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彼氏の言い分、振り回され王選手権

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暫定一位 奥村雪男



夜、雪男はシュラがひとり暮らししている部屋にいた。
部屋のソファに座っている。
隣にシュラがいる。
いちおう恋人同士である。
それが、夜、部屋にふたりきりだ。
けれども、いい雰囲気にはならない。
雪男は顔に影を落として、シュラのほうを見る。
シュラは雪男を見ていない。
その眼は閉じられている。
酒を飲んで、眠ってしまったのだ。
気持ちよさそうな寝顔である。
ハァ……、と雪男はため息をついた。
しかし、少しして、気持ちを切り替える。
それから、立ちあがった。
「シュラさん」
どうせ聞こえてはいないだろうが、話しかける。
「ここで寝ないで、寝るならベッドにしてください」
シュラはまったく反応しない。相変わらず、気持ちよさそうに眠っている。
まあ、予想通りである。
雪男はシュラの身体に触れた。
そして、その身体を抱きあげる。
シュラと出会ったばかりの頃とは、自分は違う。
背が高くなった。体格が良くなった。力も強くなった。
だから、難なく、雪男はシュラを腕に抱いてベッドへと運ぶ。
ベッドのそばまで行くと、シュラをベッドに下ろした。
だが、その後も、雪男は上体を起こさずにいる。
至近距離からシュラの顔を眺める。
いい寝顔だ。
雪男は少し笑う。
「……おやすみなさい」
そっと、告げた。
自分の部屋に帰るつもりで、上体を起こしかける。
けれども。
シュラの長い睫毛に縁取られたまぶたが動いた。
ぼんやりとした眼が向けられる。
「雪男」
シュラが笑った。
きっと、まだ、酔っている。
そう感じさせる様子で、シュラが身体を起こす。
距離が縮まる。
シュラの手が伸ばされてくる。
身体が触れあう。
キスをする。
快楽と愛しさがこみあげてきて、夢中になる。
いつのまにか、雪男のほうがベッドに寝ている格好になった。
シュラが覆いかぶさってくる。
そして、笑顔で、雪男のメガネを外してしまった。
まあ、いい。
雪男はメガネを取り返そうとはせずにいる。
シュラがいっそう近づいてくる。
また、キスをする。
と、思いきや。
こてっ、とシュラの頭がベッドのほうに落ちた。
「……シュラさん」
雪男は呼びかけてみた。
しかし、シュラは返事をしない。
どうやら、また眠ってしまったようだ。
そのシュラの身体は雪男の身体の上にある。
たいへん魅惑的な身体である。
だが、当人は眠ってしまっている。
「ウソだろ……、おい」
思わず、雪男はつぶやいた。


朝まで生殺し。