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dal segno senza fine

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「ドーですぅ?チョコ部屋は見てきましたかー?」
「はい」
「俺とイッチーで見てきたよ」
「そうですかー」

ちらりと翔へ視線を向ける。
それを即キャッチして翔は答えた。

「俺はまだ見てません。事務所に来たばかりで…と言うか、チョコ部屋何であるんですね」

翔は部屋の存在を知らない、と正直に答えた。
シャイニング早乙女は、ガハハハ、と笑いその場に緊張を更に走らせた。
ひとしきり笑い終わってから、

「ユーも見ておいた方が良いですゥ。アレが、ユー達に愛を注いでくれる、その愛の形の”一つ”なのだからァ」

と真面目な声で告げてきた。
その言葉に三人は、戸惑う。

「俺達に愛を注いでくれる…」
「その愛の形の…」
「ひとつ…?」

レンや音也はチョコ部屋の方に視線を飛ばす。
翔は、下を向いて考えだす。
二人の視線の先には数多くの「愛」が。
一人の視線の先には戸惑いが。
それぞれにあった。

「そうっですゥ。ユー達、愛を歌うアイドルはぁ、様々な人からの愛でェ、支えられている…と言う訳ですゥ」

そんな彼らに更に付け加えて言った。

「ただァ、数云々ではない。どうしたらァ、好きな相手に自分の愛を伝えられるゥかァ…それを想像して想像して想像してェ、導き出された答えがそこにある!…と言う訳ですゥ」

数ではない、と言う言葉を聴き翔は視線を上げた。
彼が気にしていたのはそこだった。
愛を「数」や「量」で推し量れるのだろうか、と。
確かに人気がなければいけない。
そうならなければ仕事がない。
だが、それだけに固執するのも何かおかしい気がしていた。

「んー、MR.クルス。貴方、こうゥ思っていますねェ。愛は、量より質だとゥ!」

シャイニング早乙女は、翔の中にある迷いを見抜きズバリ言い当ててきた。
その言葉に翔はひるんでしまう。
自分の言葉にしなければ伝わらないと分かっている彼は、威圧感のある目の前の社長に対し自分の胸の内を伝える。

「ああ、俺は、愛は数じゃないって思ってる。
 でも数がなければ、俺は歌を歌えたとしても聞いて貰える人が少ない。たった一人の愛する誰かにも勿論歌いたい。
 でも”ひとり”にしか伝わないんじゃ、俺の伝えたい”愛”は意味がない気がするんだ」

彼の真剣な声に、音也やレンも驚きそしてシャイニング早乙女の回答を待った。

「…ンンー、そうですねェ…。確かにその通りですゥ。Butゥ、一人に対して歌えない歌がお前を知らない大勢に伝わるかと言えばァ…。ユー達もこれの答え、分かりますねェ?understand?」

社長からの言葉に、三人のアイドル見習い達は黙り込んでしまう。
愛は数じゃない。
でも自分たちは数がなければ見て貰う事も、聞いて貰う事も出来ない。
同じ愛をその全員に降り注げるのか。
それが無理だとして、ならばその質の差は何なのだろうか。
悩みに落ちている表情を見て、シャイニング早乙女は満足げな顔をしていた。

(悩めよ少年…。それがまた、新しいお前たちの愛の形になる。)


作品名:dal segno senza fine 作家名:くぼくろ