「おまえ、相変わらず几帳面だな。オレならこんなのほっとくけどな」

 その台詞に、フレンはごく真面目な顔で、まるでやんちゃな子供を諭すような口調で言う。

「だめだよ。傷口からばい菌が入ったらどうするんだい?」

 二十一歳の男とは思えぬ発言に半ば苦笑しながら、ユーリははいはいと頷いている。フレンは本当にわかっているのかい!なんて言いながら、ばい菌の恐ろしさについて語っている。
 下町に戻ると、ふたりを待っていたのは住民からの賛辞の嵐。

ふたりで顔を見合わせ、苦笑して。元の活気ある下町の様子を見ながら、ふたりは満足そうに笑い合っていた。
‐end‐