Sweet Kiss
[ Sweet Kiss ]
「ねぇねぇ七海!」
『はい、なんでしょう?』
「俺、七海からしかもらわないから!」
『えっ?!あのっ………!!』
一十木君は、期待に満ち溢れた目で私に話しかけてきた。
まるでわんこのように、キラキラと輝いている。
興奮気味に両手を掴まれて、
あまりにも顔が近くて逃げようと思ったけれど
これでは逃げるに逃げられない。
そして一十木君の言葉には決定的に足りないものがあって、
私は必死に平静を保ちつつ私は頭の中で?マークを浮かべた。
『あ、あのっ、い、一体何を…?
と言うか…ちょっと痛い……です………あと、近い………』
「えっ?あっ…ご、ごめんっ!!」
やっぱり無自覚だったのか、
一十木君は慌てて手を放して飛びのいた。
私は暴れる鼓動を必死に押し隠して呼吸を整えつつ、
顔が赤くなっていないか心配しながら一十木君の言葉を待った。
「あのね、もうすぐバレンタインじゃん?
それでね、俺、七海からしかもらわないから!
絶対に他の子からもらったりしないからね!!」
『・・・・・・』
「あれ…七海?おーい、七海ー??」
『あの………一十木君』
「なに?」
『もしも私があげなかったら…どうするんですか?』
「えっ―――?!」
一十木君の顔が硬直した。
さっき、あまりにも顔が近くてびっくりしたから。
だからちょっとだけ意地悪のつもりで言ったけど、
一十木君は完全に思考回路が停止してしまったみたいだった。
暫くしてやっと動いたかと思えば
完全に耳の垂れ下がってるわんこのようになってしまっていて、
一十木君のまわりにはどんよりとしたオーラが見える気がした。
何だか申し訳ない気がしつつも
そんな一十木君が可愛くてつい笑ってしまう。
『ごめんなさい、冗談です。
一十木君のお口に合うかわからないんですけど、
でも、頑張って一十木君のために作りますね。』
「ホント?!俺、すっげー楽しみにしてる!!
絶対、ぜーったい七海からしかもらわないから!!」
一十木君の表情がいつもみたいにパッと明るくなる。
その笑顔を見て、やっぱり好きだなぁ、なんて思う。
これだけ楽しみにしてもらえると、
上手くできるか不安ももちろんあるけれど
それ以上に受け取った時の笑顔を想像して、頑張れる。
寮に帰って早速友ちゃんに相談して、
どれにしたら喜んでくれるかなってレシピを見ながら考えて、
お休みの日には、一緒にラッピングも探しに行った。
優柔不断な私に友ちゃんが的確なアドバイスをくれて、
作るお菓子もラッピングも決まって、
たっくさん私の想いを込めてお菓子を作った。
料理はおばあちゃんに習って色々作ったけど
お菓子は作ったとしてももらってくれる人がいなくて、
今までほとんど作ったことがなかった。
ほぼ初心者みたいな感じだったけど、
わからないところは友ちゃんが教えてくれて、
おかげで多分それなりに上手に作れたと思う。
一十木君の喜んでくれる顔を思い浮かべながら
丁寧にラッピングをして、仕上げにリボンを巻いて。
当日は、とにかく朝からそわそわして落ち着かなかった。
どのタイミングで渡したら良いのかわからないし、
教室でみんながいるところで渡すのは恥ずかしい。
なかなか2人きりになれるタイミングもなくて、
もう放課後を狙うしかチャンスがなさそうだった。
『―――…あれ?』
でも、その肝心の放課後に、一十木君はいなかった。
いつもは必ず一声かけてくれるのに、
何か用事があったのか、一瞬のうちに一十木君はいなくなっていた。
聖川さんや四ノ宮さん、友ちゃんに聞いても行先はわからなくて、
荷物もあるからきっと戻ってくるとは思うけど、
それでも何となく無性に落ち着かなかった。
暫く教室で待っていたけれど一十木君は帰ってこなくて、
携帯電話も置きっぱなしで繋がらなくて。
だんだん心の中に黒いモヤがかかっていく。
早くこの不安を取り除きたくて、
受け取って喜ぶ一十木君の笑顔が見たくて、
いてもたってもいられず私は駆け出した。
探しても探してもなかなか一十木君は見つからなくて、
この時ばかりは広いこの校舎を恨みたくなった。
何度も廊下を行き来して、
いくつもの階段を上り下りして、
もう教室に戻ってるんじゃないかと帰ろうとした時だった。
「――――――…」
「――――――…」
廊下の向こうの方から何か話し声が聞こえて、
何となく気になって足を向けた。
本当に、ただ、何となくだった。
「ねぇねぇ七海!」
『はい、なんでしょう?』
「俺、七海からしかもらわないから!」
『えっ?!あのっ………!!』
一十木君は、期待に満ち溢れた目で私に話しかけてきた。
まるでわんこのように、キラキラと輝いている。
興奮気味に両手を掴まれて、
あまりにも顔が近くて逃げようと思ったけれど
これでは逃げるに逃げられない。
そして一十木君の言葉には決定的に足りないものがあって、
私は必死に平静を保ちつつ私は頭の中で?マークを浮かべた。
『あ、あのっ、い、一体何を…?
