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こらぼでほすと にるはぴば

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じゃあ、また、と、アレルヤとティエリアが帰ってしまうと、途端に部屋の温度が下がる。無茶すんなよ、とか、気をつけろ、とか、言うのも憚られる状態なので、ニールのほうも、「またな。」 と、手を振っただけだ。

 まだ、三ヶ月ばかりは、戦争は凍結されるはずだから、すぐさま、ラボにとって返しても情報は拾えない。

・・・・しばらく、寺へ戻ろうかな・・・・・

 もはや、自宅とも言える三蔵の寺へ戻ろうかな、と、思っていたら、呼び出し音が鳴った。これは、玄関ではない。マンションのエントランスからの呼び出しだ。

「はい? 」

「居候に来たぞ。開けてくれ。」

 確認用の画面に映っているのは、ハイネで、ニカニカと笑って手を振っている。どうやら、また、お節介をしに来たらしい。

 エントランスの入り口を開けると、すぐに、上がってきたハイネは、いつものように小型の旅行カバンを下げている。独り者のハイネは、何かあると、そちらへ飛び出す遊撃手のような役割を担っているので、どこへでも、このカバンと共にやってくる。

「俺、寺へ帰ろうと思ってたんだけどな? ハイネ。」

「まあ、しばらく、俺の相手をしてくれよ。・・・・貢物も準備したからさ。」

 と、渡されたのは、可愛い紙袋で、開くと、白ではあるが、フリフリのたくさんついた可愛いエプロンだった。

「おま・・・・・これっっ。」

「ママニャンには、やっぱ、エプロンだろ? ・・・二、三日、世話になるぜ? 」

「ここじゃなくてもいいんじゃないのか? 」

「いや、たまには、のんびりと生活したくてさ。寺は、快適だけど、五月蝿いんだよな。」

 部屋は、どれを使ったらいい? と、一方的に話を進められるので、ニールのほうも折れた。アレルヤとティエリアの部屋は、朝から掃除してシーツも換えたところだ。どちらでもいい、と、指示をして、やれやれ、と、溜息をついた。

 どうやら、落ち込む時間は作れないようになっているらしい。







「間に合うの? 」

「ギリギリなんとかなりそうだ。あいつらが組織へ戻ったら、交代で、もどきと黒猫が出て来るはずだ。」

「もどきは? 」

「元カレのところらしい。」

「なら、ハイネに、指示を出さないと。」

「それより、何を準備するかですよ、みなさん。」

 日曜日だというのに、わたわたと、『吉祥富貴』に集まっている面々は、言いたい放題に勝手に動いているので、まず、取り決めることを確認しましょう、と、八戒が大声を上げる。サプライズというか、たまには、親猫にも嬉しいことがあったらいいよね? というか、そういうことで、スタッフ総出で計画を練ることになった。二重人格マイスターにも、ふたりっきりでサプライズパーティーなんてものを仕掛けてある。女王様マイスターには、こっそりと計画は漏らしてあるから、それなりにお祝いはしてもらえたはずだ。組織へ戻る前に、トランジットする場所でホテルを用意した。そちらで一泊して組織へ戻るという手筈になっている。

 地上でヤキモキしている親猫は、自分のことなんて、てんで忘れているので、黒猫をプレゼントすることにしたのだが、普通にはしたくないのが、吉祥富貴スタッフの考えだ。

「やっぱり、チラシ寿司とハマグリのお吸い物がメインですよね? 」

「だが、ニールは生魚の漬けは、どうなんだ? 」

 ちょうど、この日は、女の子の節句で、定番のメニューというものがある。だが、それを食べるほうが、西洋人と中東人というのが、かなりミソだ。生魚の盛り込まれたチラシ寿司は、おいしいのか? と、虎が疑問に思う。

「ああ、そういうチラシ寿司ではないんです。かんぴょうと高野豆腐、干しシイタケ、人参、れんこんなんかが混ぜ込まれたもので、魚は、茹でた海老ぐらいです。」

「俺、焼きアジのほぐし身が入ってるのがいいなあ、八戒。」

「はいはい、うちのは、それにします、悟浄。」

「卵は? あの、細いのパラパラァーって。」

「ええ、キラくん。錦糸卵は盛りつけます。あと、ピンクのでんぶときぬさやぐらいですかね? 」

「俺は、じゃこが入ってるのが嬉しいんだけど? 八戒さん、じゃこ、じゃこいれてっっ。」

「山椒の葉が欲しいです。」

 シンとレイが、そう追加するので、はいはい、と、八戒は頷く。どうやら、店の分も作ることになりそうだ。

「爾燕、チラシ寿司って、できます? 」

「ああ、大丈夫だ。生臭さなしを作って、それをベースに、いろいろと飾りつけるか?」

 さすがに、これだけの大人数になってくると、ひとりで寿司メシを作成するのも大変だから、バックヤードにも応援を頼むことにした。

「ひな壇はどうする? 」

 鷹が、唐突にとんでもないことを言い出すが、全員、慣れたものだ。返すのは、営業部長のキラだ。

「ムウさん、小さいの用意したから、ママのところへ飾ってね。店のは七段だから、これは今日中。後、モモの花と緋毛氈もあるからね。・・・・後、雛ケーキは? 」

「それは、俺が注文した。ママんところのも頼んである。当日、ここに届く手筈だ。」

 甘いモノ、特にケーキには、こだわりのあるイザークが手を挙げる。ケーキというのは、ほとんどが、イザークが注文することになっている。

「キラ、店でも出す予定の桜餅とうぐいす餅も運べばどうだろう? 刹那は、甘いモノが好きだから喜ぶよ? 」

「うん、そうだね。 ああっ、アスランっっ、ひなあられはっっ? 」

「それ、俺が用意したぞ。手作りして、今、乾燥中だ。それより、八戒、お吸い物の中身だが、店の分もハマグリにするとなると、相当の数になるから注文が通るかわからんぞ? 」

 ひなあられは、ピンクと黄色、鶯色のあられに、砂糖をまぶしたものを、毎年、爾燕が製作している。ハマグリを、それだけの数となると、出入りの業者では無理じゃないか、と、爾燕は心配した。それほど大量の注文を捌けるような大きなところではないからだ。

「確かに、そうですね。・・・・うちの宿六に、卸市場まで買いつけにやりましょうか? お客様の分も考えれば、五十個は入りますよね? それに、できたら国産の天然ものがよろしいですし。」

「そうだな。どうせなら、白魚も載せるか? それなら、春らしい。」

「ええ、そこはお任せします。悟浄、当日の朝に仕入に行ってください。メモは、後で渡します。」

「それ、店終わってから、そのまま行けってことだな? ハイネでも誘うか・・・」

 命じられたほうは、うえーと顔を歪ませた。二日の営業が終わってから、そのまま、卸売市場へ仕入れに出向かないと間に合わないという強行軍だ。

「なかったら、潜って獲ってきてね? 悟浄さん。」

 カッパだから楽勝だよね? と、天然電波は笑っている。

「うぉーい、キラ。それなら、おまえが、MSでひと堀りしたほうがはえーだろ? 」

「貝なんて、ちっちゃくて無理。」

「というか、ハイネは連れ出さないでださいね、悟浄。ニールの相手をしてもらわなきゃいけませんから。」