機動戦士ガンダムワールドNG
リフトを上昇させてコックピットへ乗り込み座席へと腰を下ろす。端末を操作しアイテム欄よりキーを取り出してキー挿入口へ差し込むと、コックピットのドアが自動で閉まり、ヴゥゥンという音と共にメインカメラが外の映像を取り込み、コックピット前面と左右のパネルに外部映像を映し出した。足元のフットペダルに足を乗せ、二本の操縦桿を握り俺はザクを前進させ格納庫からでた俺は、街の入り口を目指し大通りを歩き始めた。
俺のザクのコックピットは前面と左右のサイドパネルの3面がメインパネルに座席というオーソドックスタイプ。文庫本2冊分くらいの大きさのサブパネルが左右のサイドパネルの下に設置されており、ゲーム内でのログ等細かい操作を使用する時に必要となる。小さいパネルの種類や座り心地のいい座席など、お金に余裕があればコックピットを買い替える事もできる。非常人気のコックピットはほぼ360度視界のフルスクリーンモニタとリニアシートのコックピット。お値段はなんと新品ザクが数機買える程。人気の理由は市場流通数は少ないため入手機会が難しい。
今のコックピットの場合、座席に座り膝くらいの左右に設置されている操縦桿、両足の所にフットペダルがある。
基本的な操縦方法だが、操縦桿を握り双方を同時に前に倒と、機体が上下にゆれながらゆっくりと前進を始める。両方の操縦桿を同じ方向へ倒す事で後退、水平移動も自由自在だ。前進しながら右足のフットペダルを踏む事で、背中のスラスターが噴射を始めて機体を一気に前方へと押し出す。これがブーストアクションの一つ高速移動だ。
メインパネルに表示されテイル情報についてだが、前面パネルの左下に機体のHP《ヒットポイント》を表すエネルギーゲージと、高速移動や緊急回避などのブーストアクションで消費するブーストゲージが表示されている。エネルギーゲージが無くなれば撃破されるし、ブーストゲージが無くなればフルチャージされるまでブーストアクションが使用不可だ。高速移動はブーストゲージを消費し続けるため、ゲージの残りには注意が必要になってくる。戦闘ではブーストゲージのコントロールが必要とされているのだが、俺は相変わらず空になるまで使ってしまう為格好の的に良くなっている。
慣れるまでは練習が必要。、街の外は戦闘エリアに入らない限り敵も出てこない為、機体制御の訓練ができる広い敷地と思っていいだろう。お陰でこのザクを買った初日は、練習と称して遠出をしてしまった為街に戻れず苦労した。その苦労があって目的地設定機能に気づいたのだから、プラマイゼロ……という事にしておきたものだ。
「そろそろ見えてくるはずだけど……」
予め目的地設定をしている場所を示すマーカーが、サイドパネルに表示しているレーダーで点滅している。町の周辺に数箇所ある戦闘エリア、今向かっているのは街の東側にある対NPC戦闘エリアだ。地球軍の補給拠点となっており、宇宙軍か無所属のプレイヤーが戦闘に参加できる。出てくるのはもちろん地球軍のMSや戦闘車輌で、比較的性能は低くザクでも問題は無い。ただ、複数同時に相手にする場面もあるため、油断していると背後からズドンと攻撃される可能性もある。自分の位置を敵の位置に数を、レーダーで確認する事を怠らない……ようにしなければならないのだが簡単に行くなら苦労はしないって事だな。
「あったあった」
メインパネルに映る倉庫が複数並んでいるコンクリートの敷地を、薄らと白い光が囲んでいる。この戦闘エリアへ参加するには敷地内へ入る、それでけで戦闘エリアMAPへと転送される仕組みだ。もし戦闘エリアMAPへ転送されない場合、進入可能人数を越えている可能性がある。この戦闘エリアの参加可能人数は10人。そのMAPが10ルームあるため、最大100人までは来たプレイヤーから順番に部屋を埋めていくので、待たずに入る事ができる。
『俺達の手助けをしてくれるってのはお前か』
戦闘エリアへ転送されると、正面パネルの通信ウィンドウが開かれ映し出された宇宙軍の軍服を来た無骨な男がぶっきらぼうに話しだす。声は豪胆、筋肉質な体には少しきつそうに見える軍服が少し可愛そうだ。
『地球軍の連中を撃退してくれればそれでいい、報酬は弾むからよ。ん?司令部よりお前にだとよ。ミッションクリアすれば追加で報酬が出るみたいだぜ。自分の力量にあったのをやるんだな』
多少差異はあるものの、対NPC戦闘エリアではお馴染のやり取りだ。表示され他目の前のウィンドウには、ミッションが数種類ほど表示されている。この間、MSの操作は目の前のウィンドウ以外不可となっている。
どれにしようか悩んだが……。
「とりあえず」
今回は、敵MSを20分で20隊撃破のミッションを選択した。最終確認ウィンドウのOKをタッチすると、ミッションウィンドウが消えて、代わりに正面パネル上にカウントダウンを示す数字が表示される。10……9……、0になればいよいよ戦闘が開始だ。このカウントの間にサイドパネルを操作して、このエリアに参加しているプレイヤーに対してマナーの1つである、挨拶をするためにテキストチャットウィンドウを出す。簡易メッセージを選択して送信するとチャットログに、よろしくと表示されたのを確認してそのウィンドウを閉じた。
――よろしく――
このエリアに何人参加しているかわからないが、6名からの返信は確認できた。
3……2……1……。
0、と同時に俺とザクはようやくシステム上の拘束から解放されたのだった。
システム上の拘束が外れた俺は、、右足のフットペダルを踏むと同時に左右の操縦桿を前に押し出す。バックパックから噴出されるスラスターが、機体を強引に押し出し一気に最高速度へと加速させる。
俺の体がGによってと座席に押し付けられて、少しばかり苦しい。今まで何回も味わっているが、この苦しさはむしろ心地よい。現実では体験する事は無いだろうこの臨場感が、俺の感覚を麻痺でもさせているのだろうか。
本来、戦闘開始直であれば周囲の状況を気にするのだが、レーダーに何の反応も無かった。その為高速移動を即座に開始させた。どの方角からこの戦闘エリアへ入っても強制的にスタート位置は南に固定されている。
「さて……、まずは敵MSを見つけないとな」
対NPC戦闘エリアの敵MSは、参加している人数により最大出現数と出現間隔が変動する仕組みだ。レーダーに引っかからないという事は北側でプレイヤー達が混戦しているのか、現在参加している人数が少ない……極端な話俺だけなのかもしれない。コックピット内設置されたスピーカーから銃撃音や爆発音といった外部音が聞こえてくるので、少なくとも戦闘は行われているはず。
「はやく撃破しないとなぁ」
作品名:機動戦士ガンダムワールドNG 作家名:ゆーたん