と言うか…ちょっと痛い……です………あと、近い………』
「えっ?あっ…ご、ごめんっ!!」
やっぱり無自覚だったのか、
一十木君は慌てて手を放して飛びのいた。
私は暴れる鼓動を必死に押し隠して呼吸を整えつつ、
顔が赤くなっていないか心配しながら一十木君の言葉を待った。
「あのね、もうすぐバレンタインじゃん?
それでね、俺、七海からしかもらわないから!
絶対に他の子からもらったりしないからね!!」
『・・・・・・』
「あれ…七海?おーい、七海ー??」
『あの………一十木君』
「なに?」
『もしも私があげなかったら…どうするんですか?』
「えっ―――?!」
一十木君の顔が硬直した。
さっき、あまりにも顔が近くてびっくりしたから。
だからちょっとだけ意地悪のつもりで言ったけど、
一十木君は完全に思考回路が停止してしまったみたいだった。
暫くしてやっと動いたかと思えば
完全に耳の垂れ下がってるわんこのようになってしまっていて、
一十木君のまわりにはどんよりとしたオーラが見える気がした。
何だか申し訳ない気がしつつも
そんな一十木君が可愛くてつい笑ってしまう。
『ごめんなさい、冗談です。
一十木君のお口に合うかわからないんですけど、
でも、頑張って一十木君のために作りますね。』
「ホント?!俺、すっげー楽しみにしてる!!
絶対、ぜーったい七海からしかもらわないから!!」
一十木君の表情がいつもみたいにパッと明るくなる。
その笑顔を見て、やっぱり好きだなぁ、なんて思う。
これだけ楽しみにしてもらえると、
上手くできるか不安ももちろんあるけれど
それ以上に受け取った時の笑顔を想像して、頑張れる。
寮に帰って早速友ちゃんに相談して、
どれにしたら喜んでくれるかなってレシピを見ながら考えて、
お休みの日には、一緒にラッピングも探しに行った。
優柔不断な私に友ちゃんが的確なアドバイスをくれて、
作るお菓子もラッピングも決まって、
たっくさん私の想いを込めてお菓子を作った。
料理はおばあちゃんに習って色々作ったけど
お菓子は作ったとしてももらってくれる人がいなくて、
今までほとんど作ったことがなかった。
ほぼ初心者みたいな感じだったけど、
わからないところは友ちゃんが教えてくれて、
おかげで多分それなりに上手に作れたと思う。
一十木君の喜んでくれる顔を思い浮かべながら
丁寧にラッピングをして、仕上げにリボンを巻いて。
当日は、とにかく朝からそわそわして落ち着かなかった。
どのタイミングで渡したら良いのかわからないし、
教室でみんながいるところで渡すのは恥ずかしい。
なかなか2人きりになれるタイミングもなくて、
もう放課後を狙うしかチャンスがなさそうだった。
『―――…あれ?』
でも、その肝心の放課後に、一十木君はいなかった。
いつもは必ず一声かけてくれるのに、
何か用事があったのか、一瞬のうちに一十木君はいなくなっていた。
聖川さんや四ノ宮さん、友ちゃんに聞いても行先はわからなくて、
荷物もあるからきっと戻ってくるとは思うけど、
それでも何となく無性に落ち着かなかった。
暫く教室で待っていたけれど一十木君は帰ってこなくて、
携帯電話も置きっぱなしで繋がらなくて。
だんだん心の中に黒いモヤがかかっていく。
早くこの不安を取り除きたくて、
受け取って喜ぶ一十木君の笑顔が見たくて、
いてもたってもいられず私は駆け出した。
探しても探してもなかなか一十木君は見つからなくて、
この時ばかりは広いこの校舎を恨みたくなった。
何度も廊下を行き来して、
いくつもの階段を上り下りして、
もう教室に戻ってるんじゃないかと帰ろうとした時だった。
「――――――…」
「――――――…」
廊下の向こうの方から何か話し声が聞こえて、
何となく気になって足を向けた。
本当に、ただ、何となくだった。
作品名:Sweet Kiss 作家名:ユエ