堕落者18
「本当」
それから、漢字の書き合いっこが始まった。私が昔から読み書いてきた習慣と、彼の紙上の努力との比べ合いだった。案の定、というには良心が痛むが、彼は負けましたと一言述べる羽目になり、戦いの後には、字が無秩序に紙を這っていた。
「これからよろしく、ひよちゃん」
「日吉!です」
「一緒に遊ぼう、ひよちゃん」
ひよちゃんは子供ながらに潔く頷き、しかしついでに項垂れた。覗いた頭に彼のつむじが見え、顔を上げるまで眺めていようかと思ったが、ちっとも面白く無くて目を反らす。机の上の、たった一枚の紙に示された不公平な結果に、私は、ふとほくそ笑んでいた。
2009/01/29