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のび出木

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出木杉くんは目を瞑ってソファで横になっていた。眠っているのかもしれない。
目を閉じている出木杉くんの唇にキスをしてそのまま部屋に戻ってしまおうかとも思ったが、感情を押し殺し少し冷静になって僕は出木杉くんの部屋を見回した。
多分都内ではないだろう。清潔感あふれるモダンな部屋で住みやすそうだ。
部屋を見渡したこの短時間にここで僕と出木杉くんが一緒に生活している様子が頭に浮かびあがり、恥ずかしくなった僕は気を紛らわそうと机に置かれている写真立てを何となく手に取った。
高校の入学式の写真だろうか。にこやかに笑う出木杉くんと出木杉くんの両親が写っている。3人とも幸せそうだ。
なにより凛々しくてそれでいて可愛らしく成長した写真の中の出木杉くんを僕は知らなかったんだ。色々な後悔の念が渦まいた。
「のび君、どうしてここに?」
突然聞こえた出木杉くんの声に、僕は写真立てを慌てて元に戻した。
「と、突然ごめん!」
出木杉くんは「いや、」と首を横に振り、ソファから起き上がり覚束ない足取りで倒れこむように僕の肩に頭をもたれかけてきた。
思いも寄らない出来事に僕の心は期待で溢れかえった。
出木杉くんは酔っていた。床にはワインの空のボトルが転がっている。
「一本も飲んだの?」
出木杉くんは何も言わずにコクン、と頷くと
「はー・・・のびくん…」
と甘えるように言ってきた。
僕はそっと出木杉くんをの背中に腕を回した。隆起した骨や柔らかいような固いような肉の感触が腕全体に広がる。似たような体格をしている。僕は出木杉くんの体の成長を確かめるようにゆっくりと回している腕を徐々に腰の方へと動かした。
出木杉くんが「あっ」と声を漏らす。
僕を求めている、そう確信した。キスをしても構わないだろうか、

唇を近づけた瞬間、胸にドン!という衝撃が走った。出木杉くんに突き飛ばされたのだ。
あまりに不意で自分の予想に反していたために、本日二度目の尻餅をついてしまった。

「ごめん!そんなつもりじゃなかったんだ!というか、帰ってくれないか…俺今すごく酔ってておかしいんだ…」

そう言うと出木杉くんはソファに戻り、頭を抱えながら深く座り込んでしまった。
「…」
こんなのってあるかよ。

「お願いだから、帰ってくれないか…」

出来杉くんが繰り返す。でもこのまま帰るなんて悔し過ぎる。
「でも…」

「君にはもう、会いたく無いんだ…会ったらもう…」

出来杉くんがクッションを抱え込みながら息を吸い込んで言った。

「俺、来週結婚するんだ」

出来杉くんの口からその言葉を聞いた瞬間、まるで胸を何かが貫いたような痛みが走った。なんだよ、じゃあさっきのはなんだったんだよ。
出来杉くんが結婚…めでたい話じゃないか。
「良かったじゃないか。おめでとう」
僕はポンと出来杉くんの肩に触れた。
じわりと目頭が熱くなった。出来杉くん触れるのが辛い。出木杉を好きだということを認めた矢先にこんな仕打ちが待っているなんて思わなかった。

「はんっ!馬鹿みたいだ。なんでさっき抱きついてきたりなんかしたんだよ。酔っ払いの奇行虚言に惑わされてしまって、僕は本当に馬鹿みたいだ!きみなんか…」

多分ものすごい言葉で罵倒したと思う。「結婚」という言葉に全ての期待を打ち砕かれて、出木杉くんは僕じゃない人と幸せな生活を、僕は元通りの孤独な偽りの生活に戻ると思ったら口から毒が止まらなかった。
こんな幼稚なことをするまでに僕は出木杉くんのことが好きになっていたんだ。恥ずかしい。
なんだか寂しくて泣きたくなって僕は目をこすった。もう二度と会わないようにしたい。

「さて、もう帰るよ。突然邪魔しちゃってごめんね」

作品名:のび出木 作家名:だが