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こらぼでほすと 約束4

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「話を摺りかえるな。あんたが死んだのは、確かに冷静さを欠いた結果だ。だが、今、話していることは、あんたの弟を守ることだ。それについては、俺は守ることはやめない。・・・俺が守れずに、あんたの弟が死んだら、今度こそ、俺は帰る場所を失くす。あんたも、たぶん死ぬ。そうならないための約束だ。」
 刹那には戦場以外に居られる場所は、ニールの許だけだ。そこを喪ったら、戦場以外に居られる場所はなくなる。未来を考えるにしても、ニールとやることしか思いつかないのも、そのためだ。だから、ニールの弟を守ることで、刹那も帰れる場所を死守することができる。
「あんたがいなくなったら、俺は世界を憎む。未来など考えない。これから先のことには、あんたとやることばかり浮かぶんだ。戦わない未来には、あんたが必要だ。そのためには、あんたの弟が生きていることも必要だから、守るんだ。それは、俺だけじゃなく、ティエリアやフェルトやアレハレルヤにも必要なことだ。だから、約束する。あんたの弟は死なせない。絶対に死なせないで終わらせて帰って来る。・・・・・約束だ。」
 力強く親猫の瞳に向かって誓いを立てる。これだけは、何があっても守る。親猫が悲しい気持ちにならないように、刹那自身が帰れる場所を失わないために、それを自分の心にも刻み付ける。じっと睨み合っていたら、親猫が黒子猫を抱き締め直した。顔は見えないように、親猫の肩に黒子猫の顎を乗せるように押し付けた。
「・・・男前になったな? 刹那。惚れちまいそうだ。」
 小刻みに震える肩に黒子猫も顔を埋める。頭を撫でてくれる手の温かさがあれば、約束は守れるだろう。
「あんたには三蔵さんがいるだろ? 俺には惚れるな。」
「・・・そうだな。・・・・約束してくれ。必ず、帰って来るって。」
「約束する。あんたの弟と帰って来る。ティエリアとフェルトとアレハレルヤも一緒に帰って来る。だから、あんたも生きていろ。俺と一緒に戦え。」
「・・・約束するよ。ちゃんと生きて待っている。おまえさんと一緒に戦うから。」
「終わったら、あんたと桜を見るつもりだ。それから、あんたの看病もする。もう一度、動物園の虎と会いたい。あいつと話をするつもりだ。あんたも一緒に行こう。俺のおかんだから、あいつは吼えない。次は、もっと分かり合えるはずだ。・・・俺の戦わない未来は、そんなものだ。これで宿題の答えになっているか? ニール。」
 出かける前に出された宿題の答えを、つらつらと口にした。どれも親猫がいないとできないことばかりだ。戦って戦って、その先にあるものは、そういうものだと思った。また、その先に戦いはあるだろう。だが、その先の戦いが終わったら、また親猫と一緒に居られる。親猫のところへ帰ってくれば、刹那は戦わない未来を思い描けるのだ。
「答えとしては、五十点だな。・・・まあいいさ。そうやって先のことを考えれば、そのうち、おまえの戦うばかりじゃない未来に変るんだろう。」
 もっと先になれば、戦わない未来というものも刹那に思い浮かぶのかもしれない。戦場が生きる場所だ、と言う刹那の頑なな考えも、少し変った。これから、その未来の映像は変化していくはずだ。いつかニールがいない未来も現れると信じたい。それまでは、生きて刹那たちの戦いを見守るのが、ニールにとっての約束だ。戻れる場所で在り続けるためには、かなり精神的にキツイ戦いになりそうだが、耐える覚悟はできている。いつでも、「おかえり。」 と、出迎えてやれるように生きているつもりだ。
 気持ちを切り替えて、これから、刹那はどうしたいのか、ニールは尋ねた。十日といっても最後のほうは、ラボでエクシアの調整もあるだろうし、寺へ挨拶にも行かねばならない。そうなると正味一週間が、刹那に与えられる休暇だ。抱き締めあっていた身体を離すと、黒子猫は親猫の横に座り直す。
「あんたと二人で、のんびりしたい。」
「動物園に行くか? 」
「いや、どこにも行かなくていい。ただ、あんたと過ごしたいだけだ。」
「引き篭もってちゃ勿体無いだろ? いろいろと教えておきたいことがあるから、二、三日は、時間を貰いたいが、それが終わったら出かけようぜ? 」
「あんたが行きたいところがあるなら付き合うが、外出は短時間にしてもらおう。あんたの体調に問題がある。」
 まだ、親猫の体調は完全に戻っているわけではないし、この気温と湿度で長時間の外出は、親猫には毒だ。そこいらは、刹那も、鷹から指示されているから、従うつもりだし、本当に、どこかへ行きたいというところがない。親猫と、のんびり二人で過ごせればいい。
「そこまで弱ってないんだけどな? 俺。」
「嘘は、もういい。鷹から聞いている。」
「・・嘘って・・・あのさ、俺、漢方薬治療で、すこぶる元気なんだぜ? 」
「まだ、復調していないくせに、何が元気だ? どうせ、あんた、昨日も昼寝してないんだろ? 今日は、ゆっくりしていろ。」
 まるで、見て来たかのように黒子猫は、昨日の親猫の様子を言い放つ。確かに、昼寝はしていない。組織のことや、マイスター組リーダーとしてのことを、どういうふうに黒子猫に説明するか考えていた。ティエリアと仕事は分担することはできるが、リーダーというのは、それだけではない。戦術予報士と、先に打ち合わせもするし、整備責任者のイアンとも各MSの状態の確認もしなければならない。他のマイスターが動きやすいように差配するのもリーダーの責任だ。それには精神的なフォローも含まれる。戻って来るアレルヤたちのことも、最初は気をつけて見ている必要があるし、マイスターの連携については、ティエリアにも意見を求めるべきだ。そういうことを、つらつらと考えていたら、あっという間に一日が終わっていた。
「いろいろと言いたいことを考えてたんだ。」
「それは聞く。」
「初日からやることでもないと思うし、昼は外食しようぜ。」
「それなら、何か買ってくる。」
「せっかく帰ってきたんだから、うまいもんでも食おう。」
「俺には、あんたの料理が最高だ。それ以上のものはない。」
 ああ言えばこう言う。とりあえず、外出はさせたくないらしい。相変わらず頑固であるから、親猫も諦めた。ホールドアップするように両手を挙げて、大笑いするしかない。
作品名:こらぼでほすと 約束4 作家名:篠義