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堕落者19

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「遊びは、何でも楽しいものだと思うけど」
 おのずと私は冷や汗を掻き始める。
「そうだね、あそびは楽しいものだ。あそびは」。上手くは言葉をまとめられないが、と、前置きして、彼は言葉を続けた。
「このごろいっしょにあそぶようになった彼女たちは、こう言うのもしつれいだけれど、とてもれいぎがなってないんだ。たとえば、一つ目。言いあらそいがおこりやすい。何かあそびをするときに、あそぶ内容は僕が決めるんだけど、ごっこあそびのばあい、役柄のとりあいからはじまるんだ。それでいつも、時間がかかる。二つ目。うそをつく。きのうはだれが何をしたから、次はべつの子、と言ったって、その子はそんな事はないって言うんだ。きのう私はちがったって。それで一々できごとをおってせつめいするんだけど、それでまた時間だけが経つ。三つ目。話が分からない。話をふっても変な返事しか返ってこないし、関係ない事を言い出す事もあるし、何より、彼女達同士のおしゃべりを聞いてても、いったい何について話合ってるのかわからない。話が飛んで飛んで、言ってる事もめちゃくちゃで。君たち以外の子とはあまり話してこなかったから、他の子との会話がなれてないだけかと思ったけど、このごろはそれだけではないと思っているよ。そして、りかいするまで時間がかかる」
 ここまで話して、跡部は一息ついて、再び口を開く。
「つかれるんだ。おおぜいであそぶのは、君たちと遊ぶのとちがった楽しさはあるけれど、言い争いや、うそつきや、ふかかいな会話は、なんとなく、何て言ったらいいか、気分がわるい。あそぶ時間はへって、楽しい時間が少なくなる。じゅんばんを守ってほしいし、うそをつかないでほしい。もっとわかりやすくへんじをしてほしいよ」
「なあんだ」
 彼がそこまで言い切ると、私は背筋を緩ませた。しかし、自分の横に突いた手のひらが湿っているのにふと気付く。
「何だい、僕はしんけんに話しているんだぞ」
「だって、解決してるじゃん」
「かいけつだって?」
 跡部は声を荒げて言った。私としては、先ほどまでの態度よりも、そうしてくれていた方が、気が楽だ。
「跡部、そういう事言ったの?その子たちに」
 私は優しい声色で語りかけた。癇癪を覚えず、愚痴を知った子供は、急にあどけない表情を見せる。
「言ってない」
「でしょ?」
「それが何だって言うんだい」
「跡部がそうして欲しくないなら、素直にそうして欲しくないって言えばいいんだよ」
「わざわざ言う事かい」
「わざわざって」
「じゅんばんを守るのも、嘘つかないのも、あいてにわかりやすく話すのだって、当たり前じゃないか」
 彼の言う事は、真に正論だ。耳に触れるのは久しい、建前として機能する事が多いそれら。子供の反論にはありきたりだが、彼が言うにはまだ幼過ぎて、似合わない。
「当たり前でも、その当たり前が出来てないんだから、誰よりも先に気付いた跡部が指摘してあげたら良いと思うよ」
「どんなふうにだい」
「どんなって。順番守ってとか、嘘吐かないでとか、普通に言えば良いんじゃない」
「それで、きいてくれなかったらどうするんだい」
「またその時考えよう」
 跡部は立ち上がった。すぐ振り向いて、こちらに晴れやかな笑顔を向けた。
「そうしてみるよ!」
 そして一人、一目散に体育館から出て行った。
体育館には子供達のはしゃぎ回る声が響きあう。彼の後ろ姿を見送り、肩を落とす私に、迎えはまだ来ない。



2009/02/10
作品名:堕落者19 作家名:直美