こらぼでほすと 約束10
お盆ウィークは、檀家たちが墓参りやら回向やらで寺へやってくる。それまでにお墓の掃除をして本堂も、ある程度は片付けておかなければならない。さらに檀家周りの予約を捌くのも女房の仕事だ。何かとやることがあれば、寂しがっている暇はないから、これはこれでいいのだろう、と、女房のほうも思っている。
「わかってるんなら、明日からキリキリ働け。」
「はいはい。」
「明日から、レイが居候するつもりだそうだ。手伝ってもらうといい。」
「トダカさん、レイは忙しくないんですか? 」
「九月になったら少しバタバタするだろうが、今のところは時間があるらしい。」
九月になったら、レイたちも一端、プラントへ再度上がる。そちらで最終確認をして終わらせたら降りてくる。再始動が始まるまでの準備は、それで完了する。冬までは、それほど慌しい仕事はない。組織の大掛かりなミッションが始まったら、シンたちも宇宙で待機することになるだろうが、その予定が未確定だ。そこいらは、寺の女房には知らせない。シンとレイはアカデミーへの進学で忙しくて顔出しできないということにする。
「盆明けに、婿殿を叩きのめして、娘さんを確保させてもらおう。たまには、お父さんと温泉でも行こうか? 」
「そんな暇あるんですか? 店はあるのに。」
「土日なら大丈夫だろう。別荘から、少しクルマで移動したところに、いい温泉があるんだ。悟空くんも行かないか? 」
「行く行く。」
「三蔵さんも行きたいならついてくるといい。」
「甘やかしすぎだろ? トダカさん。」
「当たり前だ。きみばかりに愛情を注がれたら、私が寂しいからね。」
「あんたが負けたら費用はそちら持ちだ。」
「いいだろう。」
黒子猫のことから意識を外させるために、坊主とトダカは、次の予定を言い合っている。それほど本気ではないが、演技でもない。悟空は、特区の西にあった赤いお湯の温泉について、ママに話している。わーわーと周囲の騒ぎに呑み込まれてしまうと、ニールですら笑っていたりする。
作品名:こらぼでほすと 約束10 作家名:篠義