二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

お友達から始めよー!

INDEX|1ページ/2ページ|

次のページ
 
日本を初めて見た時、これなら俺の言うことを聞かせるのは楽勝だ、ヒーローの地位は揺らがない、問題なしと思った。それは世界会議などで言葉を交わすようになってからも変わらなかったし、はっきり言ってアウトオブ眼中だった。
 小柄で、無口で、存在感はないし、ジョークを言いそうにも理解しそうにもなくて、大笑いしたことなんか一度もありませんって顔ばっかじゃ面白くない。
 意見を求めたらいつも「善処します」。そうか、善処してくれるのか、ってことは100パーじゃなくてもなんとかなりそうだ、なんだお前いいやつじゃんと思っていたのに、その言葉は「いいえ」と全否定ってか。えぇー、マジで?
 言葉の裏を考えろって無理だから。まっすぐバーンと言ってくれよー。空気なんか読む気もないし、第一読めないし。正面突破で来てヨ。サムライってそういうもんだって本にも書いてあったぞ。
 こんな国は日本だけだ。意見を聞いても雑談しても、肯定してんのか否定してんのか結局俺にはわからない。そこんところを問い詰めるのも性に合わないし、何考えてんのかわかんないけど基本いい奴だし、他の国がかまってるのを見るとムカつくし、そんな奴らと仲良くすんなよって思うし、いつも気になるし。日本食、旨いし。
「よぅし、遊びに行こう!」
 即決即断即実行が俺のいいところと勝手に決めつけてアメリカはさっそく胸ポケットから携帯を取り出し、ピッポッパッとボタンを押す。アドレス帳にも登録していなかった日本の番号はいつの間にか発信履歴の大半を占めている。
 日本に同情した諸国から『突然押しかけるのはヤメロ』と猛烈に抗議されてからは電話をかけることだけは覚えた。が、それだけだ。
「あ、日本? 明日、遊びに行くから〜」
「・・・・・・考えておきます」
「それ、いいってこと? ダメってこと? ま、いいや、熱燗を用意して待っててネ。イェイ!」
 電話からは「それはちょっと」とか「また今度」とかぼそぼそした声が聞こえていたが、アメリカは一仕事終えたとばかりにブチリと通話を終了させてさっそく旅行の用意を始める。
 日本は訪ねてきた人間に嫌な顔はしない。なので今回も大丈夫なのだ。ずーっと大丈夫だったし。というわけで、アメリカの気分は上々、思わず鼻歌まで飛び出る。
 日本にはグレイトな温泉があるからなー。
 素っ裸でたくさんの人と風呂に入るのには驚いたが日本の肌が滑らかなのにも驚いた。湯で上気した背中を思わず触って困惑させてしまったほどだ。まったくそんな気もなかったのに、やたらとエロくさい手つきになってしまって、触るっていうより撫でるって感じだった。
 日本も驚いたかもしれないが俺も相当驚いて「うひょー」なんて訳のわからない叫び声をあげてしまった。挙動不審だ。明朗快活、単純明快が俺のモットーなのに。
 それにしても男に突然肌を撫でられても怒らないのは日本ぐらいだな。イギリスやフランスだったら容赦ない蹴りや鉄拳が飛んでくる。俺も張り飛ばすけど。
「あのしっとり感は温泉効果なのかナー」
 はたから聞けば思いっきり変態チックなことをあっけらかんと口にしながらアメリカはうきうきと用意をする。
 アメリカにとって、日本は何から何まで不思議だ。花が咲いては喜び、花が散っては悲しみ、それなのに真面目な顔で「花は散るから良いのです」と言う。からかわれているわけじゃないとわかっているから余計に頭がこんがらがる。
「ミステリーだよネェ」
 だからこそ日本と一緒にいるのは楽しい。こたつに入って、容赦なく緑茶を出されて、みかんを食べるだけでも、会議では見られない日本のリラックス顔を見つけて「まぁいいか」と思ったりする。ハンバーガーやアイスクリームの変わりに筑前煮と麦飯、おはぎを出されても「日本だからなー」と思う。
 アメリカが初めて日本の家に遊びに行ったときには「日本はちっさいからな」と狭さに目を見張り、事実いつものように動くだけで手足をどこかしらにぶつけたが1週間滞在後にはすっかり気に入ってしまった。
 縁側なるところで酒を飲みながら桜を見たり月を見たり、青々とした畳に布団をひいて二人で並んで寝たり、ビーチボールならまだしも紙風船なるもので遊んだり、浴衣を着せてもらったり、自国では経験できないことをおっとりと日本は教えてくれた。
 いつもなら、紙風船なんて見た瞬間に「ノーサンキューッ」と即断しているのに、日本がふぅっと吹き膨らませた手のひらサイズの紙風船で思いのほか楽しんでしまった。紙風船は何度か打つとぺしゃんこになってしまって、そのたびに日本が膨らませてくれたのも嬉しかった。もうちょっと遊びましょうと言われているようで。
 考えたこともなかったが時間とはこんなにゆったり流れるものなのかと目が覚める思いだった。
 無造作に庭の木の葉をちぎって口に当てて「ピーッ」と音をさせた時にはびっくりして思わず日本を見つめた。
「アメリカさんもやりますか?」
 うっすら笑って緑の葉っぱを一枚くれた。でもうまくできなくて「ぶふっ」とくしゃみを我慢したような音しか鳴らない。日本は笑うことなく「こうですよ」と葉をそっと薄い唇にあてて見本をみせてくれた。
 日本は偉い。こういうときに馬鹿にしないからな。他の奴じゃこうはいかない。あいつらは人を馬鹿にすることを悪いとも思ってないし面白がってるし。
 日本は散歩を日課にしていて「ぽち君」と話をしながら歩く。なぜに犬と会話? と思わないでもなかったが、これがまた落ち着く。すでにご老人の雰囲気を醸し出しているが日本って見かけのわりに年くってんだよなぁ、時々忘れるけど。アンビリーバボーだ。
 日本と犬の会話を聞きながら散歩にくっついていくと、さすがは気配りの日本。時々俺にも話しかけてくれる。
「アメリカさんはペットいるんですか?」
「いない。俺のうちはマンションだから飼うわけにはいかないしー。パーティに行けないじゃないか」
「アメリカさんらしいですね。私は家でのんびりしているほうが好きなもので」
 日本は200年以上も引きこもっていたから言い分はわからないでもない。よく一人でいられたもんだと感心する。ハンバーガーもケーキもコーラもないのに。ミッキーともドナルドとも遊べないんだぞー! そんなのイヤだ!
「手土産はクッキーにしよー」
 日本に美味しいものはたくさんあるが時々バターくさいビスケットやクッキーやキャンディが恋しくなる。
 半分以上というよりほとんどすべて自分のための手土産であることは日本も承知していて、おやつの時間に日本は草餅を食べているのにアメリカの皿の上にはパウンドケーキがのっかっていたりする。さらに泡立てた生クリームとハチミツがトロリとかけられているという気の利きようだ。それはそれで「グッジョブ!」と親指を立ててしまうほど嬉しいのだが、日本がちまちまと口にする「その緑の得体の知れないものも欲しい」。
 前回の来日時には「無理ですよ」と眉を寄せて言う日本に「ノープロブレーム」と無理やり貰ったが一口で挫折した。
「草ーッ」
「草餅ですから」
 ずずずっと緑茶をすする日本は冷静なままで、緑の物体を手に固まるアメリカから草餅を取り上げるとまたたく間に食べてしまった。
作品名:お友達から始めよー! 作家名:かける