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こらぼでほすと 約束4

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ようやく、ラボにフリーダムは帰還した。時間調整して深夜を過ぎた頃に戻って来た。フリーダムの整備は、マードックたち整備員に任せて、とりあえず放浪していた現地のデータを取り出して、鷹に渡した。これを解析してユニオンの各基地の情報を確保する。
「ご苦労さん、せつニャン。明日、ママニャンのとこには送ってやる。まだ体調は万全でないから、あんまり無茶しないように見張っていてくれ。」
「了解した。ニールは本宅か? 」
「いや、マンションだ。おまえさんと二人で過ごしたいって頼まれたから、あっちで待たせてある。滞在は、どのくらいの予定だ? 」
「十日だ。・・・予定より時間がかかった。」
「わかった。それじゃあ、最終日辺りは、エクシアの整備確認をしてくれ。それ以外は好きに過ごせ。ママニャンと二人だけがいいなら、そうすればいい。キラたちも、その間は遠慮する。」
 刹那の思うように、と、キラからも指示が出ている。黒子猫としては、親猫とのんびりしたいだろうから、最終日辺りに、これからの打ち合わせやエクシアの引渡しの説明なんかをやることだけ、鷹も告げた。
「寺はいいのか? 」
「ああ、三蔵さんと悟空は本山へ出張だ。今、寺は沙・猪家夫夫が留守番しているから、そちらの呼び出しもない。」
「わかった。」
 それだけで納得した黒子猫は、スタスタと歩き出す。ラボの仮眠室へ行こうとするから、鷹が止めた。
「待て、そっちじゃなくて別荘の部屋へ行け。ちゃんと自分を洗っておいてくれ。それから夜食も用意してあるはずだから、それも食って寝ろ。」
 黒子猫は、あまり頓着しない性格なので、帰還すると薄汚れている。その状態で仮眠して移動なんぞされたら、親猫からラボへ抗議される。少しばかり身繕いはさせておかなければならない。面倒だ、という顔の黒子猫だが、親猫に叱られるのも理解しているから、エレベーターへと向かった。






 翌日、ハイネは出勤せずに、マイスター組社宅のマンションに居座っていた。別に、野郎二人だから、これといって会話することもない。ニールが考え事をしたいと言ったから、居るだけでニールにじゃれたりはしていなかった。食卓の椅子に座って、ニールはぼんやりと中空を睨んでいる。たぶん、これから黒子猫に伝えることを確認しているのだろう。ハイネは居間のソファで、ラボから送られたメールを読んでいる。予定では。午前中に黒子猫は戻って来る。それと入れ替わりに、ハイネは本宅へ戻る。しばらく見納めになるのだから、二人で過ごせばいい。その間は、こちらからのアプローチはしない。
「ママニャン、そろそろだ。」
 携帯端末の時計を確認して、ハイネが立ち上がる。本宅のスタッフが刹那を送ってくるから、ハイネは、それで本宅へ行くつもりだ。おう、と、ニールのほうも立ち上がる。マンションのエントランスへ降りて、数分もしないうちに本宅のクルマは到着した。中から黒子猫が降りて来る。それと入れ替わるようにハイネがクルマに乗り込むと、そのまま発進した。
「おかえり。」
「ただいま。」
 エントランスで、どちらも挨拶する。小綺麗な黒子猫は、親猫の顔を眺めて、いつものように石を取り出した。
「大きな隕石の落下地点で拾った石だ。」
「ふーん、そんなのがあるのか。」
「世界遺産に認定されている。」
 受け取った石は、赤茶色をしていた。これだけは、宝石ではない。刹那が、そこで決めたから、その証に拾ってきた。ありがとう、と、礼を言って親猫は、黒子猫を促して部屋へ移動した。いつも通りに、どちらも動いている。




 とりあえず、部屋の居間に落ち着くと、親猫がお茶を用意した。見たところ、別荘のほうで黒子猫は綺麗に洗濯されていたから、慌てて風呂に叩き込む必要はなさそうだ。どれくらいの滞在なのか、と、尋ねると、「十日。」 という返事だ。やはり、それぐらいか、と、親猫も頷く。刹那が口にしていた予定では、そろそろ宇宙に上がっている時期だ。
「それなら、悟空とも会えるな。後一週間で帰って来る。」
「そうか。三蔵さんには挨拶しておきたかったから都合がいい。」
「今日は、ゆっくり休め。・・・それから、俺に付き合ってくれ。ちょっと話しておきたいことがあるんだ。」
 帰ったその日に慌ててするほどのことではないから、今日は、ゆっくりさせようとニールは予定している。小難しい話は明日でいい。十日もあるのだから、初日から詰めることもないだろう。だが、黒子猫は、いきなり口を開く。
「では、俺からの質問に答えて欲しい。」
「ああ、なんだ? 」
 ニールのほうは気楽に答える。刹那は、ちょっと考えて真面目な顔でニールを睨んだ。
「マイスター候補は見つけられなかった。だから、あんたの弟を組織へ連れて行く。・・・・・それでいいか? 」
 いきなり爆弾発言だが、先にハイネにやられたから、ニールも落ち着いたものだ。こくっとお茶を飲んだ。視線を黒子猫に合わせて答える。
「もちろんだ。それでいい。・・・勧誘方法については、俺から提案がある。」
 明日でいいだろうと思っていたのに・・・、と、苦笑して勧誘方法の説明を始める。まず、ニールが組織に居たこと、それから死んだことを先に告げて、ある程度の組織の情報を渡して検討する時間をくれてやってくれ、と、説明した。おそらく、その検討時間でカタロンのほうと相談するはずだ。組織へ潜入できるとなれば、カタロンも諾という返事をさせるだろう。
「あいつらも、うちのMSには興味があるだろう。そこいらの情報の匙加減はティエリアにしてもらえ。・・・それから、俺は死んだと、はっきりと伝えろ。」
「なぜ、死んだことにする? あんたが生きていることは教えてやったほうがいいんじゃないのか? 」
「ダメだ。俺が生きてるなんて判明したら、あいつはやりたがらない。・・・それに、組織へ戻れない俺は死んだも同然だ。絶対に教えるな。」
 生きていると教えれば、戻って来る可能性を考えて辞退されるかもしれない。途中で交代するような曖昧なものだと思われるからだ。それに、ニールは実弟と縁は切れている。今更、生存報告されても、相手にも迷惑だ。
「わかった。」
「素人じゃないけど、マイスターとしては素人だ。勧誘してから訓練はしなきゃならないだろう。そこいらはティエリアに頼め。今の訓練プログラムを組むのは、あいつの担当だろうからな。あと、あいつのコードネームは、ロックオン・ストラトスにしてくれ。そのほうが情報開示レベルが高くなる。ただし、俺が閲覧可能だった全部を開示しなくていい。そこのブロックは頼むぜ? 俺、かなりの開示レベルだったからな。」
「なに? コードネームは、あんたのものとは変えたほうがいい。」
 刹那にとって、ロックオン・ストラトスは、たった一人であって欲しい。今後、そのコードネームを使うことはなくても、その名前はニールのものであって欲しかった。たぶん、ティエリアやフェルトも同意見だろう。
「いいや、俺のコードネームは生きてるんだから、それを活用させてやってくれ。カタロンへ秘密漏洩させてやるには、そのほうがいい。ある程度の漏洩は黙認しておかないと、あいつの旨味がないだろ? 」
作品名:こらぼでほすと 約束4 作家名:篠義