こらぼでほすと 約束9
坊主とサルのお帰りの宴会は、早々に終わり、各人が部屋に引き取った。そこで、ニールは、ふと八戒の言葉を思い出して、頭で日数を計算する。明後日の深夜出発ということは、八日目から九日目ということになる。刹那は十日の滞在だと言っていたのに、なぜ? と、疑問になる。
「なあ、刹那。キラは日程を間違ってないか? おまえさん、後四日は滞在するつもりだったよな? 」
となりの布団に転がっている黒子猫に尋ねると、「ああ。」 という返事だ。それなら、明日、キラが来たら、その話をして予定を変更してもらわなければならない。
「だが、何かキラのほうで問題があるから早める可能性もあるんじゃないか? 」
「そうかな。」
「明日、キラが来たら確認する。あんたは、そんな細かいことは気にするな。」
「細かくはないだろ? 」
「二日やそこらの短縮なら些細なことだ。もう、あんたとゆっくりしたから、後はどうでもいい。」
刹那にしてみれば、この休暇の目的は、親猫とべったり過ごすことだ。ほぼ一週間、親猫とべったりと過ごした。後は、キラと今後の打ち合わせをすれば目的は終わりだ。それから、宇宙に上がれば、そこからは全てが終わるまで親猫と逢えない。次の予定は親猫と桜を見ることだから、それが叶うまで生きているつもりだし、親猫の実弟を守るつもりもしている。休みが減るから寂しいなんて思わない。黒子猫は軽く頬を歪めて親猫を見る。
さっぱりとした黒子猫の言葉に、親猫も苦笑した。いつまでも引き延ばしておけるものではない。これから、黒子猫は組織の再始動に参加する。親猫とべったりしていたから、もう十分だと言うのなら、満足したのだろう。それなら、文句を言うのはおかしいと思い直した。
「それならいいさ。一応、キラに日程の確認はしろ。あいつがボケてるだけかもしれないからな。」
「了解した。」
おやすみ、と、親猫が布団に転がると、そこへ黒子猫も近寄ってくる。夏の盛りだが、空調が効いていて暑くはない。布団をふたつくっつけているので、狭いということもないから親猫も文句は言わずに灯りを消す。
翌日、珍しく朝という時間に、キラとアスランはやってきた。そして、悟空に、おかえりの挨拶をすると、一目散に刹那とニールのところへやってきた。親子猫は裏庭の家庭菜園で草むしりをしていた。
「刹那、ママ、ごめんね? 」
で、両手を合わせてペコペコと謝るのだが、なぜ、謝っているのかが謎だ。
「なんだよ? キラ。」
「あのね、刹那の休暇のことなんだけど、二日ほど短くしたから。」
「ああ、なんかあるんだろ? 」
「うん、そうなんだ。航路計算すると、刹那が出発予定だった日は航路上に衛星が、ワサワサはびこってるんだ。衛星からライブ映像で基地や施設にデータを送られると誤魔化せないから、航路上の衛星の少ない日を探したら明日の夜だったんだ。」
キラが、そう説明して、もう一度、ペコリと頭を下げた。ブースターでMSの打ち上げをする場合、地球の自転やらの関係も考えて、その航路は計算するのだが、その航路上付近に、周回する衛星もあるわけで、それらと接触しないために、それも考えて打ち上げることになる。今回のように隠密裏が相応しい場合は、なるべく航路上に衛星がない時間を選ばなければならない。その航路計算をしたら、刹那が希望する日では無理で、先へ延ばすと三日も先で、さすがに、そんなに延期もできないから、手前に日時を設定することになったとのことだ。
「別に、それについては構わない。明日の深夜でいい。」
「うん、ありがとう、刹那。でも、明日は盛大に遊んでからだよ? 」
派手に送り出しをするというよりも、キラも、これで組織が再始動するのだと心に決めるために、そうした。バカ騒ぎして刹那を送り出して、自分たちも準備を終わらせるつもりだ。
「ママ、明日の午後から寺で騒ぎますから、晩御飯は、こっちでデリバリーの手配をします。楽しんでください。」
「適当でよかったら、俺がやるぜ? アスラン。」
「いえ、参加してもらうほうがいいんですよ。水掛け合戦して花火をやりますから、どうぞ楽しんでください。」
裏方の仕事はしないで、一緒に楽しんでもらいたいから、アスランも、手配をした。騒いで疲れてくれれば、前後不覚に眠ってくれるだろう。アスランたちも、ニールをラボに行かせるつもりはない。寺で待っていてもらうつもりだ。ラボで深夜まで打ち合わせしたり整備の最終確認をしたりで、ニールは独りになってしまうので、そこいらは考えた。
「ママ、水掛け合戦には参加してもらうからね。刹那、悟空をやっつけちゃおうよ? 」
