こらぼでほすと 約束5
二日間、ニールは真面目にマイスター組リーダーとしてやっていくべきことや、自分が知っている組織の内部のことなどを教授することに専念した。それらを吐き終わると、日常的なことや、ちょっとしたことに話は移った。そうなると、思い浮かぶものから、ニールも告げていくという感じになる。それほど肩の凝る話でもないから、気楽な雰囲気だ。
戦略レベルならティエリアとスメラギと、戦術レベルならマイスター同士で、と、そんな説明から、ティエリアは機嫌が悪いと爪を噛むクセがあるとか、ハレルヤはアレルヤが言い辛いことを言う時に現れたりするとか、そんな細かいことまで、つらつらと話した。場所は、寝室のベッドだったり、食事中だったり、いろいろだ。ニールが思いつく限りのことを話すから、三日目も終わりは見えない状態だった。四日目も結局、どこへも外出しないでマンションで過ごしている。
「・・・・ハレルヤも、ちゃんとミッションについてのブリーフィングには参加しているから、どちらの力も必要な場合は、アレルヤとハレルヤの両方に呼びかけてやれってくれ。・・・・それでな、ティエリアは気が短いんじゃなくて、先に結論を言ってから説明すると、聞いてくれる。ミス・スメラギは、それを理解しているから、そういう説明をするはずだ。だから、おまえさんが意見を言う場合も、同じように言えば黙っているはずだ。ああ、それから、あいつらが喧嘩してたら無視していいぞ。ただのコミュニケーションだからな・・・」
ベッドで、ごろごろと横になってニールが思い浮かぶことを話している。となりには刹那も、ごろごろしている。マイスター同士の繋がりなんて刹那は気にしたこともなかったが、親猫は、そこいらも覚えておけ、と、説明する。やり方や言い方というのがあるらしい。ごろごろしながら聞いていたら、声が止まった。ふと顔を上げたら、親猫は寝ている。やれやれと起き上がってタオルケットをかけ直して、刹那は寝室から出る。俺のやり方を踏襲する必要はないが、まあ聞いておいて損はない、と、親猫は言う。リーダーなんてものは、それぞれのやり方があるものだ。ただ、まあ、ちょっとした時に、親猫の言葉を思い出してくれたら、うまくいく場合もあるだろうとのことだ。とてとてと台所へ赴いて、ミネラルウォーターを冷蔵庫から取り出して飲む。
「俺には、そんな細やかなことは無理そうだ。」
ひとり呟いて、黒子猫は苦笑する。親猫のようなタイプのリーダーには、黒子猫はなれないのは自明の理だ。ある程度、マイスターたちの性格的なことは把握しておかなければならないだろうが、それを斟酌できる性格ではない。だいたい、刹那は他人には無関心なのだから。ただ、親猫の話す言葉を聴いているのは、耳に心地よいから、うんうんと頷いている。
携帯端末を開いて、キラに連絡する。そろそろ頼んでおかなければならない。
「おかえりー刹那。」
「キラ、地球周辺に展開しているアローズの拠点の情報が欲しい。」
挨拶も何もないが、キラとは、そういう感じで十分にコミュニケーションが取れる。
「それ、エクシアに載せておけばいい? それとも、別にデータチップで渡す? 」
「エクシアに載せて欲しいが、俺が居ないとエクシアには載せられないだろう? データだけ纏めておいてくれないか? 」
「それなら、もう完了してる。後は、エクシアを起動させてくれれば載せられるようにしてあるよ。こちらで押さえている情報は、全て、その形で用意しているから、最終整備の時にやろう。他には? 」
「エクシアを宇宙に上げるブースターの手配は? 」
「それも終わってる。セッティングしてあるから、後は起動させてくれれば問題なく発進できる。一応、夜のほうがいいと思うんだけど、どんな予定? 」
「ラボから発進したらマズイだろうから、どこか別の場所からのほうが安全だと考えている。」
「それは大丈夫。まず、ハイネのグフイグナイテッドをブースター発進させる。その後について、エクシアも上がってくれれば、航跡は、僕が誤魔化す。」
グフイグナイテッドはプラントの機体だ。あちらに整備のために移動するという名目なら、ラボから発進しても問題にはならない。その航跡にエクシアが乗ってくれれば、誤魔化すことができる、と、キラか請け負った。二機目も、グフタイプのMSだと情報を改竄すれば済むことだ。肉眼でも判らないように、エクシアの外装も細工させてある。軍では、大抵、MSというのは二機で行動するものだから、そういう意味でも怪しまれない。
「感謝する。」
「ママは? 元気? 」
