二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

こらぼでほすと 拾得物3

INDEX|1ページ/7ページ|

次のページ
 
刹那が、部屋を出る前から、布団に潜っていた親猫は、やはり寝ていた。叩き起こして言うような内容でもないから、朝から伝えようと、刹那も並んで敷かれている布団に入りこむ。

 五年前なら、部屋を出た時点で、目を覚ましていた親猫は、今は、まったく気配を感知しなくなった。そういう生活から遠ざかっていると、そうなるらしい。





 翌朝、墓碑のことを伝えたら、ゲラゲラと笑っていた。まあ、そりゃそうだろう。家族に報告するのなら、兄である自分のことも、そこに記すのは当たり前だ。

「まあ、いずれ、入るからいいさ。・・・・先に仕返しされた気分だ。」
「すまない、先に、こちらに来ると思っていたんだ。」

 刹那にしたら、何がなんでも追っかけてくるだろうと思っていたが、実際は、故郷へ墓参りのほうが先だった。

「・・・・まあ、あいつなりのケジメとかあったんだろ・・・・・」

 あまり詳しいことは判らないが、刹那と弟の間に何事かは遭ったらしいとは聞いている。組織内のことまでは、地上にいる吉祥富貴のスタッフにも分からないが、じじーいずが何やら言いにくそうにしていたから、そういうことなんだろうと、ニールは思っていた。

「ロックオンが来たら、ちゃんと説明する。」
「うん、俺も謝らないといけないしな。・・・・あいつ、びっくりすんだろうな。」

 いや、びっくりするのは、おまえのほうだ、と、その会話を小耳に挟んでいた坊主が内心でツッコミを入れている。「何かあった」 の「何か」の部分が、ニールとじじいーずの言わんとしたことで激しく違うのだ。そして、その事実を把握しているはずの黒猫は一向に訂正する気配がない。

「おまえも驚くんじゃないか? 」
「そうかな。」
「心臓は大丈夫か? 」
「刹那くん、俺、そんなに弱ってないんだが? 」
「あんたの場合はわからない。心をしっかり持て。」
「?  ああ、うん。」

 だから、そうじゃなくて、おまえの弟と結婚したんだ、と、そこではっきり言ってやったほうが親切だ、と、坊主は思うのだが、口にするつもりはないから、本堂の片付けに逃げた。




 『吉祥富貴』の店内を改装することになって、悟浄、八戒とアスラン、キラが打ち合わせをしていた。今までは、かなり重厚な雰囲気にしていたので、店内を、もう少し軽い感じに変更しようということになった。壁や天井の色や、それに見合う家具の手配など、いろいろと打ち合わせはある。

 業者を交える前段階で、フロアマネージャーと営業部長、経理部長で、打ち合わせするのは必須事項である。

「予算的には、この辺りが上限ということで、お願いします。」
「壁紙と天井の装飾を変えるぐらいなら楽勝ですね。」
「でも、小物とかも変えないと雰囲気が変わらないよ? 」

 で、まあ、何の役職にもついてない悟浄は口を挟むことはない。のんびりと、この重厚な雰囲気が変わるのか、なんて考えていたりする。最初に、寛げる空間ということで設計されたのだが、時間と共に古びてきた感じは否めない。確かに、一新するのは、店のためにもスタッフやお客様のためにも、良いことだ。

「できたら、事務室、もうちょっと椅子とか座り心地よくしてくれねぇーかなあ。」

 ふと思いついて、口を開いたら、三人から、はい? という顔で見つめられた。

「いや、だって、こっちの内装を変更すんなら、事務室の椅子を新調するくらい安いもんだろ? 」
「悟浄、事務椅子なんて、壊れるまで買い替えはありません。一番長く座っている僕らでも、せいぜい二時間です。それなら、あれで十分使えます。」
「しかし、壊れそうにないですね。事務椅子は。」

 くくくくく・・と、アスランも肩を震わせている。悟浄が取り替えろと言ったのは、自分のつれあいが一番長くいる場所だった。その場所の居心地改善を提唱するなんて、ほんと、いちゃラブモード全開としかいいようがない。それを、スパスパと吐き出した悟浄に八戒は、ちょっと気恥ずかしくてツッケンドンな対応になっている。

「事務室を、ロココ調とかいうのは無理ですが、事務椅子くらいは新調しましょう、八戒さん。それくらいの予算オーバーで、オーナーは怒りません。」
「すいませんね、アスラン。うちの宿六は、ほんと、思いつくままに喋るから、言いたい放題です。」

 改装する費用からすれば、些細なことだから、アスランも悟浄の意見に賛同した。経理部長が休みの時は、そこで仕事をするのは、アスランであるからだ。

「はーいはーいはーい、それなら、事務室にカウチが欲しい。ソファは、いつも、ムウさんが取っちゃうんだから。」
「おまえ、カウチに何秒いるか考えたか? キラ。」
「おやつの後の一休みだから十分くらいかな。」
「それなら、VIPルームのソファへでも寝転んでろ。」

 キラの提案するカウチは、おそらく事務椅子四個以上の値段の代物だろう。それこそ無駄遣いというものだ。

「キラくん、僕の施術室になら、カウチは置けますけど、それでよければ注文しましょう。」

 気功波の施術には、カウチを使っているから、それを入れ替えるということなら、オッケーと八戒は許可する。

「じゃあ、古いほうのカウチを事務室に移動するのはいいでしょ? アスラン。」
「あれは大きすぎて置けないよ、キラ。」

 施術用だから本格的なカウチだ。かなり大きいので、それを置いたら、事務室が狭くなるから、アスランが却下する。

「控え室なら置けるだろ? アスラン。」
「ええ、そちらなら大丈夫です。」

 進んでいるのかいないのか、よくわからないが、まあ慌てることはない。改装の計画さえ決まったら、実行するのは、三日もあれば十分だからだ。

「爾燕は、厨房関係で要望はないんですか? 悟浄。」
「どうだろうな。一回、確認しておくか。」

 悟浄が、携帯で、爾燕に連絡をするために席を外した。そこで、一旦、話が止まる。

「八戒さん、ロックオンが降りて来たんですが・・・・・」
「ええ、そうらしいですね。」

 墓碑のことは、アスランも口外していないが、アイルランドへ降りたことは、スタッフ全員が知っている。なんせ、どういうことになるのか、わからないからだ。

「フォローしたほうがいいんでしょうか? 」
「刹那君の出方次第ですね。」

 刹那が、デイランデイさんちの双子を、両方獲得しちゃったわけで、刹那が、どっちにも、同じ感情があるとしたら対面はマズイことになる。だが、五年前から見ていたスタッフにしてみると、ニールに対して、恋愛感情があるとは到底、思えないのだ。おかん、おかんと言い続けている黒猫が、親猫を押した倒したいと思っているようには見えない。

「たぶん、違うんだと思うな。刹那、ママのことは、ママだもん。今のロックオンは、ママじゃないから嫁って呼ぶんだと思う。」
「でも、キラ。どっちも同じ顔だよ? 」
「同じ顔だけど雰囲気は全然、違うじゃない。」

 確かに、まったく違うというのは、一度、接客業務に降りて来た現ロックオンを見る限り理解できる。できるが、同じ顔の人間を、片方はママで、片方は嫁と区別できるものなのか、理解に苦しむところだ。

「いつ、こちらに来るんですか? アスラン。」
作品名:こらぼでほすと 拾得物3 作家名:篠義