「それ、無理があるだろ? あいつをやっつけられるのは三蔵さんぐらいじゃないか? 」
「くくくくく・・・そうでもない。ハンデつけるから。悟空には、ママを守ってもらうんだ。」
「・・おい・・キラ・・・」
何かしらよからぬことを考えているらしい。けけけけ・・・と大明神様は、意地の悪い笑顔だ。
「寺チームばさーす年少組でやると、ママは寺の人だろ? そしたら、存分に悟空に投げられる。」
「キラ、俺はおかんを守りたいから寺チームに入るぞ。」
「えーーー。」
「てか、悟空に集中攻撃しなくても、全員でやりあえっっ。俺まで巻き込むんじゃねぇー。」
ゴインと軽く拳骨一発で、キラを黙らせる。そんなことをしなくても、各人で投げ合えばいいのだ。わざわざ不公平なチーム分けをするな、と、ニールが注意する。寺チームといっても、坊主はやらないのだろうから、そうなると悟空と刹那とニールということになるわけで、それで、ぴちぴちのコーディネーター四人と対戦するのは力配分が悪い。
「そうでもないよ、八戒さんと悟浄さんも寺チームだもん。」
「え? 八戒さんと悟浄さんも参加なのか? 」
「もちろん。せっかくだから本気で暴れたいでしょ? 」
そうなると力の配分は悪くない。ニールは戦力外だとしても悟空が、その分を十分にカバーするだろうし、沙・猪家夫夫は地上で暴れる分にはコーディネーターより強かったりする。
「まあまあ、ニール。俺が無茶は止めますから。」
「アスランが、そう言うならいいけどさ。」
大騒ぎで送り出そうという意図なのはニールも理解しているから、それ以上に注意はしなかった。そこへ悟空が洗濯物と共にやってきた。洗いあがったのを干すつもりだったらしい。
「キラ、ママを中へ連行してくれ。こんなところにいたら干物になっちまう。」
「それ、干すんだろ? 」
「こんなの、俺と刹那で十分だ。ほら、家に入って。刹那、手伝え。」
男五人くらいだと、洗濯物もかなりの量になる。夏は、とくに汗をかくから何度も着替えるからのことだ。全自動で乾燥までやってくれるのだが、天気のいい日は庭に干すのが寺の定番だ。このほうが気分がいい、と、自分でやらないくせに、寺の坊主はおっしゃるからだ。
「ママ、おやつ。僕、おにぎりがいい。」
「おにぎり? 炊きたてじゃないけどいいか? 」
「無問題。のりたまのがいいな。」
「もうすぐ昼だから食ってけよ。おにぎりと適当にするからさ。」
「じゃあ、俺が手伝います。」
「なあ、刹那。キラは日程を間違ってないか? おまえさん、後四日は滞在するつもりだったよな? 」
となりの布団に転がっている黒子猫に尋ねると、「ああ。」 という返事だ。それなら、明日、キラが来たら、その話をして予定を変更してもらわなければならない。
「だが、何かキラのほうで問題があるから早める可能性もあるんじゃないか? 」
「そうかな。」
「明日、キラが来たら確認する。あんたは、そんな細かいことは気にするな。」
「細かくはないだろ? 」
「二日やそこらの短縮なら些細なことだ。もう、あんたとゆっくりしたから、後はどうでもいい。」
刹那にしてみれば、この休暇の目的は、親猫とべったり過ごすことだ。ほぼ一週間、親猫とべったりと過ごした。後は、キラと今後の打ち合わせをすれば目的は終わりだ。それから、宇宙に上がれば、そこからは全てが終わるまで親猫と逢えない。次の予定は親猫と桜を見ることだから、それが叶うまで生きているつもりだし、親猫の実弟を守るつもりもしている。休みが減るから寂しいなんて思わない。黒子猫は軽く頬を歪めて親猫を見る。
さっぱりとした黒子猫の言葉に、親猫も苦笑した。いつまでも引き延ばしておけるものではない。これから、黒子猫は組織の再始動に参加する。親猫とべったりしていたから、もう十分だと言うのなら、満足したのだろう。それなら、文句を言うのはおかしいと思い直した。
「それならいいさ。一応、キラに日程の確認はしろ。あいつがボケてるだけかもしれないからな。」
「了解した。」
おやすみ、と、親猫が布団に転がると、そこへ黒子猫も近寄ってくる。夏の盛りだが、空調が効いていて暑くはない。布団をふたつくっつけているので、狭いということもないから親猫も文句は言わずに灯りを消す。
翌日、珍しく朝という時間に、キラとアスランはやってきた。そして、悟空に、おかえりの挨拶をすると、一目散に刹那とニールのところへやってきた。親子猫は裏庭の家庭菜園で草むしりをしていた。
「刹那、ママ、ごめんね? 」
で、両手を合わせてペコペコと謝るのだが、なぜ、謝っているのかが謎だ。
「なんだよ? キラ。」
