長男サンジ②
皆、それぞれ自分の役目がある。
その役目はイコール自分の居場所なんだ。
俺がまだ自分の店を持つ前。
俺はレストランで修行していた。
本当の息子のように可愛がってくれたジジィ。
俺は教わった大切な料理を一生続けると誓った。
そのためにも、違う店で学ぼうと思った。
ジジィの店を出て、他の味も学んだ。
そしてジジィ譲りの俺の味を見つけた。
俺の料理を作れるようになった。
だが、俺はそのレストランの料理長だった男の居場所を奪った。
俺の料理がオーナーに認められたのは嬉しかった。
店で出してみろと言われた日は本当に舞い上がってた。
綺麗な手がガサガサになるまで新メニューを考えて、
悩んで、もがいて、苦しんでる男が居たのにも気付かなかった。
気付いたときは、そいつが辞めた時だった。
確かに実力社会で競争の激しい世界。
そんなことで折れる奴はどうせ続かない。
それまでの男だったんだと言えるかもしれない。
だけど、俺はそいつから料理を・・
居場所を奪ったんだと思うと、苦しかった。
俺が謝ればさらにプライドを傷つける。
俺は何も出来なかった。
もう誰の居場所も奪いたくない。
俺の手の届く範囲。
俺が見える範囲。
せめて、その中に居る奴の居場所は守りたい。
絶対に絶対に奪うことだけはしたくない。
言ってしまえばトラウマなんだろうなと思う。
だけど、もうあんな背中は見たくない。
この船に乗って、
俺は俺の居場所を見つけた。
だけど、戦闘の時は毎回のように悩んでしまう。
戦うか、戦わないか。
俺も一応は戦える。
それなりに戦力になるだろう。
以前はどんな喧嘩も買っていた。
だが、それはもう昔の話。
守らなくてはならない立場になって変わった。
自分が自分の店を持ち、自分の下に付いてくれた者達を守るため、
そんな短気な部分を必死に直してきた。
確かに悔しい思いをしたこともある。
だが、結果的にうまくいったことも多かった。
居場所も奪うことは無いし、
戦わずに済むならそれにこしたことはない。
そう感じていた。
戦って疲れて腹減って、
そんな奴らに俺は飯を出す。
それでいい。
そう思っていた。
でも、こうして見るたびに思う。
(楽しそうだなぁ・・・・)
全員が生き生きしてる。
ここはこんなにも広大な海の上。
こんなちぽけな我慢、無意味なんじゃないか・・・
それでも、俺の足を動かさないのはやはりトラウマ。
この戦闘の中に俺の居場所は―――
「おいゾロッ後ろだ!!!!」
「・・うぉっ!!」
「ルフィッ上だ上っっ!!」
「おーーー危ねぇっ!!」
「チョッパー!!」
「ロビン!!!」
「ナミ!!」
「ウソップ!!!!」
・・・なんだよ
足りてねぇじゃねーか
空いてるじゃねぇか
なら、良いのか?
俺も混ざって良いのか?
俺はコックだ。
海賊船のコックだ。
仲間は皆、賞金首。
俺もいつかなれっかな、
戦うのも・・大アリだな。