こらぼでほすと 拾得物6
スメラギとフェルトは、トレイン経由で、エアポートに到着した。そちらには、面識のあるキラとアスランが出向いている。ひとまずは、本宅へ、と、そこからヘリで案内した。移動中に、ニールは、ちょっと具合が悪いので逢うのは待って欲しいと、アスランが説明すると、ふたりは、ちょっと複雑な顔をした。
「悪いって・・・・アスラン、それって・・・・」
「いや、そういう深刻なものではないんです、スメラギさん。季節の変わり目で体調が安定しないという程度のことですから。」
もちろん、スメラギも、話は聞いていたが、その場面に遭ったことはない。大概、こちらに降りる時は、ニールに愚痴酒盛りというのを付き合わせていた。その後、ダウンしていたことは知らない。
「ニールのところがいい。」
「ごめん、フェルト。ママね、フェルトに寝てるとこ見られたくないんだって。三日くらいだと思うから、ちょっと待っててくれないかな? 」
「三日? 私が看病する。」
「今日一日だけっっ。明日の夜くらいには、起きられると思うから。ラクスが、フェルトとお出かけすんの楽しみにしてるんだ。それに、すっごいものが見られるから。ね? お願い、フェルト。」
「キラ、すっごいものって何? 」
それは見てのお楽しみ、と、キラは、ホストな笑顔でフェルトにウインクした。すぐに、本宅に到着して、実際、そのお楽しみを目にして、フェルトもスメラギも、びっくりした。
「アレルヤ? あなた、いつの間に? いつ? いつ、作ったの? 相手はマリー? 」
そういう意見になるよなあ、と、鷹は大笑いしている。なんせ、すでに歌姫様が、ものすごくゴスロリチックな少女という格好を演出しちゃったからだ。真っ白なフリフリのレースぴらぴらのワンピースに、真っ白な帽子を被った小さな女の子が、アレルヤの腕にだっこされているのだ。
「しゅめりゃぎぃ・り・のりえぐわっっ、ばんちにあたいしゅるぅー。」
「はあ? え? 」
「ティエリア? 」
「おりぃだっっ。みりぇば、わきゃるだろーーー」
いや、わからないだろう、と、ハレルヤが内でツッコむ。ジタバタしているティエリアを微笑ましく眺めて、アレルヤは、「久しぶりです。」 とか挨拶する。
「ティエリア? うーん、えーっと、なぜ? 」
無理もない。ティエリアは、ヴェーダに組み込まれた、という報告を受けていたし、組織のほうへも音声のみではあったが、ティエリア本人から、組織のシステムとのリンクを知らせてきた。そのティエリアが、この大きさというのが解せない。
立ち話もなんだから、と、アレルヤが中へ案内する。刹那や歌姫たちは、居間で待っているのだ。
説明されて、なるほど、と、スメラギとフェルトも納得した。来月には元の身体が完成するので、この姿は一時的なものだと言われたら、あまり不安でもない。
「そういうことなら、いいわよ。・・・・・刹那、ニールのほうは? 」
「今、ちょっと具合が悪いが、すぐに治まる。」
顔を見て挨拶したかったんだけどなあー、と、スメラギが残念そうなので、アレルヤが三日ぐらいだから待っていたら? と、提案する。
「それがね、予定を入れてしまったのよ。明日、移動するつもりだったから。」
「それなら、別荘へ足を運べば、顔は見られます。ちょっとヘタってますが。」
フェルトを送って、『吉祥富貴』で、ちょっと癒されて、それからユニオンへ移動するつもりだった。落ちあう相手にも、そう連絡してある。とはいえ、顔を見たいのも事実だ。
「そうね、一日くらいズレてもいいわ。あっちへ連絡しておけばいいんだから。」
「それでは、少し休憩されたら、一緒に店へ参りましょう。フェルトは、初めてですわね? 」
何度かフェルトも休暇で降りてはいたが、ニールが未成年はダメと、店には連れて行かなかったのだ。19歳なんだから、解禁してもいいだろう、と、歌姫は案内することにした。
「ラクス、ニールは? 」
「そうですねぇーたぶん、今頃は寝ていらっしゃいますでしょう。お逢いになりたければ、明日、案内させていただきます。フェルト、どうか、私にも付き合ってくださいな? 」
「いいよ。でも・・・・」
天下の歌姫様が、手を合わせるようにしてお願いすると、渋々、フェルトも頷いた。ショッピングなんかより、ニールに逢いたい、と、ありありと顔に書いてある。
「わかりました。明日、午後一番に、お見舞いに参りましょう。それからなら、付き合ってくださいますか? 」
「うん。」
一度、顔を見せてさしあげたほうがよろしいですね、と、歌姫も応じることにした。午後くらいなら、ちょっと楽になっているはずだ。
「ラクス、ティエリアの服は、あなたの仕業? 」
スメラギは、ティエリアの服に興味深々だ。なんせ、元が絶世の美男子なんてものだから、小さくなっても綺麗なままだからだ。小ささが、可愛さも演出するから、こういう衣装は、選ぶのが楽しそうだ。
「ええ、私くしと、あと、お二方が用意しました。」
「そうなのよ、ティエリアって、こういうの似合うのよね。ミッションの時に女装させて、そう思ったけど、ほんと、綺麗よね? この子。」
ミッションでの女装は、必然性はあったが、服はスメラギの趣味だった。着飾らせたら、かなりイケる、と、狙っていたのも事実だ。
「そのデータと交換でしたら、こちらのもお渡しいたします。」
「うふふふ・・・・それで取引オッケーよ、ラクス。」
さすがに、そこまで歌姫も、組織内部に詳しいわけではない。どこにいるのかは把握させていたが、どういう格好だったかまでは、調べていなかった。青年の姿で女装というなら、是非、拝みたい一品だ。
「じぃんけんしんがぁいっっ。おりぃのでーたあーを、かってにしゅるなあっっ。」
ティエリアは、ぷんぷん怒っているが、微笑ましい光景としか認識されないらしい。ほほほほほ・・・・と、女性陣は優雅に笑って握手していたりする。
作品名:こらぼでほすと 拾得物6 作家名:篠義