長男サンジ②
朝からキッチンで働く一人の男。
その男の名はサンジ。
つい先日、この船のコックを任された。
だが、仲間になったはいいが、この船の食生活はひどかった。
キッチンは闇、冷蔵庫は・・・。
苦労を重ね、サンジの心地よい空間にやっと近づいてきた。
だいたいの調味料、調理器具、野菜に果物に、これはもともとあったが肉。
この状態がずっと続く、もしくは向上すればいい・・と思う。
だが、この船は海賊船である。
そしてグランドライン。
いろいろ理由はあるが、
一番の理由は・・・・・・・・
「・・・・はぁ、ルフィーーーーーーーーー!!!!!!!!」
サンジの叫びは今日も絶好調。
今はまだ呑気にいや、満足気にいびきをかいているのだろう。
朝食の仕込みを前の晩に済ましていたのに、
朝、キッチンに来てみるとそれが忽然と消えていた。
あとでお仕置きだコラ。
怒っていても仕方がない。
全員の朝食を作らなくては。
とりあえず今後の食料配分を計算し直し、今を乗り切る。
他の海賊に盗まれたわけではないのに、
島までの食料の計算を間違えたわけではないのに、
どうしてこうも苦労するんだか。
サンジの悩みは絶えない。
全員が起きてきて、テーブルにつく。
今日の朝食は簡単な料理になった。
せっかくの仕込が台無しとなったので急遽作ったから当然だ。
だが、そんな短時間で作ったとは思えない仕上がりである。
そしてクルー達はそれで十分満足出来るのだ。
サンジとしては悔しいのだが、食べられてしまったものは戻らない。
そして無いものは仕方がない。
だが、不満は溜まる。
朝食を終えて、大量の食器を洗う。
それが終わるとすぐに昼食の準備。
メニューを決め、仕込みを始めたのだが・・・
なんだか外が騒がしい。
また何の喧嘩を始めたんだがとイライラがつのる。
まったく掃除や洗濯、いくらでもやることはあるだろうに。
アイツ等は喧嘩ばっかりしやがって。
今後のことを考えつつ、
昼食の準備を進めるが・・・
五月蝿い。
あーーーくそっ
五月蝿い。
あっナミちゃんの声・・
っが聞こえねぇだろうがっ!!!!!
「うるせぇぇぇぇぇーーーーーーーー!!!!!!!」
ドアを思い切り蹴り開け、サンジが叫ぶ。
その声に思わず振り返る人達。
だが、その人数がおかしい。
ルフィ、ゾロ、ナミ、ロビン、チョッパー、ん?長鼻・・は何処だ?
そしてその他大勢の見知らぬ顔、顔、顔。
「・・・誰だお前ら?客か?」
「敵襲じゃ馬鹿っっっ!!!!」
「お前そこに居たのか。」
「・・・んげっ!!!」
ウソップが柱の影から顔を出して、全力でツッコむ。
結果、敵にバレてしまい今は全力で逃げている。
「うっはぁぁぁーーひぃいいいい!!!!」
「頑張れ長鼻~」
「長鼻じゃねぇっよっ!!!!!キャーーー!!!!」
「命がけのツッコミだな。」
サンジはポケットから煙草を取り出して火をつける。
そしてその場にしゃがみこみボーーッとその戦闘を眺めた。
サンジの元へ来ようとする敵は皆、ルフィとゾロが倒してくれる。
ルフィは久しぶりの敵襲に興奮していた。
だが、ゾロはなんだかイライラしているようだった。
まぁ、その気持ちもわからなくない。
「おまえなぁっ!! 戦えねぇなら隠れてろっっ!!!!」
「ハハッゾロくん後ろ後ろ。」
「ぬあっこのっっ!!!!!」
「サンジーー飯出来たのかぁー?」
「もうすぐ出来るぞー。」
ゾロは庇うのが面倒でキレているのだ。
ルフィはそんなこと気にしないで呑気に会話をする。
横目でチラリと見るとロビンとナミとチョッパーが3人で戦っている。
ロビンとチョッパーは悪魔の実の能力者。
その辺の雑魚よりも数倍は強い。
ナミもこのクルー達を黙らせるだけの強さがある。
(・・・俺は、戦うべきか?)
サンジはこの船に乗ってから戦闘員という扱いは受けていなかった。
コックとして乗ったので、皆が戦闘は無理だろうと勝手に判断しているのだ。
確かに少しは力になるとは思うが、果たして戦っていいものか・・・
この船に乗ってまだ日の浅いサンジは悩んでいた。