桜の守護者
桜の老木からの助けが聞こえた。
乱太郎はすぐにその桜の元へととんだ。 辺りは妖だらけ。しかし、人間の退魔師達が妖を払っていることは気配でわかった。
この桜は村人から大変大切にされている。だから、桜を救うために村人が頼んだのだろう。ただ、今回は乱太郎が桜の助けを聞くのが一足早かっただけ。
乱太郎は桜の周りに光の壁を作る。
「よく頑張ったね」
『もったいないお言葉です。すみませぬ』
「いい。あなたが枯れてしまえばこの一帯の木々の生態系がガラッと変わってしまう。それは避けないとね」
『私の声を聞いていただいてありがとうございました』
「うん」
乱太郎は自分が持つ神気を桜にわけ与える。それと呼応するように乱太郎から桜が舞散る。それが雪と重なりそこな白と桃色が交ざり、幻想的な風景になる。
『乱太郎さま、もうお戻りください。森の子供達が心配されますよ』
「そうだね。退魔師達もくるし、帰るよ」
『はい。また来て下さい。森の子供達と共に』
桜の言葉に頷いた。去る間際に退魔師達に声を届けた。
『…退魔師さん、この桜のことお願いします。もう、大丈夫だから』
乱太郎はそういって、その場から消えた。
さて、その頃。
森は乱太郎がいないと大騒ぎ。その中でも門の番人の利吉と一の森のきり丸が一番騒いでいた。
「また、いなくなった!あの人は!」
「利吉さんも、土井先生もなんで乱太郎がいなくなったのに気が付かないんですか!」
「そんなことをいわれてもだな。あの人はいなくなることに関してはピカ一なんだよっ」
「そんなの関係ないでしょ!」
ああいえばこういうとただの子供の喧嘩である。そこに土井が話す。
「利吉くんはどうなのかはわからないけどな。私はいなくなった事を山田先生に伝えてあるぞ?ちなみに山田先生の言葉はほおっておけだった」
「ちょ、土井先生。裏切らないでくださいよ!」
「いや、一応弁解はしとこうかと」
ニッコリ笑う土井に利吉はこれまたきゃんきゃんと叫ぶ。
「先生、乱太郎はなんでいなくなったんですか!」
「あいつは森の外の桜を助けにいったんだ」
土井の変わりに応えたのは山田だった。
「山田先生」
「父上!」
「まったく、乱太郎がいなくなったくらいで騒ぎおって。あやつならもう戻る。それまでは静かにしてなさい」
「でも!」
「だって!」
「きり丸〜、ここにいるの?」
聞こえた声はパートナーのしんべヱ。
「こっちだ。しんべヱ」
「あー、いた」
しんべヱがきり丸を見て笑う。
「何かあったのか?」
「いなかったから探してたの。後ね」
「ただいま」
しんべヱが引っ張ってきたのは、戻りを待っていた乱太郎だった。
「ここに来る前に会ったの。だから、一緒にきたんだ」
「ねー」
「乱太郎!」
しんべヱと話している乱太郎にきり丸がくっついた。
「黙って消えるなよな!」
「んー。でも、伝蔵にはいったよ?後、半助にも行く前にあったけど」
「「先生!父上!」」
「えーい、五月蝿いわ。おまえら少しは乱太郎離れせんか!」
「嫌です」
「右に同じくです」
いつまにか利吉もくっついている。しんべヱは面白がってくっついた。
「まったく」
呆れながら、山田は乱太郎を見る。
「乱太郎、どうだった?」
「もう、大丈夫。村人が退魔師を呼んでくれたみたいでね。妖はいなくなった。桜にも神気をわけ与えたし、あそこはもう大丈夫だよ」
「そうか。ご苦労だった」
「私の仕事みたいなもんだしね」
そんな乱太郎の言葉に食い付いた者達がいた。
「退魔師にあったのか?」
「半助。うん、でも姿は見てないと思うけど」
「ならいいが」
「何を心配してるのさ」
「お前な、少しは人を警戒しなさい。ただてさえ大物なんだから」
「そうだよ!乱太郎が払われる事がないってわかってるけど心配になるんだからな!」
「どこかにいかないでね?」
きり丸としんべヱに言われた乱太郎は二人を撫でる。
「気をつけるよ」
「その前に外に出るてきは私達門番に言ってください」
「利吉。でも、半助には伝えたから大丈夫かと思って」
「利吉くんはまだ修行が足りないね」
笑う半助の利吉は何も言えない。
「まだまだ、お前もヒヨッコってことだよ。利吉」
「はいはい。皆で利吉をいじめないの。今度はちゃんと言ってあげるから」
「絶対ですよ?」
利吉は抱きついていた腕に力を込めた。
「まったく…。乱太郎」
「はい?」
「とりあえずは、話を聞かせてもらうぞ」
「はいはい」
伝蔵の言葉に乱太郎は答え、奥の部屋に行くのだった。