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諸星JIN(旧:mo6)
諸星JIN(旧:mo6)
novelistID. 7971
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花と桃と紺碧

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 花の咲き乱れる庵の庭先に立ち、左近は空を見上げていた。
 空は澄み渡り、風は心地よく、芳しい花の香と。
「おお、左近。何かあったのか?」
 花を愛で、この世ならざる話を肴に美酒に酔い。
 場合によっては仙界軍に請われて人ならざる者との戦にも興じることができる。
 この世界には何の不満もない
 左近にとって何一つ不満はなかったが。
「伏犠さん。ちょいと二人で出かけませんか」
「おお。構わんぞ?どこへ行く?」
「遠出になりますがねえ、ちょいと佐和山まで」
「…人界に帰るのか?」
「ええ。伏犠さんなら人界まで俺を連れて飛ぶぐらい余裕でしょ?」
「できぬことはないが…」
「殿の周りには馬鹿しか残りませんでしたからね。やっぱり心配で心配で」
「…」
「ちょっと顔出すだけですよ。殿が死ぬぐらいまで」
「……戻ってくるか?」
「何いってんですかあんた」
「?」
「二人でって言ってるじゃないですか。殿の様子見に行くんで、ついてきてください」
「……」
「俺は欲張りなんですよ、伏犠さん。殿のことも心配だが、あんたのことも。…少なくとも、こんなとこまで来るぐらいにはね」
「…左近」
「嫌ならいいですよ。やめときます」
 仙界は穏やかすぎて、満足できんか。
 そうした性分が、あれほど魂を削らせ尚輝かせるのだろう。
 惚れた弱みか、と伏犠は深々とため息を吐き。
「…困った奴じゃのう。そう言われて引き止められる訳がなかろう。…準備は?」
「いつでもどうぞ。必要なもんは、殿が何とかしてくれるでしょ」
「…三成も酷い軍師を持ったもんじゃ」
 呆れたように笑い、伏犠は左近の腰へと腕を回して視線を彼方へと向ける。
 伏犠を中心に光が集まり始め、左近はその伏犠の横顔を眺めながら肩へと腕を回す。
「…少し飛ばすぞ。しっかり掴まっておれ!!」
 答を返す前に周囲が眩い光に包まれる。
 眩い光に周囲の光景も見えなくなった後、足元の地面の感覚がなくなり、奇妙な浮遊感の中で轟、と風の唸る音だけが響く。
 その中で、左近は口を開いて。

「      」

 風の音に掻き消され、その声は伏犠の耳には届かない。
「何か言うたか?」
「いいえ、何も!」


 光が収まった後、二人が立っていた場所には影すら残っておらず。
 その様子を彼方から見ていた影が三つ。
「まったく、呆れ返る」
「同感だな」
「…伏犠は、出かけたのか?」
「ああ、せっかく顔を見せに来てやったというのに。友達甲斐のない奴だ」
「…坊やがあいつを友達と思っていたとはな」
「何、酒呑童子にはまだそれ以外の言葉で我らのことを説明するのは難しかろう?」
「友、ではないのか?」
「いずれお前にもわかろう。…まあ、奴は暫くは帰ってくるまい。今日のところは帰るとするか」






「左近…?左近か…!?戻ってきたのか!!?」
「お久しぶりです、殿」
「お前…!今までどこをほっつき歩いて…!!」
「あっれー?左近じゃん?死んだんじゃなかったっけ?」
「噂は噂にすぎなかったって事だろ、馬鹿。見てみろ、足もちゃんとある」
「正則さんも清正さんもお元気なようで」
「っていうかそこに居るの伏犠さんじゃん!?チョーお久しぶりっす!!!」
「…ん?…ああ、久しいのう、正則」
「お前知り合いなのか?」
「何いってんだよ清正ぁ。伏犠さんじゃん。ほらあの仙人の……ってあれ?どこで会ったんだっけ?」
「…仙…人…?」
 唖然とした三成の横で清正が、ぽん、と手を打つ。
「…あー?…あーあーあー思い出した。伏犠だな。思い出した。思い出したっていうか…どこで会ったんだ?」
「…忘れてるんじゃなかったんですかい?」
「…そのはずじゃがのう?…流石は正則、といったところか」
「……殿はもちろんですが他のもおねねさんからの大事な預かりもんなんでね。手出しは無用に願いますよ?」
「信用されとらんな」
「今までの我が身を振り返ってくださいよ…さて、皆さん方。積もる話もあるでしょうが、この左近が戻ったからにはきりきり働いて貰いますよ!」

作品名:花と桃と紺碧 作家名:諸星JIN(旧:mo6)