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こらぼでほすと 約束10

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「野郎どもっっ、準備はいいか? 」

 一番前で、坊主が景気のいい殺し文句をほざいている。ほらね? と、その様子に、悟空はニールと刹那に笑いかける。チーム対抗戦だと知ったら、坊主も嬉々として参加表明したからだ。
「こういうの燃えますよねぇ、三蔵は。」
「なんで、あいつ、坊主のクセに好戦的なんだろうなあ。」
 こちら、時間きっちりに現れた沙・猪家夫夫も用意されていた白いTシャツに着替えている。トダカもやって来ているが参加するつもりはないので、本堂の前の階段に座って観戦体勢だ。ちょうど境内を本堂を中心に半分に割ったように陣営が作られた。
「刹那と俺と三蔵で攻撃するから、悟浄と八戒はママのガードでいいか? 」
「はいはい、承ります。ニール、モノは試しに、あのマイペース驀進坊主を狙ってみてください。」 
 はい、これを、と、八戒はニールに水風船を渡す。これには青い水が入っている。まあ当たることもないだろうと試しに、ニールが投げてみると、やっぱり外れた。手前にへちゃりと落下した。しかし、だ。すぐに、その後に三個の水風船が坊主の金髪にヒットして青い水まみれになった。
「てめぇーら、死にたいらしいな? 」
「おいおい、三蔵。テストしたら、たまたま当たっただけだって。敵は前だ。」
 と、取り成してるんだが煽ってるんだかの悟浄の言葉に、即座に反応が返る。もちろん、悟浄の顔に水風船が直撃だ。
「ぶへっっ、てめぇー、やる気か? 」
「望むところだ。」
「こら、エロカッパッッとさんぞー、真面目にやれ。」
「ていうか、自爆してると負けますよ? おふたりさん。」
 悟空とニールが声をかけると、どちらも舌打ちして喧嘩は収めた。まずは、目の前の年少組が相手だ。とはいえ、ダコスタとアイシャも参加している。人数的には互角だが、ニールは戦力外なので寺チームのほうが一人足りない。まあ、そこは日頃の実力で押し通す。両陣営に三百ずつの水風船を用意した。コーディーネーターチームは破裂すると赤い水が出てくる。これを全部消費したら終わりだから時間としては短い。
「じゃあ始めようか? 悟空。」
「おう、やろうぜ。まずは俺とキラが投げるのが合図な。行くぞぉぉぉっっ。」
 キラと悟空が、とりゃっっと同時に投げて合戦は始まった。前でガンガン投げているのが、寺のほうは悟空と刹那と坊主だ。コーディネーターチームは、キラとシンとレイが担当で、遠投でニールたちへ投げているのがダコスタとアスラン。アイシャは適当に投げては引き返しを繰り返している。
「とりあえず、僕らも投げておきましょうか? ニール。」
 寺チームの後方は暢気なものだ。咥えタバコの悟浄は一応、飛んでくる水風船を叩き落しているが、八戒に到ってはアイスコーヒーを片手にニールに向かってくるものだけ叩いている。ニールは、前方を楽しく観戦していたりするので、とりあえず参加しておこうか、と、八戒と一緒に遠投を仕掛けてみる。後方には、ほとんど水風船は置いていない。前のほうで、がんがん投げて消費している。
「死ね、キラッッ。」
「さんぞーさんのばかあぁぁぁ。」
「ごくー往生せいやあっっ。」
「シン、そっくりそのまま返すぜっっ。」
 もう、なんていうか好き勝手叫んで投げているが、みな、笑顔だ。こういうのは全力で遊ぶのが楽しい。前のほうは、すでにおかしな色合いのTシャツになっている。バカスカと投げ合って、とうとう水風船は尽きた。そして、八戒とニールとアイシャ以外は、青い水と赤い水で、とんでもない色合いのTシャツになっていた。
「これ、僕らはふたり無事だから、勝ちってことでいいんですか? アスラン。」
「いいんじゃないですかぁ。ふうーびっしょりだ。」
「とりあえず頭と顔だけは洗いたいな。」
 思っていた以上に過激だったのでも頭も身体も、びっしょりと濡れている。水を浴びて着替えるか、と、思っていたら、ニールが、「風呂を沸かしてあるから、適当に洗って来いっっ。着替えも用意してる。」 と、叫んでいる。どうせ、こうなるだろうと用意はしていた。さすがに下着は、どうにもならないが、パンツぐらいなら風呂に入っている間に洗って乾燥させられる。着替えのTシャツやらハーフパンツはアスランが用意していたから、それで間に合う算段だ。始まる前に、そういうことでアスランと打ち合わせをして着替えをあちらに運んでおいた。洗濯機もスタンバイしている。
「これは洗ったほうが早いよな。」
「じゃあ、さっさと入ろう。」
 唯一女性で参加のアイシャは、ほとんど被害がないから、どろどろの若いのから入る。いつもなら坊主が一番風呂だが、これからラボに出向く面子が優先なので文句もない。
「おまえの玉が俺に当たったぞ? 」
 ぞろぞろと風呂へ若いのが引き上げていくので、大人たちは本堂の前で休憩だ。ニールが残っている面子に、アイスティーを運んできたら、亭主が、そう言って笑っている。
「え? 当たりましたか? 」
「へなちょこ玉が足に当たった。あれ、おまえだろ? 」
「どうかなあ。三個くらいは投げたけど。」
 右目の視力が、ほとんどないから距離感が掴めない。当てるつもりで投げていても、手前に落ちていたので、足ぐらいならヒットしたかもしれないな、と、ニールも苦笑する。
「それ、わたしだよ、三蔵さん。遠投は難しくなった。」
 あははは・・と、トダカが手を挙げている。暇だったから、おもしろ半分に投げていたらしい。
「俺が反撃しないと舐めてるのか? 舅。」
「してくれてもかまわないが、その場合は、うちのものも参加させて派手にやらせてもらおう。」
「盆明けに、セッティングしてくれ。」
 やるんかいっっ、と、沙・猪家夫夫はツッコミだ。どうせ、それにも参加させられるのは確定している。
「そうだね、勝ったほうが、しばらく、うちの娘さんを独占するというのはどうだい? 」
「・・・・本気か? 舅。」
「本気だね、かなり。秋まで、里に返してもらおう。悟空くんも、うちに遊びに来ればいいんだし。」
 いえいえ、ここの家事があるから、と、ニールが手を横に振るのだが、どっちも聞いちゃいねぇーのだ。ふふふふ・・・と、地獄の底から湧きあがるような笑い声で、坊主とトダカは笑って睨みあっている。
「あんたの顔に水風船を破裂させたら楽しそうだ。」
「できるものなら、やってみるといい。うちのは現役の軍人ばかりだ。きみの顔が紅く染まるのは楽しそうだね、婿殿。」
「楽しそうですね、三蔵。」
「トダカさんとこの親衛隊を全員連れてこられると、うちは人数が厳しいなあ。紅と爾燕も参戦させっか。」
 人外組の面子なら、肉弾戦はお手の物だ。召還術とか魔界天翔とか大技を使わないぐらいのルールは必要でしょうか、と、暢気に沙・猪家夫夫は、ルール作りをしていたりする。
「誰も止めないんですね。」
「だって、おもしろそうでしょう? ニール。おや、デリバリーが届いたみたいですね。」
作品名:こらぼでほすと 約束10 作家名:篠義