「あのね、刹那の休暇のことなんだけど、二日ほど短くしたから。」
「ああ、なんかあるんだろ? 」
「うん、そうなんだ。航路計算すると、刹那が出発予定だった日は航路上に衛星が、ワサワサはびこってるんだ。衛星からライブ映像で基地や施設にデータを送られると誤魔化せないから、航路上の衛星の少ない日を探したら明日の夜だったんだ。」
キラが、そう説明して、もう一度、ペコリと頭を下げた。ブースターでMSの打ち上げをする場合、地球の自転やらの関係も考えて、その航路は計算するのだが、その航路上付近に、周回する衛星もあるわけで、それらと接触しないために、それも考えて打ち上げることになる。今回のように隠密裏が相応しい場合は、なるべく航路上に衛星がない時間を選ばなければならない。その航路計算をしたら、刹那が希望する日では無理で、先へ延ばすと三日も先で、さすがに、そんなに延期もできないから、手前に日時を設定することになったとのことだ。
「別に、それについては構わない。明日の深夜でいい。」
「うん、ありがとう、刹那。でも、明日は盛大に遊んでからだよ? 」
派手に送り出しをするというよりも、キラも、これで組織が再始動するのだと心に決めるために、そうした。バカ騒ぎして刹那を送り出して、自分たちも準備を終わらせるつもりだ。
「ママ、明日の午後から寺で騒ぎますから、晩御飯は、こっちでデリバリーの手配をします。楽しんでください。」
「適当でよかったら、俺がやるぜ? アスラン。」
「いえ、参加してもらうほうがいいんですよ。水掛け合戦して花火をやりますから、どうぞ楽しんでください。」
裏方の仕事はしないで、一緒に楽しんでもらいたいから、アスランも、手配をした。騒いで疲れてくれれば、前後不覚に眠ってくれるだろう。アスランたちも、ニールをラボに行かせるつもりはない。寺で待っていてもらうつもりだ。ラボで深夜まで打ち合わせしたり整備の最終確認をしたりで、ニールは独りになってしまうので、そこいらは考えた。
「ママ、水掛け合戦には参加してもらうからね。刹那、悟空をやっつけちゃおうよ? 」
「それ、無理があるだろ? あいつをやっつけられるのは三蔵さんぐらいじゃないか? 」
「くくくくく・・・そうでもない。ハンデつけるから。悟空には、ママを守ってもらうんだ。」
「・・おい・・キラ・・・」
何かしらよからぬことを考えているらしい。けけけけ・・・と大明神様は、意地の悪い笑顔だ。
「寺チームばさーす年少組でやると、ママは寺の人だろ? そしたら、存分に悟空に投げられる。」
「キラ、俺はおかんを守りたいから寺チームに入るぞ。」
「えーーー。」
「てか、悟空に集中攻撃しなくても、全員でやりあえっっ。俺まで巻き込むんじゃねぇー。」
ゴインと軽く拳骨一発で、キラを黙らせる。そんなことをしなくても、各人で投げ合えばいいのだ。わざわざ不公平なチーム分けをするな、と、ニールが注意する。寺チームといっても、坊主はやらないのだろうから、そうなると悟空と刹那とニールということになるわけで、それで、ぴちぴちのコーディネーター四人と対戦するのは力配分が悪い。
「そうでもないよ、八戒さんと悟浄さんも寺チームだもん。」
「え? 八戒さんと悟浄さんも参加なのか? 」
「もちろん。せっかくだから本気で暴れたいでしょ? 」
そうなると力の配分は悪くない。ニールは戦力外だとしても悟空が、その分を十分にカバーするだろうし、沙・猪家夫夫は地上で暴れる分にはコーディネーターより強かったりする。
「まあまあ、ニール。俺が無茶は止めますから。」
「アスランが、そう言うならいいけどさ。」
大騒ぎで送り出そうという意図なのはニールも理解しているから、それ以上に注意はしなかった。そこへ悟空が洗濯物と共にやってきた。洗いあがったのを干すつもりだったらしい。
「キラ、ママを中へ連行してくれ。こんなところにいたら干物になっちまう。」
「それ、干すんだろ? 」
「こんなの、俺と刹那で十分だ。ほら、家に入って。刹那、手伝え。」
男五人くらいだと、洗濯物もかなりの量になる。夏は、とくに汗をかくから何度も着替えるからのことだ。全自動で乾燥までやってくれるのだが、天気のいい日は庭に干すのが寺の定番だ。このほうが気分がいい、と、自分でやらないくせに、寺の坊主はおっしゃるからだ。
「ママ、おやつ。僕、おにぎりがいい。」
「おにぎり? 炊きたてじゃないけどいいか? 」
「無問題。のりたまのがいいな。」
「もうすぐ昼だから食ってけよ。おにぎりと適当にするからさ。」
「じゃあ、俺が手伝います。」
作品名:こらぼでほすと 約束9 作家名:篠義