「今、昼寝している。元気だと思う。」
見た感じ、ニールは元気そうだ。外出していないから、外気温にやられていないし、のんびりと刹那と話しているだけだから疲れることもない。顔色も良いと思うので、そう答えた。
「それならいい。後三日で悟空も帰って来るから、お寺に顔を出してね。」
「そのつもりをしている。」
「じゃあ、その時に刹那の歓送会をする。花火大会でもしようか? それとも水掛け合戦がいい? 」
「なんでもいいが、ニールが疲れないものにしてくれ。」
「もちろんだよ。ママにも楽しんでもらえるように、僕らのほうで仕切るから。刹那は目一杯、ママに甘えておいて?」
「了解した。」
じゃあね、と、キラは連絡を切る。戻って四日だ。ニールの話も、だいたい終わった様子だから、少し外出してみようか、と、携帯端末を閉じながら刹那も考える。マンションの前の公園を散歩したり、近くのコンビニやスーパーまで歩いたりという外出はしていたが、大した時間ではない。どこかへ出かけよう、と、ニールは勧めていたから、刹那も出かけることに異論はないが、どこというのが問題だ。刹那には、ニールと外出したい場所なんて思いつかないのだ。
・・・・ニールに選んでもらえばいいな・・・・・
連れ出したいと言うのなら、どこか心辺りはあるのだろう。それなら、親猫に任せればいい。刹那は、自分の着ているシャツを見下ろした。サイズは少し大きいものの、以前のものではない。たぶん、また買い揃えてくれたのだろう。どうせ、これは今回限りだ。次は、また成長しているので着られない。自分でも身長が伸びたことは実感している。親猫の身長までは、まだまだだが、それでも十センチ以上は伸びた。毎回、刹那の衣服はサイズが合ったものになっているのは、親猫が用意してくれるからだ。
・・・・次は、また新しいものになっているんだな・・・・
年単位で逢わなければ、成長期の刹那のサイズは変化する。それを考えると、しばらく逢えないのだと実感が出てくる。そう思うと、無性に親猫の傍に居たくなって、また寝室に戻った。
マイスター組社宅と同じマンションの上の階で、キラは、携帯端末を切って、うーんと首を捻った。追い出し大会のイベントは何にしようか、と、考えたからだ。
「刹那から、なんだって? 」
「うん、宇宙のアローズ情報を欲しいって。ねぇ、アスラン、花火大会と水掛け合戦って地味かな? 」
「地味ではないと思うけど。それ、刹那が出発する日にやるって予定? 」
戦略レベルならティエリアとスメラギと、戦術レベルならマイスター同士で、と、そんな説明から、ティエリアは機嫌が悪いと爪を噛むクセがあるとか、ハレルヤはアレルヤが言い辛いことを言う時に現れたりするとか、そんな細かいことまで、つらつらと話した。場所は、寝室のベッドだったり、食事中だったり、いろいろだ。ニールが思いつく限りのことを話すから、三日目も終わりは見えない状態だった。四日目も結局、どこへも外出しないでマンションで過ごしている。
「・・・・ハレルヤも、ちゃんとミッションについてのブリーフィングには参加しているから、どちらの力も必要な場合は、アレルヤとハレルヤの両方に呼びかけてやれってくれ。・・・・それでな、ティエリアは気が短いんじゃなくて、先に結論を言ってから説明すると、聞いてくれる。ミス・スメラギは、それを理解しているから、そういう説明をするはずだ。だから、おまえさんが意見を言う場合も、同じように言えば黙っているはずだ。ああ、それから、あいつらが喧嘩してたら無視していいぞ。ただのコミュニケーションだからな・・・」
ベッドで、ごろごろと横になってニールが思い浮かぶことを話している。となりには刹那も、ごろごろしている。マイスター同士の繋がりなんて刹那は気にしたこともなかったが、親猫は、そこいらも覚えておけ、と、説明する。やり方や言い方というのがあるらしい。ごろごろしながら聞いていたら、声が止まった。ふと顔を上げたら、親猫は寝ている。やれやれと起き上がってタオルケットをかけ直して、刹那は寝室から出る。俺のやり方を踏襲する必要はないが、まあ聞いておいて損はない、と、親猫は言う。リーダーなんてものは、それぞれのやり方があるものだ。ただ、まあ、ちょっとした時に、親猫の言葉を思い出してくれたら、うまくいく場合もあるだろうとのことだ。とてとてと台所へ赴いて、ミネラルウォーターを冷蔵庫から取り出して飲む。
「俺には、そんな細やかなことは無理そうだ。」
