情人好
バレンタイン当日、アーサーはいつもより早めに学校へと向かった。誰にも見られないように耀の机の上に花束を置くために。
早めに置きたかったので自分のクラスに行かずそのまま耀の教室へ足を運んだ。
幸いにも誰もないようだ。アーサーはメッセージを添えて花束を置いた。
“From someone who loves you”
“君のことが好きな誰かさんより”
ほかの人に知られたくなかったのと少し意地悪の二つの意味でメッセージを置いた。…まあ、イギリスでは名前を伏せて送るのだが
ここで耀に会ってしまったら元も子も無いのでさっさと自分の教室へと向かった。
自分の教室のドアを開けた時、何やら自分の机に赤いものが置いてあるのを見つける。
近くへ行ったら赤い綺麗な薔薇であった。しかし、なぜか一本と十一本に分かれていた。
なぜ一本と十一本に…ひとまとめにすればいいのに…そもそも誰が…?
そればっかりが頭の中でグルグル回っていた。
しばらくその薔薇を持って悩んでいたらいつもの声が聞こえた。
「あ、アーサーじゃん。おはよう的なー」
「あ…香…」
「………その薔薇は?」
「置いてあった…」
「ふぅん………」
一体誰が……なぜ薔薇が…
やはりそのことで頭が一杯のとき、香が口を開いた。
「…中国では情人好…バレンタインでは薔薇を贈るのが定番的な。本数にも意味があって一本なら「あなただけ」、十一本だったら「一途な思い」とかどうとかあるみたいッスよ」
「中国……?」
中国出身で自分の知っている人は一人しかいない
「まさか…」
その時、廊下であへんと大きな声で呼ばれた。
教室を出たら案の定自分の好きな人、耀が立っていた。
アーサーは耀の元へと走る。
「あへん…これ…」
耀がそう言い、差し出してきたのは先ほど置いて行った花束
「あとメッセージは…」
「そのままの意味だ。」
「…………え?」
アーサーは意を決して告白した。
「俺は…お前のことが好きだ。付き合ってほしい。」
耀はポカーンとしていたが、やがて顔を真っ赤にし、俯いてぼそりと何かつぶやいた。
よく聞こえなかったので、聞こうとしたら途切れ途切れに答えた。
「だからッ!我も…お前の事……好き…ある!」
アーサーも耀も顔を真っ赤にしていたが、お互いの顔を見て、幸せそうに笑ったのであった。