東方疑異伝
紅魔館の中に存在する巨大な図書館。
地下にあり窓もほとんどないために昼でも薄暗いこの場所で一人の女性が自分のまわりに本を積み上げ、床に魔方陣を描いている。
彼女の名前はパチュリー・ノーレッジ。
外見は不健康そうな少女だが、100歳以上生きている魔女である。
彼女が飽きもせずに本を読むか、チョークので床に魔法陣を描くかを繰り返していると静かに音をたてて図書館の入口のドアを開き、一人の女の子が入って来た。
「相変わらずね、パチェ」
ドアから入って来たのは白を基調としたワンピース風の服に、ドアノブカバーのような帽子を被り、そしてコウモリのような羽根を生やした細身の幼い外見の女の子。
この館の主であるレミリア・スカーレットである。
外見はただの幼子だが、実際は数百年生きている吸血鬼である。
「代わり映えしないのはいいのやら悲しいやらね。 ……それにしてもレミィ、どうかしたの?」
「ん~ちょっとね。 普通にお茶飲むのも飽きたし、暇だったから本でも読もうかなぁって…ね。 手頃な本がないか探しに来たとこよ」
「そ。 それじゃ丁度良かった。 暇ならこれちょっと手伝ってくれない?」
パチュリーは魔法陣を指差し、レミリアを見る。
「あまり気は進まないわね……」
「お願いよレミィ。 後で良さそうな本探しとくから。 ……一人じゃ辛いのよ」
パチュリーはわざとらしく咳き込む。
「はぁ……わかったわよ。 で、これはなんなの?」
レミリアは床に描かれたものを指をさす。
「ん~転移魔法とでもいうべきかしらね。 遠くにある物をこちらに引き寄せるような魔法ね」
「それなら普通にできるじゃないの?」
レミリアの問いにパチュリーは首を軽く横に振る。
「これはいつも使ってるのとは違うわ。 違う世界からもこっちに呼び寄せられるというものよ。 例えるならば紫のスキマみたいな原理かしら。 まぁと言ってもどこにつながるかはまだわかってないんだけれどね」
「どこにつながるのかわからないって……」
レミリアは軽くため息を吐く。
「大丈夫よ。 ……多分」
「はぁ~。 まあいいわ。 んで? パチェ、まずは何をすればいい?」
「まずは……」
少女作業中……