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不幸青年2

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またアルフレッドが別れ話を持ち込んできた。
泣きながら。
哀しいけれど、仕方がないけれど、もううんざりだった。
もう彼奴のあんな顔、見たくないんだ。
俺は少し考えて、すぐに行動に出る。
急がなければ。




「え…アーサー…?」

扉を開けたアルフレッドは目を丸くした。
いきなり連絡もせずに恋人が来ればそれはそうだろう。
しかもスーツケースを持って、だ。

「悪ぃ、アル。
しばらく世話になる。」

アルフレッドに心配をかけていても、俺には多分どうする事もできない。
それに嫌気が差し、解決する事はできなくても逃亡はできることに気が付いた。

「えっ…え!?
何で!!?」

「いや、考えてみたんだけどよ。
多分俺は家ごと燃えちまうと思って。
じゃあ家にいなきゃいいってことだよな?
それと、お前の周りの物は燃えても、お前自身は燃やされてないだろ?
ってことはお前といれば安心じゃんか。」

まあこの策、欠点はある。
籠城したら食べ物がもたないから買いにいかなければいけないっていう。

「君ん家は…?」

「売ってきたよ。
売り付けた先には悪いけどな。」

なにせ燃えるからな、まもなく。

「そこまでして…」

「か、勘違いすんなよ!
俺の安全の為だからな!
お、お前を悲しませたくないのもなくはな…
って言ってるそばから泣くなって!」

「だって…」

本当に涙もろいやつだ。
抱き寄せて抱き締めた。
アルフレッドの頬を濡らした温かい涙が、俺の頬に伝う。
抱きしめ返すアルフレッドの指は震えていた。
……あれ、なんだこれ?

「なんだその太いペン。」

「これかい?
トーリスから貰ったペンだぞ。」

「ちょっと借せ。」

ハグしている時も離さずに持っていたのは、黒い円筒状の物体だった。
見てみると、いくつか切れ目が入っていてペンだとわかる。
バラバラに分解しようとすると、止められた。

「何するんだい!
それは俺の唯一五年残ってる物なんだぞ!」

「尚更怪しいじゃねぇか。」

分解しきると中からマイクのような物が出てきた。
燃えたのは外郭だけで内側は無事だったらしい。

「え」

「盗聴機…だな。」

マイクを踏み潰してやった。
ペンは元通りにしておく。
アルフレッドの大切な物のようだし。
持参した紅茶を注いで(勿論二人分カップを買ってきた)、硬直しているアルに渡す。

「さて、アル。
お前俺に隠してる事があるだろ。
盗聴されるって普通に考えてストーカー行為だぜ?」

作品名:不幸青年2 作家名:踔蟲