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こらぼでほすと 拾得物8

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本当にいいの? と、キラはニパニパと笑っている。ああ、存分にやってくれ、いい訓練になるだろう、と、ニールのほうも許可する。

 キラの愛機 ストライクフリーダムにライルは乗り込んでいる。ここには、長距離射撃用のMSはないので、汎用性の高いキラの愛機にビームピストルとライフルを装備させた通常タイプである。対して、キラは、それよりパワーでは劣るストライクに赤い羽根装備のエールストライクに搭乗した。こちらもビームライフル装備だ。どちらのビームライフルにも実弾は装備されていない。ビームではあるが、当たっても怪我をしないものだ。ただし、実弾同様の衝撃は来るようにMSには細工がしてある。だから、被弾すれば、その部位にある装備は使えなくなる。

「『ハウス』なし? ママ。」

「おう、なしだぜ、キラ。痛い目に遭わせておけ。こういうのは経験が物を言うからな。」

「拳骨も? 」

「ないない。」

 MS訓練の約束はしていたが、先日までは、無茶するな、と、注意していたはずのニールが、叩きのめせ、と、命じてきた。キラとしては、別にどっちでもいいのだが、後で殴られてはたまらないから、確認は何度もした。だが、ニールは笑顔で、『叩きのめせ』 と、命じた。そういうなら、そうするか、と、気楽にストライクを発進させる。

 さて、こちら、ストライクフリーダムのライルは自信満々だ。現役引退してるキラになんか負けるわけがないと思っている。なんせ、元一般人のライルは、キラの悪評は知らないからだ。

「ライル、まずいと思ったら、すかさず降参しろ。」

 老婆心から、刹那は、そう言うのだが、当人は、へらへらと笑っている。

「一応、現役だし? マイスターなんだぜ? 刹那。大丈夫、大丈夫。軽く蹴散らしてやるぜ。」

 まあ、言って聞く相手でもないし、一度、その鼻はへし折ってもらうほうがよかろうと、刹那も放置する。刹那ですら、ダブルオーライザーをトランザムフルドライブしないと勝てないだろう相手なのだが、ライルは気付いていないらしい。

「ほーら、フェルト、はじまるぞ? 」

 ニールのほうは、側のフェルトに声をかける。ラボの管制室のメインパネルに、訓練の模様は大写しになっている。撮影用の無人機が、その模様を拾っているので、リアルタイムに見られるのだ。

「俺、参上っっ。いくぜいくぜいくぜーーーーキラっっ。」

「らいだぁーきーーーーっくっっあーーーんどーーーぱーーーんちっっ。さらにしょうりゅーーーーーーけーーーんっっ。」

 Sフリーダムの機動力を駆使して仕掛けていくライルは、キラにかわされて背後からキックだパンチだと打ち込まれている。キラはライフルを使う気はないらしい。まあ、後方支援機に直接攻撃は、一番よく効く攻撃ではある。というか、おまえ、それ、格闘ゲームの技だろうが、という技を見事にきめている。え? え? と、ライルが反撃するより前に、さらに、ニーキックとか踵落としとか、いろいろと打つわけで、機械が、あっちこっち使用不能になっていく。ある程度の衝撃を与えると、ビームライフルが着弾したのと同じ効果があるのだ。わざわざ、技を叫んでいる辺り、大明神様は余裕がある。

「こらぁーーーー遊ぶなぁーーーっっ、キラ。」

「ライル、反撃しないの? 最終奥義きめちゃうよ? 」

 反撃する前に、ぼこぼことやられているわけで、一旦、後退してピストルを撃ってみるのだが、これまた当たらないとくる。大気圏だと空気抵抗、風力を計算しなければならないからだ。いつもは、ハロが微調整をしてくれている。

「もう怒ったっっ、肉弾戦なら俺もやってやる。」

 Sフリーダムでエールストライクへ突進して、そのまま突き倒したつもりが、馬飛びの要領でストライクが、Sフリーダムを飛び越えて、後ろに両足を伸ばして蹴りこんだきた。そのまま急降下で、Sフリーダムは、どすんと地面に叩き落とされた。かなり衝撃は食らったから、Sフリーダムは動きを止めた。中のライルも伸びたらしい。

「あ、死んじゃった。・・・・ねー刹那、次やろうよ? ルージュでスタンバってる? 」

「準備している。」

 よおーしっっ、本気で全開ね? と、キラは発進してきたルージュと共に上空へ猛ダッシュだ。絡むように螺旋状に、くるくるとどちらも大気圏突破間近まで昇り、そこで戦闘を仕掛けた。ここだと空気抵抗もないし、視界もクリアーだ。本気だと、このくらいの空間でやらないと危なかっしくてやってられない。ビームサーベルだのライフルだの存分に戦っているふたりは、とても楽しそうだ。さっきのような一方的な戦いではない。どちらも、相手の攻撃を防御しつつ、さらに攻撃に転じて行く。見ているほうも、手に汗を握る攻防戦だ。

「ほらな? フェルト、こんなもんでどうだ? 」

「うん、お間抜けで笑えた。」

 それを眺めつつ、ニールはフェルトに、これで勘弁な? と、頭を撫でている。なぜ、そういうことになっているかを知っているティエリアも苦笑している。

「みゃだみゃだ、くんりぇんが、たりにゃいにゃ。」

「ライルは、まだ搭乗して一年だもんね。接近戦を、少し訓練したほうがよさそうだ。」

「見た目で騙されてる段階で、ダメなんじゃねぇーか? てか、キラの情報くらい調べとけよ、カタロンっっ。」

 鷹が、大笑いして、潰れたまんまのSフリーダムをガイアで回収しつつ、大声で、マイスター組の会話に乱入する。

「まったくだぞ。いくら、後方支援でもさ、反撃技ぐらいは覚えろよ。」

 グフイグナイテッドで、一緒に作業しているハイネもツッコんでいる。キラの接近戦の技というのは、格闘ゲームの技だから、反撃するなら、やはり、そちらの技が有効だ。ただし、やってできるものとできないものはあるのだが。

「おまえらぁーーーっっ、いい加減にしろっっ。」

 いつまででもやっている刹那とキラに、虎が怒鳴る。互角の実力なので、どっちも決定打が出ないから、長引くばかりだ。訓練にしては行きすぎの感があるので、途中で止めた。あのままやっていると、どっちかが、確実に相手の足なり腕なりをチョンパして修理が大事になる。

 ピタッッと制止したMSは、どっちもビームサーベルを相手の急所付近に突き立てられる位置になっている。

「やっぱり、刹那は強いね。ダブルオーだと、もう勝てそうにないよ。」

「微妙だな。ストライクフリーダムのドラグーンは面倒だ。」

「ライルは、まだまだだね? 悟空に実技教えて貰ったら? 」

「そうだな。接近戦が弱い。」

 ストライクとルージュで手を繋いで大気圏を降下してくる光景は、微笑ましいんだか、痛いんだか、見解が別れるところだろう。

 後日、寺に帰ってから、悟空にも、コテンパンにやられてしまうライルは、ただいま絶賛気絶中だ。




「純粋培養テロリストなんだからさ、一般常識じゃないとこが、あんのっっ。よく考えて行動しろよ。」
作品名:こらぼでほすと 拾得物8 作家名:篠義