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囚われ

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ギルベルトは手をいつのまにか拳にして強く堅く握っていた。
自分に向けられている瞳を、じっと見る。
そして、口を開いた。
言いたいことがある。
伝えたいことがある。
けれども。
ふと、エリザベータが眼を細めた。
それから、その頭を少し左右に振った。
ギルベルトは口を閉じた。
聞きたくない。さっき、エリザベータはそう言ったのだ。
今も、そうなのだろう。
エリザベータは眼をそらした。その眼は伏せられる。
ギルベルトも眼を伏せた。
彼女には背負っているものがある。そして、自分にも背負っているものがある。
だから。
踵を返した。
それから、歩きだす。
背筋を真っ直ぐに伸ばし、力強い足取りで廊下を進んでいく。
うしろから名を呼ぶ声は聞こえてこない。
そのことにホッとし、同時に、寂しさも感じた。
胸が痛む。
だが、堂々と歩き続ける。
しばらくして、玄関に到着した。
趣味のいい装飾のほどこされた扉を開け、外に出る。
冷たい風が吹き寄せてきた。
ギルベルトは寒さに身を堅くしながら、門に向かって庭を歩く。
その頬をなにかがかすめた。
水滴。
雨か。
いや、違う。
眼のまえを、白いものが風に流されながら落ちていく。
それは、はらはらと次々に空から降ってくる。
雪だ。


手のひらには、まだ、さっき触れた温もりが残っているように感じる。
しかし、その温もりも、やがて消えていってしまうだろう。


もう一度、触れたい。
自分のほうに引き寄せて、抱きしめたい。
けれども、そんなことはできない。


彼女をさらうことのできない自分には、想いを告げる資格すらない。




だが、本当は伝えたかった。


愛している。


愛している。


おまえを愛している。
だれよりも。











作品名:囚われ 作家名:hujio