こらぼでほすと 拾得物5
寺へも朝から衣装が届いて、夕方からの出勤の連絡もされた。さすがに、全員が控え室で一斉に着替えをするのは無理なので、ということらしい。
悟空はへ編み上げブーツが面倒だと、いつものスニーカーで出勤して、あちらで履き返ることにした。いちいち、着脱が面倒すぎる。特に、日本家屋は、土足厳禁だ。
「スカーフも持っていけばいいや。」
金と黒のチェックのスカーフも、ぐるぐると手に巻いている。黒羅紗のショート丈の上着もブーツの箱と一緒に玄関へ放置だ。膝下の吊りズボンは涼しくていいし動き易い。そろそろ出かけようと着替えたが、悟空が一番早かった。次は、それ、返り血の色じゃね? な深紅のスーツに黒のシルクシャツを着た三蔵が、卓袱台に座る。胡坐をかくとズボンに皺が寄るから、こういうことになる。そして、最後に、刹那がピーコックブルーの鮮やかなスーツに身を包み、ニールの右腕を掴んでやってきた。背後からライルも従っているが、ディランディーさんちの双子は、まったく同じ深緑色のトラディショナルなスーツに白のワイシャツ、そして緑と青のレジメンタルタイというお硬い格好だ。演出効果としては、左右に執事を従えた若き主人というところだろう。
「用意はできた? 」
「ああ。」
今日は、ホスト全員が並ぶことになるから、早めに出勤なんてことになる。お客様がいらっしゃるのは、いつもの営業時間からだが、それまでに新しくなった店を確認しておかなければならないし、スタッフ一同で、店再開を祝うなんてものもある。
店のほうは、のんびりしたムードが漂っている。改装して変わったものの、家具の配置は以前通りだから動き辛いということもない。虎は楽しそうに、コーヒー豆を選別してコーヒーミルへ放り込む作業をしている。今回は、バックヤード担当に徹するので、黒のベスト姿だ。
「もしかしなくても、それは、もどきに食らわすつもりのヤツかい? 虎さん。」
ベージュヘリンボーン織のスーツに黒光沢シャツなディアッカが、声をかける。ここの新人は必ずやられる通過儀礼のようなものだ。
「せっかくだから、変わったものを振舞ってやろうとおもってな。」
それって、非常に苦いとかすっぱいとか、そのミックスとか、そういうものなんじゃないの? と、黒羅紗ぴかぴかのショート丈上着を着込んだシンとレイが内心でツッコむ。彼らは、同じ衣装なのだが、リボンタイがシンは真紅で、レイは濃紺をしていて、ここで違っている。ちなみにシンは、虎の特製ブレンドは食らわされた経験がある。
「キラのケーキは、直前まで冷蔵庫に入れておくほうが良い。生クリームが熱で溶けては、元も子もないからな。」
料理のサーヴをするスタッフに注意しているイザークは、真剣だ。いかにして、おいしい味のまま、口まで運ぶか、ということを真面目に考えている。イザークは、全体的に銀色のイメージで纏められていて、ワンポイントにアスコットタイのタイピンが、大きな黒真珠であるところだろう。さすが、お坊ちゃまと言うぐらい優雅に着こなしている。
「八戒、爾燕が呼んでるぜ。」
「うちのは電話中だ。俺が行くわ、紅。」
厨房からやってきた紅孩児は、普段とは真逆な感じすらする衣装だが、実は、お忍び留学の王子様なわけだから、これはこれでイメージと言われれば納得できるものだ。トラッドな紺ブレザーに薄いピンクのワイシャツ、赤を基調としたレジメンタルタイ、ズボンはグレーだ。
対して八戒は、店では、いつも着用しているチャイナ服だが、いつもより派手な雰囲気の銀糸の刺繍が施されている。翠のシルク地に襟は、銀色。飾りボタンは、紅色ということになっている。そして、腐れ坊主との戦いに敗れた悟浄は、赤茶色のスーツに、ホトトギス色の開襟シャツで、その八戒の仕事のフォローをしている。
「はい、吉祥富貴でございます。・・・ええ・・・・ドレスコードはございませんので、お好きなお姿でいらっしゃってくださいね。・・・・はい・・はい・・・・では、お待ち申しております。」
お客様からの連絡なんてものもあるわけで、それに対応するのが、八戒とアスランの仕事だ。アスランは、ダークグレーのダブルのスーツに銀ラメストライプの白シャツに緑のタイシルクのネクタイという地味なんだか派手なんだかわからない衣装だが、これは、ちゃんとアスランのハニーと対になるようになっている。
しかし、残念なことに、そのハニーは拉致られ中だ。キラと対になるようなスカイブルーのドレスを着飾った歌姫がスカイブルーのスーツに白ワイシャツ、紫のネクタイというキラと、二階のVIPルームで、テレビゲームに興じている。全員が揃ったら、改装開店の挨拶を、歌姫がすることになっている。
