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できること

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「あ、あの、長門さん…?」
「なに」
「今日はすみません、あの、外にいたときのこと…」
「あ、う、ううん、いいのっ、ああいうのって勢いで言うとよくな…いやっ、特に何か言おうと思ってたわけじゃないの!!大したことじゃないの!あなたは、気にしなくていいから」

真っ赤な顔で慌てて否定をする長門に、朝倉はますます申し訳ない気持ちでいっぱいになっていく。

この引っ込み思案の友人が今日、人生で五本指に入るぐらいの行動力(ゲーム関係除く)を示したのだ。
しかも今まで経験のなかった恋愛方面に置いて。(ゲーム関係除く)
彼女には幸せになってほしいし、彼氏ができてそうなるのならば、ちょっと寂しくあろうとももちろん応援したかったし、協力もしたかった。
幸いにも彼女が恋心を寄せる相手は自分のクラスメイトで、その人となりもそれなりに分かっている。
おそらく彼女を悲しませるようなことはしないだろうし、不可抗力でそうなってもきっと心を痛めて彼女のためになにがしかしてくれるだろう。
そんな確信もあって、彼女とその想い人には幸せになってほしかった。

なのに、なのに…

そうなるであろう、千載一遇のチャンスを自分がフイにしてしまった。




「あああああ、やってしまった…」
「ど、どうした朝にゃん」
「どうし…あ」
「みくるどうした外になに…あ」

先輩二人が外を見、なぜ朝倉が急に落ち込んでしまったかを悟った。
困ったように笑う二人の気配を感じ、さらに気分は降下線の一途を辿った。

「ま、まぁまぁ朝にゃん朝にゃん!こういうイベント事にのっかって告白すると後々破局しやすいって言うからねっ!きっとまた別に落ち着いた時にチャンスがやってくるっさ!」
「そ、そうですよ!きっと今日はその日じゃない、って神様が言ってるんですよ」

朝倉が落ち込んでしまったのは友人の告白タイムを自分が邪魔してしまったせいだ。
うかつにも降ってきた雪なんかではしゃいでしまい、窓を開けて感嘆の声を上げたところで、下に友人とクラスメイトが二人っきりでいたことに気付いた。
クラスメイトは何も気付いていないのであろう。
なにやってんだとばかりにこちらを呆れたまなざしで見上げてくる。
正直そんな目で見られたくない。
そっちだってなぜ気付かないのか。
彼の後ろでこちらを涙目で恨みがましく見上げてくるその女の子に…

「私にお邪魔虫させるなんてヒドイ神様…後ろからアーミーナイフでぶっ刺して抉ってやりたい…」
「あああ朝にゃん!もうやっちゃったもんはしょうがないって!次だよ!次のチャンス目指すにょろよ!」
「うううう…」



その後、優しい先輩二人に慰められてるとまるで自分が告白に失敗したような気分になってきて、思い出してもそんな気分になって、朝倉はため息をついた。
確かに、先輩の言ったとおり、やってしまったことは仕方ない。
次のチャンスを待ってそのとき失敗しなければいいのだ。

だけど…

『長門さんが次にあんな勇気を出すことってあるのかしら…あれぐらいの雰囲気作りと勢いでもないと早々ない気がするわ』

雰囲気というのならあのときほど絶好の場面はないはずだ。

クリスマスイブの夜
二人っきり
プレゼントを貰ったであろう
雪も降り出した

なのに、なのに…

思考は変わらず同じところを回り続けてあてどない。
普段ここまでループ思考を続けないだけに、今回の朝倉の落ち込みがいかに激しいかを物語っていた。

いい加減脱出しなければ。
でも…

「あの…」
「わひゃっ!?あ、あああ、長門さん…どうしたんですか?」
「お湯…」
「え、きゃああっ!噴いてるー!!!」

文芸部クリスマスパーティーを終え、帰宅してから朝倉は冒頭の謝罪のため、長門の部屋へと訪れていた。
しかし、長門は照れと恥ずかしさで告白(未遂)のことは否定。
とりあえずは落ち着こうと朝倉がキッチンでコーヒーを淹れるためにヤカンに火をかけていたが、今までの回想をしていたが故に、長門から指摘されるまで沸騰したお湯に気付けずにいたのだった。
リビングにいた長門がヤカンの噴く音に気付いて来てしまったほど。

慌てて火を止め、用意していたコーヒーメーカーに湯を潅げば、ふわりと匂いがたちのぼる。
その匂いを存分に楽しむため、大きく深呼吸して香気を吸い込めば、不思議と気分が落ち着いてきた。

『確かに、このまま私が落ち込んでてもしょうがないですよね』

そもそも自分がこんなにも落ち込むのは、ある意味で長門に失礼である。
彼女は何もできない、ただの引っ込み思案の少女ではない。
文芸部を廃部の危機から救ったし、今日のクリスマスパーティの立案と実現は彼女自身の力によるものが大きい。
自分も確かに協力はしたけれど、あくまで彼女自身が動いたからだ。
何もできないことはない。
彼女自身のことは、彼女自身でなんだってできるのだ。
自分はただ、彼女がちょっと困った時にちょっとだけ後ろから助けてあげる、それだけでいいのだ。

だって自分は彼女の保護者でもなく、姉妹でもなく、ましてや周りからよくからかわれるようなお母さんでもなく、友達、なのだから。




「それでも、ちょっと寂しいとか思うのはやっぱりワガママですよねー…」

ふぅ、と溜息をつきながらコーヒーを持っていけば、コタツでぬくぬくとゲームに興じていた長門が「どうかした?」と不思議そうに見上げてきた。

「なんでもないです。はい、どうぞ」
「ありがとう」

朝倉もコタツに入り込み、二人向かい合ってコーヒーを飲んだ。

『長門さんが頑張るのを待とう。それまでは私に出来る事をしよう』

そう決めて、朝倉は正面の長門に笑みを向けた。


作品名:できること 作家名:由浦ヤコ