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いけるしかばねinバレンタインデー【静帝】

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甘ったるく漂う匂いに臨也は溜息を吐く。
らしくない様子だったが理由を聞くのは面倒だったので新羅はテレビでもつけようとリモコンに手を伸ばす。
先に臨也にとられた。
手の中で回されるリモコンは人質なのか。

「どうかした?」
「変な夢を見たんだ」

リモコンが臨也の手の中で止まりテレビに向けられる。
とりあえず何でもいいからつけてくれればテレビだけを見ようと新羅は「ふーん」と頷く。

「帝人君がシズちゃんを非常食にしてた」

つけられたテレビはウサギとライオンが仲良く暮らしているという動物園の特集。
肉食獣の檻の中に迷い込んだ草食動物は殺されもせずに元気であるという。

「このライオン……絶対、飼育員が餌のタイミングが遅くなったらウサギを食う気だ」
「えー、そうかもね?」
「夢の中では帝人君は狼さんだったんだ。俺も狼だった」

似合わないメルヘンな夢を見ていると新羅は思いながらライオンにもたれかかりながら眠っている無防備なウサギを見つめる。

「俺が止めたのに帝人君は『一匹狼が一人前の狼』とかよく分からない勘違いをして旅立った」
「かわいい子には旅をさせてあげればいいじゃないか」
「狼は群れで生きてるんだよ! 家族愛の塊だよ?!」
「じゃあ、臨也が一匹狼になってたから憧れてたんじゃない?」

適当なことを言う。

「そっか……そうかもね。帝人君は俺のこと大好きだからね」
「自分に都合のいい夢、見るよね」
「獲物なんか捕まえられないだろうから瀕死の生肉を帝人君が通る道に配置してあげた」
「そういう甘やかしはいけないんじゃない?」
「俺だってやるなら空腹でのたれ死にそうなところに極上の餌を持って行って『やっぱりダメだっただろ』って連れて帰るのが普通だと思うよ!!」

それもそれで普通とは違う。

「帝人君ときたら蝶々につられて道を踏み外して森の中を迷子だよッ」
「臨也の撒き餌トラップを回避」
「その上、崖から落ちてメソメソ泣いてたんだ」
「狼には翼がないからね」
「俺もすぐ行けないけど急いで駆け付けてあげたんだよ」
「うんうん」

動物園の特集は植物園の特集になった。
撮り溜めていた何か番組でも見ようかと臨也が持っているリモコンに新羅は手を伸ばすが避けられる。
話はまだ続くらしい。

「帝人君の落下地点に辿り着いたら」
「ウサギの静雄の死体?」
「いや、食べられてる最中だった」
「…………帝人君が静雄を?」
「帝人君もお腹が空いてたんだろうね。思いっきりシズちゃんの頭にかじりついてた」
「ファンシーとグロいのは相反するからこそ食い合わせがいいのかなー」
「思わず飛び起きるレベルだ」
「あ、起きちゃったんだ。なんだ、よかったじゃないか。静雄を食べた帝人君を君が連れて帰ったりしたんじゃないの?」
「もう一度寝たら続きがあったんだ」
「あー、そう」

こんな会話をしながら新羅は臨也からリモコンを奪おうと必死に手を動かす。
臨也は特に表情も変えずに新羅の手を避け続けた。

「なんかシズちゃんが作ったらしい巣穴で二人で暮らし始めて、シズちゃんが捕まえた魚とか帝人君は美味しそうに食べてるの」
「狼が養われてる……」
「俺はさあ『外に出歩くのにもウサギに乗るなんて狼のプライドがないのかっ』って帝人君に説教するんだけど」
「崖から落ちたから足怪我してたんじゃないの」
「そうらしいね。帝人君に鬼扱いされてシズちゃんに岩投げられた。ウサギが狼に向かって岩投げるってっ! 岩投げるってどういうこと?!」
「ウサギでも静雄だからねえ。そんなものじゃない?」
「岩投げてるシズちゃんの背中で帝人君はシズちゃんの耳かじってんだよ?」
「お腹空いたんだねー」
「自分の耳がえぐれてるのに『腹が減ったか、仕方ないな』みたいなシズちゃん、頭がおかしいんじゃない?」
「いいコンビじゃないか」
「いいコンビじゃないよッ!! お腹空いたからって何でもかんでも与えていいわけないだろっ」
「そうだね。リモコンくれ」
「まあ、もう少し聞きなって。俺はさ『一匹で頑張るって言った帝人君は何処に行ったんだ』って訴えるわけだ」
「いいじゃないか、静雄はウサギなんだから。帝人君は一匹狼だ」

新羅の言葉に頷きながら臨也はリモコンをくれた。
話はこれで終わりなのか立ち上がる。