「三蔵さんとこで終わりか? 」
「そうだな。そろそろ来るだろう。みんな、集めるか? 」
玄関の側で、来客予定の確認をしていた鷹とハイネが動き出す。鷹は、さすが伊達男というに相応しい真っ白なダブルのスーツだ。ハイネのほうは、いつもより軽い感じの珍しいパステルカラーのオレンジのスーツで、中のワイシャツは黄色の開襟シャツという「よっっ、イタリア男っっ」 を、地で行く衣装だ。
基本的に身長もあって筋肉も付いているスタッフばかりだから、スーツを着せると、なかなか見栄えが良い。顔もイケメン揃いなわけだから、会員限定の店でなかったら、とんでもないことになるだろう。
ほどなく、三蔵たちも到着して、ようやく、店の新装開店のお祝いをやることになった。
「お店を新しくして再開できるのは、みなさんのお陰です。・・・・これからも、よろしくお願いいたします。それから、キラの誕生日パーティーは二次会扱いで、やりますので、進行表のチェックはしてくださいませ。」
店の新装開店セレモニーと、そのお祝いは、今夜の真夜中まで、お客様として登録してくれているお客様全員を招待している。11時半で、そちらはお開きにして、親しいものだけで、カウントダウンして、キラの誕生日パーティーへ移行するという運びになっている。歌姫様のスタッフのほうで、そちらの手配は行われていて、『吉祥富貴』のスタッフたちも招待客と変わらない扱いになっている。
まあ、とりあえず、お祝いを、と、それぞれにピンク色のシャンパンがフルートグラスで配られる。さあ、キラ、と、歌姫が声をかける。
「かんぱーいーーーっっ。」
単純明快に乾杯の音頭を叫ぶ、と、キラは、こくんとフルートグラスに口をつける。超高級シャンパンは、甘くて後味がすっきりしているから、ごくごくとジュース感覚だ。
「あいつに飲ませるのは、ピンクの炭酸でいいんじゃね? なんか、もったいない気がするぞ。」
これ、高いんだぞ? と、八戒のグラスを取り上げて飲んでいる悟浄は、容赦なくツッコむ。確かに、そうだなあーと、ハイネはおかわりに手を出している。
「しかし、これで、本当に終わったって感じがするな? 虎さん。」
悟空はへ編み上げブーツが面倒だと、いつものスニーカーで出勤して、あちらで履き返ることにした。いちいち、着脱が面倒すぎる。特に、日本家屋は、土足厳禁だ。
「スカーフも持っていけばいいや。」
金と黒のチェックのスカーフも、ぐるぐると手に巻いている。黒羅紗のショート丈の上着もブーツの箱と一緒に玄関へ放置だ。膝下の吊りズボンは涼しくていいし動き易い。そろそろ出かけようと着替えたが、悟空が一番早かった。次は、それ、返り血の色じゃね? な深紅のスーツに黒のシルクシャツを着た三蔵が、卓袱台に座る。胡坐をかくとズボンに皺が寄るから、こういうことになる。そして、最後に、刹那がピーコックブルーの鮮やかなスーツに身を包み、ニールの右腕を掴んでやってきた。背後からライルも従っているが、ディランディーさんちの双子は、まったく同じ深緑色のトラディショナルなスーツに白のワイシャツ、そして緑と青のレジメンタルタイというお硬い格好だ。演出効果としては、左右に執事を従えた若き主人というところだろう。
「用意はできた? 」
「ああ。」
今日は、ホスト全員が並ぶことになるから、早めに出勤なんてことになる。お客様がいらっしゃるのは、いつもの営業時間からだが、それまでに新しくなった店を確認しておかなければならないし、スタッフ一同で、店再開を祝うなんてものもある。
店のほうは、のんびりしたムードが漂っている。改装して変わったものの、家具の配置は以前通りだから動き辛いということもない。虎は楽しそうに、コーヒー豆を選別してコーヒーミルへ放り込む作業をしている。今回は、バックヤード担当に徹するので、黒のベスト姿だ。
「もしかしなくても、それは、もどきに食らわすつもりのヤツかい? 虎さん。」
ベージュヘリンボーン織のスーツに黒光沢シャツなディアッカが、声をかける。ここの新人は必ずやられる通過儀礼のようなものだ。
「せっかくだから、変わったものを振舞ってやろうとおもってな。」
それって、非常に苦いとかすっぱいとか、そのミックスとか、そういうものなんじゃないの? と、黒羅紗ぴかぴかのショート丈上着を着込んだシンとレイが内心でツッコむ。彼らは、同じ衣装なのだが、リボンタイがシンは真紅で、レイは濃紺をしていて、ここで違っている。ちなみにシンは、虎の特製ブレンドは食らわされた経験がある。
