dal segno senza fine
fermata
事務所から立ち去ろうとした時、背後から翔は声をかけられた。
お疲れ様です、と挨拶をすると声をかけたスタッフは持っていた荷物を渡す。
A4サイズの封筒だった、少し厚みがある。
スタッフが言う。
「作曲家さんから届いたものだよ」
吃驚してしまい声が出そうになるも平静を装って御礼をいい、翔は足早にその場を去った。
歩きながら封筒を開ける。
そこには、可愛らしい便箋で書かれた手紙とCDとUSBメモリが入っていた。
CDとUSBメモリはエアーキャップでガードされている。
開けると何故か、CDもUSBもリボンで巻かれていた。
不思議に思いながらも、手紙を開いて読む。
翔の足が止まり、その場に座り込んでしまう。
「…たく…何だよ…不意打ちだ」
顔が赤くなって行くのが分かる。
嬉しすぎて変な声が出そうだった。
必死にこらえながら、手紙とCD達を抱きしめ、自分の最愛の人が創った作品に自分の鼓動を重ねる。
今すぐには届かなくても、遠くにいても、必ず伝わると何の保証もないが何故かそう思えた。
「やべ去年より…超嬉しい…」
そして翔は決めた。
この愛を自分の歌声で形にして、二人の愛を確認・完成させる事。
それが、一ヵ月後のホワイトデーのお返しだと。
----翔君へ。
ハッピーバレンタイン。
本当はチョコの方が良いのかな?
一杯考えて、色々なチョコを見て、試食したけれど良いのが見つかりませんでした。
でも探している間にいい曲が浮かんできたので、今年は楽曲がチョコ代わりです。
翔君の為だけに愛を込めて作りました、受け取って下さい。
作品名:dal segno senza fine 作家名:くぼくろ