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初春菓子狂騒

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elochocolate(おりヴぁ氏企画)
    -あらすじ-

農耕の神クミロミが、人間界の菓子、チョコレート製作に
機械と知識の神であるマニに助力を請うた。

癒しの神ジュアが、信者からの偏った告げ口情報で
きな臭い状況を危惧し、クミロミの神殿に乗り込むが果たして…

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不気味な騒音を立て、得体の知れない金属の塊から断続的に排出される
アピの実の種子。古の昔に、マニが恐ろしい機械の兵士を製造した際の
光景が脳裏を過ぎった。また、戦いに敗れ、累々と散らばった地上の生き物を
「処理」するためのおぞましい工程…
ジュアは眩暈を抑えられなかった。もう、二度とあのような…
しかし、あんなに戦いを、命の犠牲を忌避していたクミロミがどうして?
目の前の幼子を模した農耕神の、子供らしい無垢な瞳を見つめる。
彼に似つかわしくない、無機質な構造物から目を背けるようにして、
ジュアはクミロミを問いただす。

「一体あの男は何をたくらんでいるの?あ、あなたはどうしてこんな…」
「…落ち着いて、ジュア、落ち着いて…」
「どうしてあなたが…あなたはもうあの無意味な争いを忘れてしまったの?
これは新しい兵糧なのでしょう?あの男の思いつきそうな事」

「そんな風に私を評価していたのか、癒しの神よ」
背後から響いた、馴染みの、感情の見出せない声音にハッと振り向いた。
清潔に管理された苔と蔦が、美しく自然な調和を得て絡み合う石壁に、
おおよそ似つかわしくない奇妙な構造の鎧に身を包んだ機械の神が、
無表情に凭れていた。頭部を浮遊して包む襟鎧にはシンメトリーな文様が刻まれ、
その溝を微かな光の軌跡が鼓動のように蠢いている。

彼女はこの得体の知れない男が苦手である。死した物質を組み上げ、
魂を持たぬ「生物」を創る神。
ジュアは癒しの神として生きとし生けるものたちの輪廻の手助け、癒し、
祝福を与える立場であるが、マニもまたお前と同じ性質の神である、と原初の神は云う。
しかし、理解は出来れど容れる事の難しい感情は存在する。
ジュアには、ともすれば己の範囲外の「生物」をも、無感情に組み替えてしまいそうな、
また、ジュアの個神として親密な友、風の神ルルウィとマニとの諍いにおいて示した、
マニの理解しがたい感情の欠落に些少の不快感を抱いていた。
黙り込むジュアに、密やかに柔らかな声が届く。

「…ジュア、彼は…何も。僕が頼んだんだ」
驚いて、無意識に、庇う様にして抱えていた、腕の中のクミロミを見やる。
少しはにかんだような表情で目を伏せていた農耕の神は、
すっと傍の、幾つかの本と書き止めの広げてある小机を指差した。
機械の神を警戒しつつ、その書籍に目を遣る。

「イルヴァにおいての甘味便覧」「珍奇食物百科」
「スイートハンターレオニダスの這い上がり奮闘記」etcetc…


「ジュアは、チョコレート…って知ってる?」
恥ずかしげに問われ、ジュアは混乱しながらも答えた。
「ええ…古代の者達が作っていたお菓子よね。
私の知っているものは、9紀に原料が絶えてしまったけれど…」

そういえば、定命の子らが、様々に工夫を凝らし、無くなってしまったものを
再現する事に精力を注いでいる中で興味深いものが幾つかあったのだが、
そのひとつに、この名前があったのを思い出す。

作品名:初春菓子狂騒 作家名:mt0ug