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一方通行

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何物も凶器となりうる。
だから言葉も武器となる。
分かりやすい例で言うと『自殺』ということが分かりやすい。
英語でも日本語でもそうだが、自分を殺すと書いて自殺だ。
自分も人間なのだから、これも殺人の類いとして構わないだろう。
何の理由もない殺人はない。
もし「殺したいから」などとふざけた理由ぬかしていようが、そいつは犯行の前に確実に何らかのことがあったはずだ。
育て方に問題があったとか、人間関係に疲れてしまったとか。
そういう理由も無しに殺人を行う奴は、俺は人間とは呼ばない。
で、その理由には必ずと言っていい程、言葉が関わる。
関わらない方が少ない。
じゃあ『自殺』っていうのは、何らやってることは無差別殺人と変わり無いじゃないか。
理由は「以前人間関係等に問題があり、苛立ちや自己嫌悪により」。
殺された奴が違うだけだ。
迷惑のかかり方を比較すればだいぶ相違があるが。
つまり、言葉は凶器になれる。
意図せずとも。

あの時彼奴は俺の言葉を凶器だと言った。
皮肉にも俺もそう思っていた。
「君の言葉は俺を脅迫しているじゃないか」
実際俺は確信犯だったために、何も言い返せるはずもない。
言葉は真実であれ嘘であれ、暴力的なほどの力がある。
避けることだってできるだろうに、彼奴は愚かにも俺の言葉を真っ正面から受け止めてしまった。
言葉の刃は目と鼻の先、みたいな。
彼奴のああいう風に真っ直ぐなところが、俺は好きだ。
自分には受け止めなければならない義務がある、と思い込んだ。
俺がさせるまでもなく、自分で。
何故自分に思い込ませる必要があったのか。
そこが俺の最近の疑問点だ。
避ければ良かったのに。
彼奴なら可能なはずなのに。
眉根を寄せて苦笑して、その後笑いを噛み殺しながら此方を見て、涙を浮かべて微笑んで彼奴は言った。

「仕方ないなぁ、君の要求に乗ってあげるよ!」

それはもう、楽しそうに、嬉しそうに。
作品名:一方通行 作家名:踔蟲