東方疑異伝
烏騅は部屋に引きずり込まれ、中央にほうり出された。
ドアのあたりを見ると、いつの間にか着ぐるみを脱いだレミリアがすぐそこにいた。
「烏騅!! えっと、これはその……あの……うー♪ じゃなくて! えっと……あぅ……」
取り乱し、必死になにかを否定しようとしているが、もはや先程のあれは否定できるものではない。
「頼むから落ち着いてから話してくれ。 俺は買い出しが終わったから咲夜さんに次何すれば良いのか聞きに来たんだけど……」
ちらりと赤い水たまりの中で幸せそうな表情を浮かべて倒れている咲夜を見る。
「はひぃ……おぜうさまぁ……しあわへですぅ……」
素晴らしい世界にトリップ中の咲夜は話を聞けるような状態ではない。
「烏騅、伝えたい事があるのなら私が代りに伝えておくわよ」
レミリアはカリスマ度をなんとか復活させようとしているようだが、さっきのアレを見た後ではカリスマも何もあったものではない。
「それより咲夜さんは大丈夫か?」
「大丈夫よ。 それより伝えたい事があるのではないの?」
「あー・・・・・・さっきも言ったが、買ってきたものは美鈴が倉庫に運んでいると伝えてくれ」
「分かった、起きたら伝えておくわ。 それと烏騅、パチェが呼んでいたから図書館に行くようにね」
「図書館? どこにあるんだ? それとパチェとは……?」
「行けば分かるわよ。 場所はそこら辺の妖精メイドでも捕まえて聞きなさい。 さて、私は忙しいの。 これ以上用事がなければ出て行って貰えない?」
レミリアはちらりと咲夜を見てから烏騅に向かい言った。
「……わぁったよ。 どうぞごゆっくり」
「ふふぅん、察しがよくて助かるわ」
烏騅が急ぎ足で部屋を出た直後に、また幸せそうな咲夜さんの声とレミリアのうーうー言ってる声が聞こえてきた。
「ここ……大丈夫だろうか……?」
太平洋の水の量並の不安を抱えたが、とりあえず図書館を目指して館内を歩き始めた。