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こらぼでほすと 約束1

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 玄関が閉じる音がして、ぶへーとハイネは卓袱台に突っ伏して息を吐く。何をしていいのかすらわからなくて立ち竦んでしまった。
「参った。」
「修行が足りないな? ハイネ。」
 三蔵は、気にした様子もなく微笑んでいる。ここんところ、何度かあんな顔をしている女房と対面している。暇になると碌なことをしでかさない女房だから、坊主も気をつけているのだ。
「あれはキツイって。・・・・対処法は殴るがいいのか? 三蔵さん。」
「別に殴る必要はない。いつも通りに、用事を言いつければいいだけだ。まあ、いろいろと思うことはあるだろう。あいつ、参加できない上に、自分の実弟を差し出すんだからな。」
 三蔵もニールから、それは聞いている。俺はロクデナシのバカですから、と、当人は自嘲していたが、かなり精神的にはキツイ選択だろうと、三蔵でも考える。実弟の生存率は上がるとは言っても、戦場に出ることに違いはない。エージェントより危険度は増す。
「で、空梅雨ときたもんだ。元気だから考える。」
 いつもなら、すでにダウンして本宅で治療を受けているのだが、空梅雨で体調もいいから、余計なことに考えが行き着く。今年こそ、長雨のほうがよかったというのに、この天候だ、と、ハイネも笑う。
「そういうとこだ。黒ちびは、そろそろか? 」
「いや、まだ連絡がない。アローズの拠点をチェックしてるんだとすると、もう少しかかるだろう。」
「おまえは? 」
「今のところは、本宅とラボの往復ぐらいだ。せつニャンが宇宙に移動したら、俺も一度上がることになる。」
 軌道ステーション付近で建造されたものが物騒なものなので、ハイネは、それのチェックに赴く予定だ。設計図やらのデータはキラが、どこからか拾って来ているが、実際のブツについてもデータは必要だから、それを探りに行く。それは、ハイネの担当だ。
「再始動の前ってとこだな。」
「まあなあ、せつニャンが戻ったら、新しい機体と太陽炉のセッティングが必要になるだろうし、人員の確保もしなきゃならない。その間は、再始動はしないはずだからな。」
 現在、組織の実働部隊には、マイスターは二人だ。そして、戦術予報士も在籍していない。この辺りを埋めることから始まるから、いきなり派手な武力介入にはならない。その隙間の時間に、アローズの兵器の確認を、『吉祥富貴』でやっておくことになっている。黒子猫が戻ったら、『吉祥富貴』も本格的に動く予定だ。
「うちの女房のことは気にするな。こき使って、それでも眠れないって言うなら、俺が凹って寝かせておく。」
「おいおい、三蔵さん。」
「あいつだって解ってるからいいんだよ。おまえらが動いているのも承知のことだ。・・・・泣き言垂れたら、内臓のひとつでも破裂させりゃあ、大人しくなる。」
「愛のある言葉と受け取っておくけどさ。強烈な愛だな? 」
「毎晩、耳元で泣き言垂れられるより、マシだ。」
「そのサービスは俺が泣き言垂れてもやってくれるのか?」
「くくくくく・・・ああ、やってやるぞ。おまえならマグナムで一発だ。楽でいいだろ? 」
「・・・本気だしなあ。あんたの前では弱音は吐かないことにする。」
 坊主は本気だ。それぐらいでは人間は死なないと知っているから、ハイネを平気で撃つこともできるらしい。さすがに、そんなサービスは御免蒙りたいと、ハイネも前言撤回と手を挙げた。


作品名:こらぼでほすと 約束1 作家名:篠義