二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

ふざけんなぁ!! 9(続いてます)

INDEX|6ページ/10ページ|

次のページ前のページ
 

気の毒なお爺さんを守るべく、身を盾にして振り向けば、額に青筋をぶちぶちに浮かべて睨みを利かせる静雄と、その後ろにセルティがいる。
でも、何故か彼女は怯え、全身ガタガタと震えていた。

「あの、セルティさんってば、どうしたんですか?」
「こいつ、首都高で白バイ集団に散々追い掛け回され、逃げてきたんだとよ。で、ヘロヘロにへばった所、俺と公園でばったり会ったんで、新羅と一緒に帰しゃいいかと思って連れ帰った。それより、そっち……何揉めてたんだ?」
「幽さん宛に、プロダクションから台本と資料が届いたんです。でも、受け取ったのはいいんですけれど、私も他に買い物袋とか学校の荷物もあったので、二回に分けて運ぼうと思ったら、五十嵐さんが親切にも部屋まで運んでくれるって。……、でも、重いから申し訳なくて……」
「……、貸せ………」


静雄は管理人にガン飛ばして睨みつつ、ダンボールを肩に乗せ、帝人の買い物袋二つと肩掛けカバンまでとっとと片手で奪った。
「……軽いじゃねーか。おら、帝人、行くぞ」
不機嫌丸出しのまま、ずんずん大股で先に行ってしまう。

優しいお爺ちゃんに気を使い、ぺこりと一礼してから大急ぎで、歩幅の大きい静雄の後を、小走りで追いかけて。
玄関のドアを潜ると、今日も大音量のTV音がする。
居間をひょっこり覗いてみると、案の定起きていたパジャマ姿の幽が独尊丸と一緒にソファーにいて、静雄の額に再び血管がぶちぶちに浮かび上がった。

「てめぇ、何起きてんだ!!」
「おかえり兄さん」
「絶対安静で、寝てろっつっただろ!!」
「小腹が空いたんだ。食べ終わったら休む」

TVを見ながらもっきゅもっきゅと頬張っていたのは、静雄がお楽しみにと取っておいた、彼の分のプリンだった。
一瞬だけぴくっと静雄の顔の筋肉が引きつったけれど、「重症を負った幽が、率先して栄養を体内に取り入れられるまで回復しているんだ。我慢だ………、俺は兄だから我慢……」と自分自身に言い聞かせ、怒りを静める姿が何か可愛いい。

今日は牛乳を二本も買って来たし、弟思いの優しい彼の為、後で蒸しプリンを大量に作ってあげよう。
でもその前に……、今は!!

ぱたぱたと小走りに幽の部屋に行き、新羅に指示されていた点滴の交換用パックを取ってくる。

「幽さん、交換しますから腕貸してください」

彼は無言でこっちに向けてくれた。
幽の腕に刺さっている針は抜かなくて良い様に、テープでしっかり固定されていたし、液漏れもしていない。
ならば、帝人のやることなんて超簡単。
古いパックの下から刺してあった管の針を抜き、新たなパックをハンガーに吊るし、また管の針を突き刺すだけだ。

「新羅先生は、18時頃に来ますから……それまでにもし、ずれて腕が痛くなったら、言ってくださいね。点滴止めますから」
「うん」

そういいながら、もっきゅもっきゅと菓子を頬張るスピードが、全く落ちていない。
この兄弟、どれだけプリンが好きなんだ?

