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こらぼでほすと にるはぴば

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 最後に、ケーキを開いて、ふたりして、あっっ、と、叫んだ。それは、お内裏様とお雛様の形をマジパンで作った生クリームとフルーツたっぷりのケーキだったが、そこにチョコで書かれている言葉を見て、初めて、ふたりとも、その意図が分かったからだ。

『HAPPY BIRTHDAY TO NEIL』

 刹那のほうは、それで、ライルがケーキを食べていた意味も分かった。つまり、強制的にプレゼントを贈らされたわけだ。

「・・・・・やられた。 刹那がプレゼントか・・・・・」

 すっかりと、自分の誕生日なんてものを失念していたニールも、苦笑した。まさか、こんなふうに、お祝いされることがあるなんて思わなかった。

「あんた、忘れてたな? 」

「この年になったら、一々、思い出すってほうがおかしいぞ。」

 いや、あんたの弟は、きっちりと無理矢理に俺に祝わせたぞ、と、内心で、ツッコミつつ、自分が用意した紙袋を渡す。

「八戒さんから、あんたが喜ぶものを用意しろ、と、言われた。」

「その段階で、気付かない、おまえさんもおまえさんだと、俺は思うね。」

 紙袋の中身は、手袋だった。ただし、皮ではない。細い毛糸で編まれた茶色の手袋だ。もう、皮の手袋をつけるようなことはしないたろうが、寒いから手を温められるものがいいだろうと思った。親猫の手は白くてキレイだ。だから、冷たくないように、と、刹那は雑貨屋でみつけた、それを買った。 それを、しげしげと眺めて、黒猫の意図も理解して、親猫は頬を緩める。

「なるほど。ありがとう、刹那。おまえさんには貰ってばっかだな? 」

「そんなことはない。」

 これまで、刹那は、ここに帰ってくるたびに、サイズの合う衣服を用意して貰っていた。それだけではない。刹那のために、と、ケーキを焼いたり、食事を用意したり、と、物ではないモノを、たくさん、親猫に貰っている。

「怪我はないのか? 」

「ああ、大丈夫だ。トレミーのみんなも無事だ。あんたの弟も、ぴんぴんしている。」

「これから、さらに厳しいことになりそうだな? 大丈夫か? 」

「問題ない。その話はいい。メシにしよう。」

 いろいろと追求されると、ボロが出る。なんせ、相手は親猫だ。ポーカーフェイスなんてものは通用しないから、話題を変える。おう、そうだな、と、親猫も、お重の中身を確認して、取り皿やお茶なんかを準備して、ふと、酒瓶とぐい呑みで視線を止めた。

「なあ、刹那。俺が三十になったってことは、おまえさんは、来月、22だよな? 」

「そうだ。」

「じゃあ、一緒に飲んでもいいわけだ。」

 二十歳になった時は、刹那は世界の変革を確認する旅に出ていて、桜の季節は留守をしていた。その後は組織が再開の準備段階で、そんな悠長なことはやっていられなかった。随分前に約束していたことを、ようやく果たせると、ニールは、そのぐい呑みを、さっと洗って刹那の前に置く。

「祝いってことでな。」

「ああ。」

 まだ、これから、戦いは続くので、ゆっくりとした気分というわけにはいかないが、せっかく、吉祥富貴のスタッフがくれたプレゼントだから、最大限有効に使わせて貰うことにした。

 とくとくと、ぐい呑みに酒を満たして、乾杯と、ぐい呑みをカチンと合わせた。

「いい誕生日だ。」

「おめでとうと言うべきなのか? この場合。」

「三十路で、おめでとうもないよ。・・・・・全部、終わったら酔っ払うぐらいに飲もうな? 刹那。」

「付き合ってやる。どうせ、あんたは潰れるだろうから、俺が介抱もしてやる。」

「はははは・・・・それは、どうかわかんねぇーぞ? 」

 ぐいっと一杯目を、ふたりして飲み干して、くくくくく・・・・・と、笑う。戦いの合間だけど、とてもいい休暇だ。親猫に無事な姿を見せられたし、一緒に酒も飲める。そのうち、全部終わったら・・・・・と、次の約束をしたから、親猫は、ここで待っていてくれるだろう。そう思うと、刹那も、にこっと笑って、親猫に酒を注いでやった。