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past 後編

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第六章





エドワードの作戦。
それはロイをおびき寄せる作戦。
部屋の前で待ってくれていたアームストロングも加わり、作戦の説明した。

まず、アームストロングとグレイシア、そしてハボックを人質にロイを呼び出す。

親友を失ったロイの思いは痛いほど分かる。
隙を作ればまず間違いなく殺される。
だからこそ、こういうやり方でしかエドワードとロイが話し合う機会を作れない。

全てを話しても何も変わらないかもしれない。
でも、全てを話せば何かが変わるかもしれない。

信じてもらえない可能性は高いが、それに賭ける――




「だが、決め手に欠けるな。」

「・・・・分かってる。でも、これに賭けるしかないんだ。」

「エリシアちゃんが覚えてるんだろ?」

「でも、戦闘になるかもしれない場所に連れてけない。」

「・・・だよなぁ。」


「だが、可能性はある。」

「あぁ、少尉のおかげで。」

「・・・俺?」

「そう、少尉はちゃんと思い出した。
だからきっとって信じることが出来たよ。」


この作戦がうまくいくという可能性は低い。
そのことはよく分かっていた。
だが、それに賭けようという決心に至ったのはハボックのおかげだった。

歪み消されてしまった記憶も、取り戻せる。
エリシア、ハボック、それならば・・・・・

皆の記憶も取り戻せる。


「大将にはほんと、敵わないな。
いつか俺の上官とかなるんじゃねーだろうな。」

「俺一応国家錬金術師だし、既に上官じゃね?」

「うわぁ・・・・」

「軍人になるつもりだったのか。」

「・・・少佐も思い出したらいいのに。」

「・・・・すまぬ。」

「少佐とも結構思い出あるんだぜ?
一緒にリゼンブールにも行ったし、最後の見送りだって居たんだ。」

「うぬぬ・・・すまぬ。」

「ちょっと待て・・エド、見送りの日・・・・カメラ・・写真だよ!!!俺撮ったやつ!!」

「そういえば・・・そうか!!それに写ってたら、」

「「「証拠になる。」」」


病院で入院患者を装いつつ、ハボックと作戦会議をする。

僅かながら穏やかな日々が続いた。
エドワードはその間にいろんなことを考えていた。


アルフォンスのこと。
ロイのこと。
ウィンリィのこと。
皆のこと。

自分自身のこと。


――俺は迷惑と心配しかかけてねぇな。

思えば、
『守ってやる』とか、
『俺が絶対なんとかする』とか、
『俺に任せろ』・・・

そんな言葉ばかりを言ってきた。

だが、結果はどうだ。
俺はいつもうまくいったと思ってきたけれど、
その結果以上に迷惑かけて、心配かけて、苦しめたんじゃないか?


偉そうなことばかり言って・・・
俺は周りの人達が居なかったら、何も出来ない。


軍人になろうと思ってた。
今まで守られてきたことは分かってたから。
だから、あの旅でつけた力で皆を守りたい。

皆の笑顔を守って、
幸せに暮らせるようにって・・・・


でも、こうなって思い知る。


俺は一人じゃ何も出来ない。


俺はまた自分の力を過信してここに来た。
グレイシアさんやアームストロング少佐に会えなかったら、
俺のその過信が呼んだ結果は『死』だったと思う。

俺はいつだって守られてる。
悔しくてたまらないけれど、今は悔しがってる時じゃない。


今は、こう思う。

俺がまた守られてるのは
偶然じゃない――――――


ハボックに言われアームストロングが出来上がった写真を持ってきた。
エドワードは病室の窓から見える穏やかな風景に別れを告げた。

お世話になったレイには深く頭を下げた。
エドワード自身を信用したわけではないけれど、救ってくれたことに感謝した。
レイは笑顔で「またね」と言うと、病院の中に戻っていった。


ここからだ――




一人じゃ何も出来ない。

そんなの分かってる。
それでも構わない。


俺を支えてくれる人のように、俺も誰かの支えになってみせる。
誰かが何かをするときの力になってみせるから。


俺は一人じゃないから。

これからだ――――


作品名:past 後編 作家名:おこた