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こらぼでほすと 直前1

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漢方薬治療で本宅に連行された。そろそろ慣れてきたので、とりあえず大人しくしているだけだ。発熱から開放されて、ようやく起きている時間が長くなってきた。とはいっても、午後は昼寝をしている。いつも滞在する部屋は地下にあるのだが、ベッドの横の壁一面に、外の景色を映しているので閉塞感はない。九月だというのに、まだまだ暑くて、外の木々も青々している。さらりと風が吹いて木々が揺らぐのを眺めて、うとうとしていた。

「ママ、報告がございます。」

 声をかけられて目を開けると、そこには歌姫が微笑んでいた。ゆっくりとベッドを起こす。今年から徐々に歌手活動と福祉活動だけに限定しているので、本宅に滞在している時間も増している。今回の治療中は、ずっと看病もしてくれた。
「なんだ? 」
「刹那が地上に降りてくるようなのですが、こちらに立ち寄ってくれるように手配いたしましょう。」
 刹那が宇宙へ上がって一ヶ月以上が経過している。どうやら組織と合流したらしい。
「ミッションじゃないのか? ラクス。」
「ええ、ライルの勧誘だと思います。ですから、少し時間を割いても問題はないと思いまして。」
「連絡はするな。刹那は組織のミッションに従事してるんなら、もう時間の余裕はないはずだ。・・・・組織との接触は切ったはずだろ? 」
 刹那が宇宙へ出発した時点で、『吉祥富貴』のサポートから離れた。補給などは、多少使えるようにキラが手配していたが、それだけだ。今後、救助する事態になるまで、こちらは組織に関与することはないのだと、じじいーずから説明されている。
「ですが、ママ。せっかく地上に降下してくるのですから・・・・」
「だから、あっちも準備の最後段階なんだろ? ライルを勧誘して訓練を施したら再始動するはずだ。そんな時に、こっちに立ち寄らせてどうする? 」
「そうではありますが。」
 ラクスが提案してくれているのは、俺のためだ。せっかく近くに居るのなら顔を逢わせさせてあげたいと考えてくれている。だが、そういうわけにはいかない。再始動は目前だ。もう、俺が刹那と会う必要はないし、組織に戻った刹那は、こちらとの接触は避けるだろう。万が一、組織と『吉祥富貴』に繋がりがあることがバレたら、こちらに迷惑がかかることを知っているからだ。
「ありがとな? ラクス。でも、それはダメだ。・・・・俺は大丈夫だろ? 別にダウンしてるわけじゃない。治療してもらってるだけだ。」
 刹那が出かけて、寺の繁忙期も乗り切って、俺はダウンしないでいる。まあ、台風やら雨は仕方がないが、それ以外で寝付いていない。体調には気をつけているし、何かとやることがあって忙しいから余計なことを考えている暇はないからだ。
「やせ我慢は、身体に毒ですわ。」
「うるせぇー。」
「私のベッドで眠っていらっしゃるくらいに寂しいのに。」
「・・・・今夜から、こっちで寝る。」
「あらあら、そんなに拗ねなくてもよろしいじゃありませんか。」
 発熱が治まってからは、ラクスと寝ている。別に、何もない。ただ眠るのに、傍に体温が欲しいのだ。それがないと眠れない。いつもなら、ハイネやレイに頼むのだが、生憎と二人とも傍に居ない。レイはシンと共に、アカデミーに入学して、忙しくしているし、ハイネはプラントへアルバイトで出向いている。そろそろ寺へ戻れるだろうと思っているのだが、八戒さんが、なかなか頷かなくて、ここに滞在させられている。気温の問題もあるから、と、いうのが八戒さんの見解だ。
「とにかく、接触はするな。」
「わかりました。では、その件は、そのようにいたします。」
 ラクスなら、『吉祥富貴』の方針を曲げることもできる。『吉祥富貴』を率いているラクスだからこその強権発動という手段だ。だからこその提案だが、そういうわけにもいかない。ベッドの端に腰掛けて、ラクスが俺の首許に手を添える。発熱していないかの確認だ。
「そんなに心配しなくても、随分と楽になったよ。」
「ママは騙すのがお上手ですからね。確認しないと安心できません。」
 しばらく首筋に手を置いて、発熱していないことを確認すると手は離れた。それからにっこりと微笑んで、おかしな提案を始める。
「今夜、お店に行きましょうか? たまには、お客としてもてなしを受けてみられればいかがです? 」
「飲めない食えない俺が行っても意味ないだろ? 」
 まだ、食事が摂れない。少し口にするので精一杯だ。それに、酒も呑めない。この体調で飲んだらカクテル一杯でお陀仏する。
「でも、三蔵さんは喜ぶと思います。かれこれ二週間も留守にしていますもの。それに、トダカさんも。」
「そういやそうだな。」
 二週間ほど漢方薬治療で、本宅に滞在している。治療中は、意識がなかったり発熱していたりで、見舞いに来てくれたトダカさんや悟空とも碌に会話もできなかった。亭主は、本宅に歌姫がいる限りはやって来ないから、二週間、完全に顔を合わせていない。とはいえ、現在の俺の主治医役は厳しい人だ。
「でも、八戒さんが許可するか? 」
「先ほど、お願いしたら許可はくださいました。店で話をするぐらいの外出はいいそうです。」
「予約は? 」
「今日は入っておりません。」
 シンとレイが学業が忙しくて休みがちになっているが、それを補うようにイザークとディアッカが復帰した。ラクスが特区内に滞在している限りは、警護を強化する必要もないらしい。アルバム製作のための歌作りをラクスが本宅でしている限りは外出も少ないからだ。
「おまえさん、歌作りは? 」
「着々とはいきませんが、それなりには進んでいます。それで、たまには息抜きをしたくなりましたの。」
「それなら付き合おうかな。」
「はい、お願いいたします。では、ママの服を用意してまいりますわ。」
「え? 適当にあるだろ? 」
「あら、娘と着飾ってオシャレに入店していただきませんとね。うふふふふ・・・どんなものを希望されます? 」
「いや、普通で。店に服があるだろ? あれでいい、あれで。」
「あれは仕事着です。私がカクテルドレスなら、ママはタキシードですかしら? 」
「待てっっ、ラクス。そんな恥ずかしいのは勘弁してくれ。」
「では、燕尾服になさいます? それとも軍服風? でも暑いから・・麻のスーツにアロハシャツなんていうのもよろしいですわね。それともアラビアンな衣装とか? アフリカの衣装も涼しいですわ。」
「おまえ、それ、まんまコスプレじゃねぇーかっっ。」
「せっかくですから。」
「せっかくじゃねぇーよっっ。普通のスーツでいい。」
「デートもしていただきたいのに・・・。」
「だから、そういうのはキラとやれ。」
「では、同伴出勤でキラを呼びます。ママには鷹さんを。それならママは女装でもよろしいですか? 」
「よくねぇーよっっ。無茶ブリすんな。」
 ラクスは楽しそうだ。ここのところ引き篭もっているから、何かしら派手に遊びたいのだろう。そういうことなら、キラとやればいいのに、俺を誘う。刹那たちの心配をしてダウンしないように気をつけてくれているのだと理解しているが、それでもコスプレは勘弁して欲しい。うふふふ・・と楽しそうにラクスは笑って、内線で何かを頼んでいる。
作品名:こらぼでほすと 直前1 作家名:篠義