不幸青年2
躊躇ってアルフレッドは口を開かない。
それほど話したくないことなのか。
「…言わないと今からでも家戻る」
「アーサー…
わかった、話すよ。
だからそんなこともう二度と言わないでくれ。」
アルフレッドは真剣だった。
「…ああ。悪かった。」
絶縁した幼なじみイヴァン・ブラギンスキのこと、四歳の頃の話、孤児院と友人のトーリスの話、燃やされたのは全て放火だったということ。
全てが初耳だ。
俺が過去に触れないようにしていたのもあるが。
誰にだって思い出したくない過去があるものだろう。
アルフレッドにはそれが多すぎただけだ。
「四歳の俺の目の前で俺の家が燃えてて。
その前でイヴァンが笑ってて。
警察に言っても信じてくれなくて。
きっと俺ほどでもないけど彼も幼かったし。
だから労力のいらない放火って手段なんだろうな。」
五年経つ前に放火する。
人でも物でも。
嫉妬だというのはわかる。
俺にも理解できるが、何事にも程度ってものがあるだろうに。
「俺は…彼に真っ当な人間になって欲しかった。
警察に捕まらなくても、改心して欲しかったんだぞ。
でも。」
「何度説得しても変わらなかった、か。」
嫉妬とか人に抱く感情ってのは、重い。
そう簡単に変わるわけもないよな。
「ねぇ、アーサー。
今の話聞いてどうするつもりなんだい?」
「んー、証拠品を集めて警察を説得するとか。」
「証拠はさっき君が踏み潰しただろ。」
そういえば。
我ながら安直な行動をしたもんだ。
「それじゃあ、探してみるとか。
何か他に怪しい物ねぇか?」