2/14 長男サンジ
「今日はサンジくん、ダイニング立ち入り禁止。」
「・・ぇ?・・ちょっナミちゃん?それは困るなぁ・・。」
「駄目ったら駄目。」
「そんなぁ・・・」
「入ってきたら許さない。」
「参ったな・・・。」
バタン――
目の前でダイニングの扉が閉まる。
「・・・・洗濯するか。」
仕方がないので、洗濯を始める。
基本的にじっとしていられないので、働く。
そうでないと落ち着かない。
チラチラと見るダイニングに他の連中は入っていく。
(なんで俺だけ?)
いじめですかねぇ・・・などと呟きながらせっせと男共の服をゴシゴシと洗う。
だが、それも手際の良いサンジはすぐに終わってしまう。
相変わらず、サンジはダイニングに入ってはいけないらしい。
ご丁寧に張り紙が貼られた。
(そろそろ夕食の仕込み・・・・)
はぁとため息をこぼしつつ、今度は船の掃除を始める。
一度気にし始めたら汚れを落とさないと気がすまない。
レストランは清潔でないと駄目だ。
まぁ、ここは海賊船なんだが。
ゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシ・・ゴツン。
ゴツンゴツンゴツンゴツンゴツンゴツン・・・・・
「テメェいい加減にしろよ。」
たまたま、本当にたまたま掃除していたら。
そこに緑色の頭があって、思わず八つ当たりではないが、ぶつかってしまった。
そして、ついでだから聞いてみる。
コイツはきっと嘘をつけるタイプじゃないから。
まぁ肯定がきたらそれなりにショックだけど。
「なぁゾロ、俺って嫌われ者?」
「・・何言ってんだ?」
「ゾロは俺のこと好きか?」
「・・はぁ!!!!!?」
「おっ良い反応。」
「・・・ざけんなっ!!!!!」
「冗談だって、なぁ俺なんでダイニング入れてもらえないんだ?
俺はコックなんだぜ?・・・・俺嫌われてる?」
「なんでって・・・今日は―――
「ゾローーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」
「・・・んげっ!!」
「ナミちゃんっ!!・・もういいの?」
「駄目。ちょっとゾロ来なさい。」
ズルズルズルとゾロが連行された。
パタンとまたもダイニングの扉が閉まる。
カチャと開くとナミが張り紙を指差しまた閉める。
「・・・・・・なんなんだ。」
サンジはいつの間にか甲板に一人になった。
どうやらサンジ以外の全員がダイニングに居るらしかった。
(とてつもない孤独を感じる。)
(年下の考えることが分からん。)
掃除を終え、とうとう何もやることがなくなった。
レシピでもまとめたいところだが、それもダイニング。
やることというか、やれることが無かった。
サンジは適当に座り込み、寝そべった。
「綺麗な空だな。」
こんな広い海に小さい船。
「一人は寂しいぜ。」
以前は外へ出れば人が居た。
街から人が消えることはない。
朝起きてしばらくすれば出勤してくる仲間が居る。
常連の客が来る。
人がいつだって近くに居た。
でも、ここは違う。
もし、置いてかれたらこの広大な海の中・・孤独なんだ。
「・・・・・みんなぁー・・
ルフィーー
ナミちゃーん
長鼻ぁーー
ロビンちゃーーん
チョッパーーー
ゾローーーーー
俺を置いてくなよぉーー
お兄さん、頑張るからよぉーー・・・」
空に向かって呼びかけると一層寂しさが増した。
ゴロリと回転し、うつ伏せになる。
そして恨めしくダイニングを見つめる。
相変わらず、張り紙が貼ってある。
だが、そのドアが少し開いて・・・る?
「おい。」
「・・・・あ?」
見上げるといつの間にかゾロが真横に立っていた。
ゾロはなんだか、気まずそうにしていた。
「誰も、置いていったりしねーよ。」
「・・・・聞いてたのかよ。」
「気づけよ。」
「まぁ確かに、それより・・・・・
「・・・ぬあっっ!!??」
サンジは立っていたゾロの腕をひっぱる。
するとゾロは体勢を崩されサンジの上に倒れこんだ。
急いで離れようとするゾロだったが、サンジがゾロを逃がさなかった。
「甘い匂いがする。」
「・・・・・・・離せっ・・」
「なぁ何か作ってたのか?」
「・・・・・・。」
「俺の作るもんじゃ不満だったのか?」
「それは無い。」
「・・・本当か?」
「あぁ。」
「だったら、なんで・・・」
「・・・・なぁ、」
「なんだ?」
「この状況、分かってんのか?」
「・・・・ん?」
サンジの腕がいつの間にかゾロを開放していた。
だが、ゾロは離れなかった。
その代わりサンジの顔の両脇に手をつく。
「何されても文句言えねぇぞ。」
「・・・ゾ・・ロ?」
作品名:2/14 長男サンジ 作家名:おこた