長男サンジ②
「ではでは、よっこらせと。」
サンジは煙草の火を消す。
そして立ち上がる。
「ちょうど鬱憤がたまってたんだ。」
こうして覚悟すると、
なんで今までうだうだ悩んでいたんだか。
あぁ、空気が美味い。
以前までの息苦しさは消えていた。
ゆっくりと戦闘の中心に歩いていく。
それに気付いたゾロが思わず庇うように前に出る。
「・・お前どういうつもりだっ!!!」
「もっとよく見ようと思ってな。」
「はぁ!!??」
「ゾーロ、」
「なっ!!?」
ゾロを振り向かせたかと思うと、
すかさず両肩に手をつき、足を振り上げる。
ゾロの体をそのまま軸にして周りにいた敵を両足で全員蹴り飛ばしていく。
そして着地すると、ゾロの両肩をポンポンと叩いた。
「お疲れさん。」
「・・・・・・・。」
ゾロは驚きで反応が出来ずに居た。
そんなゾロを置いてサンジはナミやロビン、チョッパー達の所へ向かう。
3人は敵に囲まれていた。
「ナーミちゃーーん。」
「・・サッサンジくん!!?」
「今、行くね。」
「・・・・・え!??」
取り囲んでいた敵の一人から刀を奪い取る。
そして、ナミ達を取り囲んでいた敵の目を引きつける。
刀を振りつつ、蹴りも食らわすサンジの攻撃に先が読めず、次々と敵は倒れていった。
最後の一人を倒すと、刀をポイッと捨てる。
「大丈夫だった?」
「・・・・サン・・ジくん・・あなた、」
「凄いのね。」
「・・・サンジ・・カッコイイ!!!!!」
「おっと。」
サンジが走った方向にはウソップが今にも切られそうだった。
「ヒィィィィィィィーー!!!」
「うがぁぁっ・・!!」
ギリギリのところでサンジが敵を蹴り飛ばし、なんとか助かった。
「サッサッサンジ!!!!」
「鼻は無事か!!!?」
「鼻かよっ!!!!」
「サンジーーーーーーーーーー!!!」
サンジがウソップの鼻を心配していると、
後ろの方からルフィの声が聞こえたかと思うと・・
一気に大音量になり、気付くと倒れたサンジの背中にルフィが抱きついていた。
「サンジッッ!!!おめぇスッゲェなっっ!!!!」
「ルフィ、重いから、まず退け。」
「ハハッサンジ、お前最高だっ!!!!!」
「あーーーそうか、ハハッ良かった。」
『お前の料理は最高だ』
料理を褒められたことは沢山あった。
だが、俺自身を褒めるやつはあまりいない。
それでいいと思ってた。
でも、こうして言われると・・・嬉しいもんだ。
この選択は間違ってなかった。
背中にぎゅうぎゅうと抱きつかれつつも必死に起き上がる。
まだくっつくかっ!!と思うが、今は・・良いだろう。
ナミやロビンやウソップにチョッパーもサンジを囲んで喜んだ。
「サンジくん、あなた凄いわ。」
「頼りになるわね。」
「お前はただのコックじゃねぇと俺は分かっていた。」
「俺にさっきの教えてくれっ」
ほんとに、海賊ってのは最高だ。
いや、この船が、皆が最高なんだな。
あの日俺を叩き出した皆には感謝だ。
そして俺をひっぱってくれたルフィ、本当にありがとう――
「なぁ、ところで・・・ありゃなんだ?」
サンジが指をさした先には、
未だに刀を3本持ったままさっきの状態で固まったゾロが居た。
「何あれ。」
「面白いわね。」
「どうしたんだゾロ、」
「具合悪いのかな・・」
「ゾローーーーーーー!!!!」
ルフィが呼ぶが返事がない。
うん、で、さぁお前すげぇな―――
全員見なかったフリをした。
「さっ飯の準備の続きするかな。」
「今日はなんだ??」
「お前の好きなもんにしようか?」
「本当かよ!!??」
「私は魚介のスープパスタがいいわ。」
「美味しそうね。」
「承知しましたレディ。」
「おいっっ!!!!でも、美味そうだな。」
「俺もそれがいいぞ!!」
「肉入ってるか?」
「お前だけ入れてやる。」
「サンジ、お前は本当に最高だ。」
「お前は盗み食いしなきゃ最高だ。」
「ちょっとルフィまたやったの!!?」
「そうなんだよナミちゃん・・・鍵付買おうよ。」
「そうね・・考えとくわ・・」
・
・
・
・
・
・
・
・
ガチャンと口に銜えていた刀が落ちる。
「・・・・・・惚れた。」
新たな悩みを抱えそうなサンジであった。