「キラのケーキは、直前まで冷蔵庫に入れておくほうが良い。生クリームが熱で溶けては、元も子もないからな。」
料理のサーヴをするスタッフに注意しているイザークは、真剣だ。いかにして、おいしい味のまま、口まで運ぶか、ということを真面目に考えている。イザークは、全体的に銀色のイメージで纏められていて、ワンポイントにアスコットタイのタイピンが、大きな黒真珠であるところだろう。さすが、お坊ちゃまと言うぐらい優雅に着こなしている。
「八戒、爾燕が呼んでるぜ。」
「うちのは電話中だ。俺が行くわ、紅。」
厨房からやってきた紅孩児は、普段とは真逆な感じすらする衣装だが、実は、お忍び留学の王子様なわけだから、これはこれでイメージと言われれば納得できるものだ。トラッドな紺ブレザーに薄いピンクのワイシャツ、赤を基調としたレジメンタルタイ、ズボンはグレーだ。
対して八戒は、店では、いつも着用しているチャイナ服だが、いつもより派手な雰囲気の銀糸の刺繍が施されている。翠のシルク地に襟は、銀色。飾りボタンは、紅色ということになっている。そして、腐れ坊主との戦いに敗れた悟浄は、赤茶色のスーツに、ホトトギス色の開襟シャツで、その八戒の仕事のフォローをしている。
「はい、吉祥富貴でございます。・・・ええ・・・・ドレスコードはございませんので、お好きなお姿でいらっしゃってくださいね。・・・・はい・・はい・・・・では、お待ち申しております。」
お客様からの連絡なんてものもあるわけで、それに対応するのが、八戒とアスランの仕事だ。アスランは、ダークグレーのダブルのスーツに銀ラメストライプの白シャツに緑のタイシルクのネクタイという地味なんだか派手なんだかわからない衣装だが、これは、ちゃんとアスランのハニーと対になるようになっている。
しかし、残念なことに、そのハニーは拉致られ中だ。キラと対になるようなスカイブルーのドレスを着飾った歌姫がスカイブルーのスーツに白ワイシャツ、紫のネクタイというキラと、二階のVIPルームで、テレビゲームに興じている。全員が揃ったら、改装開店の挨拶を、歌姫がすることになっている。
「三蔵さんとこで終わりか? 」
「そうだな。そろそろ来るだろう。みんな、集めるか? 」
玄関の側で、来客予定の確認をしていた鷹とハイネが動き出す。鷹は、さすが伊達男というに相応しい真っ白なダブルのスーツだ。ハイネのほうは、いつもより軽い感じの珍しいパステルカラーのオレンジのスーツで、中のワイシャツは黄色の開襟シャツという「よっっ、イタリア男っっ」 を、地で行く衣装だ。
基本的に身長もあって筋肉も付いているスタッフばかりだから、スーツを着せると、なかなか見栄えが良い。顔もイケメン揃いなわけだから、会員限定の店でなかったら、とんでもないことになるだろう。
ほどなく、三蔵たちも到着して、ようやく、店の新装開店のお祝いをやることになった。
「お店を新しくして再開できるのは、みなさんのお陰です。・・・・これからも、よろしくお願いいたします。それから、キラの誕生日パーティーは二次会扱いで、やりますので、進行表のチェックはしてくださいませ。」
店の新装開店セレモニーと、そのお祝いは、今夜の真夜中まで、お客様として登録してくれているお客様全員を招待している。11時半で、そちらはお開きにして、親しいものだけで、カウントダウンして、キラの誕生日パーティーへ移行するという運びになっている。歌姫様のスタッフのほうで、そちらの手配は行われていて、『吉祥富貴』のスタッフたちも招待客と変わらない扱いになっている。
まあ、とりあえず、お祝いを、と、それぞれにピンク色のシャンパンがフルートグラスで配られる。さあ、キラ、と、歌姫が声をかける。
「かんぱーいーーーっっ。」
単純明快に乾杯の音頭を叫ぶ、と、キラは、こくんとフルートグラスに口をつける。超高級シャンパンは、甘くて後味がすっきりしているから、ごくごくとジュース感覚だ。
「あいつに飲ませるのは、ピンクの炭酸でいいんじゃね? なんか、もったいない気がするぞ。」
これ、高いんだぞ? と、八戒のグラスを取り上げて飲んでいる悟浄は、容赦なくツッコむ。確かに、そうだなあーと、ハイネはおかわりに手を出している。
「しかし、これで、本当に終わったって感じがするな? 虎さん。」
作品名:こらぼでほすと 拾得物5 作家名:篠義