ひとり呟いて、黒子猫は苦笑する。親猫のようなタイプのリーダーには、黒子猫はなれないのは自明の理だ。ある程度、マイスターたちの性格的なことは把握しておかなければならないだろうが、それを斟酌できる性格ではない。だいたい、刹那は他人には無関心なのだから。ただ、親猫の話す言葉を聴いているのは、耳に心地よいから、うんうんと頷いている。
携帯端末を開いて、キラに連絡する。そろそろ頼んでおかなければならない。
「おかえりー刹那。」
「キラ、地球周辺に展開しているアローズの拠点の情報が欲しい。」
挨拶も何もないが、キラとは、そういう感じで十分にコミュニケーションが取れる。
「それ、エクシアに載せておけばいい? それとも、別にデータチップで渡す? 」
「エクシアに載せて欲しいが、俺が居ないとエクシアには載せられないだろう? データだけ纏めておいてくれないか? 」
「それなら、もう完了してる。後は、エクシアを起動させてくれれば載せられるようにしてあるよ。こちらで押さえている情報は、全て、その形で用意しているから、最終整備の時にやろう。他には? 」
「エクシアを宇宙に上げるブースターの手配は? 」
「それも終わってる。セッティングしてあるから、後は起動させてくれれば問題なく発進できる。一応、夜のほうがいいと思うんだけど、どんな予定? 」
「ラボから発進したらマズイだろうから、どこか別の場所からのほうが安全だと考えている。」
「それは大丈夫。まず、ハイネのグフイグナイテッドをブースター発進させる。その後について、エクシアも上がってくれれば、航跡は、僕が誤魔化す。」
グフイグナイテッドはプラントの機体だ。あちらに整備のために移動するという名目なら、ラボから発進しても問題にはならない。その航跡にエクシアが乗ってくれれば、誤魔化すことができる、と、キラか請け負った。二機目も、グフタイプのMSだと情報を改竄すれば済むことだ。肉眼でも判らないように、エクシアの外装も細工させてある。軍では、大抵、MSというのは二機で行動するものだから、そういう意味でも怪しまれない。
「感謝する。」
「ママは? 元気? 」
「今、昼寝している。元気だと思う。」
見た感じ、ニールは元気そうだ。外出していないから、外気温にやられていないし、のんびりと刹那と話しているだけだから疲れることもない。顔色も良いと思うので、そう答えた。
「それならいい。後三日で悟空も帰って来るから、お寺に顔を出してね。」
「そのつもりをしている。」
「じゃあ、その時に刹那の歓送会をする。花火大会でもしようか? それとも水掛け合戦がいい? 」
「なんでもいいが、ニールが疲れないものにしてくれ。」
「もちろんだよ。ママにも楽しんでもらえるように、僕らのほうで仕切るから。刹那は目一杯、ママに甘えておいて?」
「了解した。」
じゃあね、と、キラは連絡を切る。戻って四日だ。ニールの話も、だいたい終わった様子だから、少し外出してみようか、と、携帯端末を閉じながら刹那も考える。マンションの前の公園を散歩したり、近くのコンビニやスーパーまで歩いたりという外出はしていたが、大した時間ではない。どこかへ出かけよう、と、ニールは勧めていたから、刹那も出かけることに異論はないが、どこというのが問題だ。刹那には、ニールと外出したい場所なんて思いつかないのだ。
・・・・ニールに選んでもらえばいいな・・・・・
連れ出したいと言うのなら、どこか心辺りはあるのだろう。それなら、親猫に任せればいい。刹那は、自分の着ているシャツを見下ろした。サイズは少し大きいものの、以前のものではない。たぶん、また買い揃えてくれたのだろう。どうせ、これは今回限りだ。次は、また成長しているので着られない。自分でも身長が伸びたことは実感している。親猫の身長までは、まだまだだが、それでも十センチ以上は伸びた。毎回、刹那の衣服はサイズが合ったものになっているのは、親猫が用意してくれるからだ。
・・・・次は、また新しいものになっているんだな・・・・
年単位で逢わなければ、成長期の刹那のサイズは変化する。それを考えると、しばらく逢えないのだと実感が出てくる。そう思うと、無性に親猫の傍に居たくなって、また寝室に戻った。
マイスター組社宅と同じマンションの上の階で、キラは、携帯端末を切って、うーんと首を捻った。追い出し大会のイベントは何にしようか、と、考えたからだ。
「刹那から、なんだって? 」
「うん、宇宙のアローズ情報を欲しいって。ねぇ、アスラン、花火大会と水掛け合戦って地味かな? 」
「地味ではないと思うけど。それ、刹那が出発する日にやるって予定? 」
作品名:こらぼでほすと 約束5 作家名:篠義