「おい幽、お前の会社から台本と資料が届いてたぞ」
「ん?」

静雄がテーブルの上にどんっとダンボールを置く。
幽はスプーンを咥えたまま、直ぐにぺりりっとガムテープを剥がし、中を開いたのだが……。

(……え……?……)

ぎっしりと詰められた書物の一番上に、嫌な雰囲気のある、変なコード一杯の黒くて小さい丸時計が見えて。
息を飲んで凍りつく帝人の目の前で、露骨に『カッチンコッチン』と大きな音をたて、秒針がスタートしやがりやがった。

「……な、なんで、なんで時限爆弾が入ってるの……!!」

帝人のぼやきに、静雄とセルティが、揃ってぐりんと体ごとこっちに向く。

「なんだとぉぉぉぉ!!」
≪え? ええ?≫

代わる代わるダンボールの中を覗き込み、あわあわ手をぱたつかせる二人と異なり、何処までもマイペースを崩さない幽は、中に入っていた小さなカードを手に取り、暢気に目を通していて。

「……あ。これ、開いたら1分で爆発って。う~ん困ったな……」
「「ふざけんなぁぁぁぁぁ!!」」


静雄が直ぐに帝人と幽をそれぞれの小脇に抱え、脱兎で外に逃げようとするが、セルティの方が冷静だった。

≪落ち着け静雄、私がいるから問題ない≫

彼女はバーテン服の襟首を引っ掴みつつ、すかさず、身に纏う影を大きく引き伸ばすと、ダンボール丸ごとくるりと包み込んだ。
全てを飲みつくす黒く丸い球体の中、ぼくっと鈍い音がする。
爆弾が破裂したのだろうが、宣告通りに被害は皆無で。
帝人は、一瞬でMAXまでいった緊張を解き、大きく吐息をついた。

「……なんだぁ、おもちゃだったんですか。もう、何処の誰です? こんな悪戯するなんて……」
「………。幽、お前の会社の連中に良く言っとけ。冗談キツイってな。………畜生、脅かしやがって、コロスコロスコロスブッ殺ス!!……」

だが、ゆるっと和んだ空気を粉砕したのは、セルティからぬぅっと突きつけられたPDAの文字を読むまでだった。

≪爆圧から推測すると、殺傷力、かなり高かったぞ。もし爆発していたら、私たち諸共部屋は粉々に吹き飛んでいた筈だ≫

再び、静雄の額にぶちぶちと青い血管が沢山浮き出てくる。
恐ろしい沈黙が部屋中を蔓延している最中、相変わらずもっきゅもっきゅとプリンを食べ続ける馬鹿が一匹。

「……幽くんよぉぉぉぉぉ……、お前、命狙われる心当たりは……?」
「無い。けど、これで二度目かな?」

静雄の機嫌がツンドラレベルまで急降下していく最中、それでも平然と菓子を頬張れる幽も十分化け物だと思う。


「……一度目は?……」
「兄さんも知っているだろう? 撮影中のあの事故だよ。俺の車、ブレーキオイルが抜かれてたんだ」


★☆★☆★


それは、TVで見た映像の後の事。

車から助け出され、意識の無い幽はドクターヘリで何処かに運ばれていったのだが、気がついた時、彼は病院の集中治療室で寝かされていた。

見知った顔は一つも無く、機械や点滴に繋がれている自分の身に何が起こっていたのかも、全く判らなくて。
白衣の医者や看護士達が代わる代わる個室を訪れ、去っていく最中、一人だけ場にそぐわないビジネススーツ姿の、金髪に大きな黒いサングラスで顔を隠したアメリカ人が、ずっとパイプ椅子に座ってベッドに付き添っていたのだ。

彼は『このままここで治療を受けるのなら、完治するまで外部との連絡は一切絶った方がいい』と忠告をくれた。
『何故?』
と聞けば、返事は簡潔だ。
『今、君は命を狙われている』と。

そんな事を急に言われても、幽自身、身に覚えがない。
第一、何処の誰だか正体も明かさないような目の前の男の言葉など、胡散臭くて信用もできなくて。
だから、平和島の血のお陰か……一眠りして動けるようになって直ぐ、自分のマネージャーに連絡を取ろうと、病室から脱走したのだが、廊下に出た途端SP(警護)の集団に捕まった。

再びベッドに縛り付けられて数時間後、再びやって来たサングラスの男から、『大人しくここで身を潜めるように』と言われたが、こんな拉致監禁なんて飲める訳もなく、『飼い猫が心配だから家に帰せ!!』とぐずったら、直ぐに病室に独尊丸が連れて来られた。