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こらぼでほすと 約束7

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翌日の午後に、アスランからの連絡ではなく、ハイネがマンションにやってきた。何事だ? と、思っていたら、「アッシーだ。」 と、居間のソファに腰を下ろす。
「アッシー? いらねぇーよ、そんなもん。」
 目的の水族館までなら、公共機関で十分に辿り着ける。わざわざ、ハイネに連れて行ってもらうほどのことではない。
「あのな、今は夏休みでさ、ついでに土曜日だ。ものすごい混雑してることが予想されるんだけど? ついでに、近くで花火大会があるとなれば、絶好調に混んでるんですが? 」
 そう言われて、ニールも気付く。夏休みというのに該当しない生活をしていたから、そんなことは失念していた。
「つまり、最寄の水族館は無理ってことか? 」
「あまりお勧めしないな。どうしてもって言うなら、それでもいいが。」
「いや、どうしてもって訳じゃないんだけど、あそこからなら花火も見えるだろうからさ。」
 少し水族館を散策して、日が暮れたら花火を見ればいいや、という簡単な気持ちでいたのだが、混雑すると言われると、ちと考える。さすがに、そんな人ごみの中に長時間居られるとは、ニールも思っていない。
「なら、俺が違うとこへ送ってやる。時間を待ち合わせて、そこから花火が見えるところへ移動するってぇーのでいいか? 」
「アスランたちも合流すんだろ? 」
「ああ、大迫力で見られるとこを手配した。じゃあ、話も纏まったことだし出発するぞ。」 「え? まだ早いだろ? 」
「いいからいいから。」
 まだ時刻は午後になったばかりだ。こんな時間からでは、早すぎて時間を持て余してしまう、と、ニールは思ったのだが、目的地が遠かったので当初の予定時刻に水族館に入ることができた。ただし、その場所は花火大会のある場所からかなり離れたところだ。どうするつもりだろう、と、思いつつ刹那を連れて水族館に入る。確かに、こちらは空いていた。混雑というほどの人手ではない。受付でハイネが何やら声をかけると、案内役が現れた。
「大水槽の上から眺められるツアーというのがあるんだ。とりあえず、それに参加して、他はダラダラと歩いて見てこい。待ち合わせは五時。場所は、ミュージアムショップ前な。」
 言うだけ言うとハイネは、スタスタと出て行く。付き合うつもりはないらしい。案内役が水族館の裏側をご覧頂きます、と、案内を始めるので刹那の手を引いて、それを追い駆けた。 というか、このツアーを予約してあったということは、ハイネは最初から、ここに連れて来るつもりだったらしい。

 確かに、観覧する側からでない水族館というのは、なかなか興味深いものだった。大水槽の上から展示されている魚を眺めるのは圧巻だ。グルグルと回遊する大型魚を上から眺めるとミサイルのように見える。ここの売りものは、この大型回遊魚が泳ぐ大水槽で、2メーター近い魚が同じ方向にグルグルと回っている。
「・・・大きい・・・」
「ほんとにな。」
 他にも治療中や新しい環境に慣れさせる最中の水槽や、海獣たちが間近で身繕いしているのも観察させてもらった。やはり、なぜだか、海獣たちは刹那が怖いのか視線を合わせてくれない。唯一、近寄ってきたのは二匹のシャチだった。独特の声で刹那を呼んでいる。珍しいことです、と、案内役も驚くほどのフレンドリーさだ。
「つまり、こいつは肉食だからマレー虎と同類ってことか。」
「そういうことみたいだ。」
 動物園でも肉食動物には好かれていたから、同じことらしい。よくわからないが、猫科の括りでなく肉食関係の生物は刹那を同類と見做すらしい。
 一通り案内してもらって開放されたので、大水槽の前のベンチで休憩した。上から眺めた時には見えなかったカメやサメの類が海底を、ゆっくりと泳いでいる。
「大丈夫か? ニール。」
「ちょっと休憩すれば大丈夫だ。なかなかおもしろかったな? 」
「ああ、海中生物とは遭遇することも少ないから興味深いものだった。」
「生きてるのは対面するのは珍しいだろうな。」
 エクシアやフリーダムは海中でも行動が出来るタイプのMSだが、スピードがありすぎて海中生物を観察するのは難しいし、移動中の深度は深海に近いところだ。そこいらまで降りてくるのは水族館にはいないだろう。
「深海と宇宙空間は似ている。静かで誰も居ない。」
「そうだな。」
 目の前で泳いでいる魚たちのいる深度は賑やかで綺麗だが、そこから下は静かなものだ。ニールは、あまり海中行動はしたことがないが、刹那の言うことはわかる。深海は静かだ、と、言うのは感覚的に理解している。一万メーターも潜航すれば、そこは、ほとんど闇の世界だろう。敵もいなければ、生物というものの存在すら、ほとんど感じられない宇宙空間と似たような世界だと思う。
「そういうところは寂しくないか? 」
「いいや、俺は心地良い。」
「おまえさんは強いからなあ。俺は寂しいと思うよ。」
「あんた、ミッションで待機していた時は寂しかったのか? 」
 マイスターたちがミッションを行なう場合、マイスター各人がポイントを決められて、そこでミッション開始まで待機する。宇宙で行なうミッションの場合は、ひとりで宇宙空間に浮かんでいるなんてことになる。
「そういう時は寂しいとか考える暇はないさ。段取りを思い返したり、デュナメスの調子を確認したり、いろいろとやることがあるからさ。・・・ただ、ぼんやりと浮かんでいるっていうなら寂しいと思うだろうなって。」
 音もない闇の空間で、ただ機械の音だけが聞こえている世界に、何もすることがなく置かれてしまったら、寂しいだろうと想像する。ミッションなら次の準備をしていればいい。そうでないなら、いろんなことを考える。思い出したくもない過去のことなんか、今更、どう考えても無意味なのに、妹のアイスクリームを頬張る笑顔を思い出せば、また憤りがこみ上げる。理不尽な世界に殺された両親や妹。どうして? なぜ? と、問いかけても仕方がないのにやめられない。ぼんやりと、大水槽を睨みながらニールが、つらつらと浮かぶものを心で受け止めていたら、刹那が横から髪を軽く引っ張った。
「あんたは寂しがり屋だからな。・・・だが、ハロがいるじゃないか。くだらないことでも話していればいい。」
 親猫の傍らには常に、ハロがいた。よくしゃべるAIロボットは、静かな空間など作らせてはくれないだろう。
「そうだったな。」
 長いこと、ハロとは逢っていないから、ニールも忘れていた。デュナメスに搭乗している時は、必ずハロがバックアップを担当してくれていた。だから、孤独だと思ったことはなかったのだと思い出して苦笑した。
「ハロを連れてこようか? 」
「バカ言いなさんな。あいつは、デュナメスの後継機のバックアップをすることになる。今の俺の傍には生きてる人間が一杯居るから寂しくないぞ。それに、ハロは俺の私物じゃありません。」
「別に一体くらい問題はないだろう。イアンに作ってもらえばいい。」
「おやっさんは忙しいと思うんだがな? 刹那さんや。おまえさんの新しい機体のマッチングやら調整やらで、てんてこ舞いしてんじゃねぇーか? 」  
作品名:こらぼでほすと 約束7 作家名:篠義